大豊産業株式会社「外」の世界に触れる経験が
ビジネスのベースになる人間性を養う

  • グローバル人材の育成・確保

初めて青年海外協力隊経験者を採用

当社は昨年9月、青年海外協力隊の任期を終えたばかりの男性を採用しました。青年海外協力隊経験者の採用は当社で初めての例です。大学院を修了してすぐに青年海外協力隊に参加した男性で、採用枠は営業職。特定の専門性を期待して採用したのではなく、青年海外協力隊の経験で高まる「人間性」に着目しての採用でした。

 入社からまだ1年足らずですが、すでに彼の働きぶりには青年海外協力隊の経験が生きていると感じる点が見られます。たとえば、「周囲に信頼されるために何をすべきか」を考えて仕事に取り組む姿勢。彼はフィジーの農村で野菜栽培の普及や女性グループの収入創出活動の支援などを行ってきましたが、そうした活動を行うためには、日本とは違う風土や文化、言語を持つ社会の中で「一人の人間」として認められることが不可欠です。苦労しながら現地の人との間に人間関係を結ぶ過程で、おのずと「周囲に信頼されるために何をすべきか」を考える習慣が身に付いていくでしょう。彼は入社以来、太陽光ビジネスの営業を担当していますが、お客様からの信頼を獲得するため、早朝出勤も辞さずに新エネルギーに関する勉強に力を入れています。若い世代では全般に「どん欲に学ぶ」という姿勢が薄れてきているなか、彼のそうした意欲は頼もしいかぎりです。

代表取締役社長
乾 篤之さん

グローバル人材としての可能性

私が青年海外協力隊員の具体的な活動の様子を知ったのは、男性社員が入社する3~4ヵ月前に参加した「香川県青年海外協力隊を育てる会」による青年海外協力隊員の活動報告会でのことでした。「会社の50年後を考えれば、四国の外へと取引先を広げていくことが不可欠であり、そのためにはグローバルな感性を持った人材を確保しなければならない」。そう考えていた最中に参加した報告会であり、青年海外協力隊員が派遣国でどのような経験をしてくるのかを聞き、私は彼らのグローバル人材としての大きな可能性を感じました。

 風土、文化、宗教、歴史、商習慣など、あらゆる点で日本とは違う「外」の世界に触れる経験は、人の感性を豊かにし、大局観を養わせます。また、異文化の人たちと人間関係を築く難しさを乗り越えながらボランティア活動をやり遂げる経験は、利他の心やチャレンジ精神、どん欲さ、自立心などを育てる。青年海外協力隊というのは、そうしたさまざまな面で人間性を高めるチャンスにほかならないのだと思います。

職務能力とともに必要な人間性

ビジネスは、利益を出すことが至上命題です。そのためには専門技術や専門知識を高め、「職務能力」を磨くことは不可欠です。しかしその一方で、ビジネスには「人間性」がなくてはならないと私は確信しています。謙虚さを持たない人間、私利私欲にとらわれた人間というのは、たとえ立派な頭脳を備えていても、いいビジネスはできない。人間性のベースがなく、目先の損得計算ばかり長けているのでは、結局は良い技術や知識は身に付かず、取引先や同僚からの信頼も得られないからです。

 私は1990年代に先代から当社を継いだ当初、経営のやり方に試行錯誤を続ける中で、「社員の人間性と職務能力のバランス」について随分と悩みました。そうしてたどりついた結論が、「人間性がベースになければ、結局はビジネスの命を縮めてしまう」というものでした。

 そういう結論に達した後、まずは私自身が人間性を高めなければと考えて始めた試みのひとつが、毎朝、率先して事務所のトイレ掃除を行うことでした。すると、社員たちも自発的に毎朝みんなで事務所の掃除をするようになっていくわけです。小さな取り組みかもしれませんが、そうした行いが私たちの気づき、ひいては人間性の向上へとつながり、それとともに経営も徐々に上向いていきました。10年ほど前には、私たちが自ら高めていくべき人間性を列挙した「フィロソフィー手帳」をつくり、全社員に持ってもらっています。

民間連携ボランティア制度の活用へ

青年海外協力隊経験者を採用した背景には、以上のように社員の人間性を重視する当社の根本方針があります。そして、前述の男性社員は実際、期待どおりに人間性の高さを発揮してくれている。 そこで当社は、今いる社員にも青年海外協力隊の経験を積ませたいと考え、今年に入ってから社員を青年海外協力隊に参加させる「民間連携ボランティア制度」の利用に手を挙げました。現在は参加する社員も派遣国も決まり、派遣に向けた準備に入っています。派遣が決まった社員は、社内でも特に探求心や海外への興味が強い人材であり、青年海外協力隊でのさらなる成長に大いに期待をしています。

 当社は今後とも、青年海外協力隊経験者の採用や、民間連携ボランティア制度の利用を通じて、当社のグローバル化を担う人材を増やしていければと考えています。

PROFILE

大豊産業株式会社
創業:1949年
本社所在地:香川県高松市屋島西町1902-1
事業内容:電気・通信・土木関連の設備機器材料の販売・設計・施工・保守など
従業員数:169名(2013年9月現在)

HP:http://www.taihos.co.jp/
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