有限会社アオキトゥーワン活動を通して得られる「体験知」は
ビジネスモデルを構想する力になる

  • グローバル人材の育成・確保

当社の母体は明治の中頃から家業として受け継いできた畳店で、私は5代目にあたります。畳店でありながら、ここ20 年ほどは「社会的企業」としての役割を目指し、「住まい」と「福祉」を柱に事業の幅を広げてきました。現在は、バリアフリー・リフォームを請け負う「福祉住環境コーディネーター」や、要介護者が自宅での生活を継続できるよう支援する「小規模多機能型居宅介護」などが事業の中心になっています。

 当社の女性社員が1人、昨年秋から休職して協力隊に参加しています。彼女から「協力隊に行きたい」と相談された際、意図はすぐに理解できました。新卒で入社した彼女は、現在20代後半。当社では得られない経験を通じて視野を広げ、自分の「物差し」を明確にしたいと思うのは自然なことです。そのような意図ならば、協力隊経験でひと回り大きくなったうえで、ぜひ当社で引き続き活躍してほしいと考え、現職参加を勧めました。

 赴任以来、彼女とはメールのやりとりを続けています。彼女からのメールで伝わってくるのは、最初は何もわからなかった現地の社会について、人とかかわりながら情報を獲得し、空間的にも時間的にも視野を広げていく様子です。赴任直後は「自分の生活圏」や「来月の予定」などの説明が中心でしたが、やがて「地域」や「国」、あるいは「来年の見通し」などについての話が出てくるようになりました。私自身、彼女とのメールのやりとりを通じて、協力隊というのはあらかじめプログラム化されたことをこなすのではなく、自分の力で現地社会についての理解を深めながら、要請をもとに自らの活動の方向性を見出していくものなのだとわかりました。

 こうした活動で得られる「体験知」は、社会的企業のビジネスモデルを構想するうえで、非常に大きな力になるものだと思います。彼女は今、アフリカの農村部でネリカ米の普及に取り組んでいますが、そのなかで「地域の誰にアプローチすれば活動の突破口が開けるか」といった視点を獲得し、「地域」の見方を学んでいる。それは当社の事業においても、障害がある方やその家族、支援団体など、対象地域のさまざまな立場の人とかかわりながら、新たなビジネスモデルをつくっていくうえでの力になる。彼女へのアドバイスとして、今の経験が帰国後の仕事にどう生かせるか、私自身のビジョンを伝えるようにもしています。

 社会的企業の世界で活躍している人たちを見ると、20~30代の人たちのスピードとエネルギーは見事です。ましてや、協力隊に参加すれば、より研ぎ澄まされた感覚が身に付く。そうして帰国してくる彼女とともに、新しい事業を生み出していけることを期待しています。

代表取締役社長
青木 伸吾さん

PROFILE

有限会社アオキトゥーワン
設立:1902年(法人化は1988年)
所在地:東京都練馬区田柄4-10-25
事業内容:介護事業(小規模多機能型居宅介護)、福祉住環境調整事業、予防福祉用具の販売
従業員数:16名(うち1名が協力隊員として派遣中/2012年6月現在)
一覧に戻る

TOP