滝川市協力隊経験者が地方都市の力になる

  • グローバル人材の育成・確保
  • 研究・教育プログラムの強化

滝川市は、石狩平野の北部(札幌と旭川の中間)に位置する、人口約4万3千人の都市です。私は、市議会議員や道議会議員を務める一方で、国際交流協会の会長を14年にわたり務めさせていただいたことから、公約には「世界に誇れる滝川をつくろう」を掲げ、2011年の春からは滝川市長として、国際協力や国際交流を生かしたまちづくりに力を入れております。

 JICAさんとは、青年招聘事業の受入は以前からさせて頂いておりましたが、マラウイからの農業技術研修員を滝川市で受け入れた2000年からが本格的なお付き合いになります。その後、研修員の受け入れをより有意義なものとするためには、彼らの母国であるマラウイの現状を知ることも重要であるとの考えから、2003年より、滝川市からマラウイへ農業技術専門家の派遣も行っています。その数は、累計で22名となっています。

 この他、JICAさんと連携した国際協力活動は数多くございますが、なかでも、2010年に北海道の自治体として初めて、青年海外協力隊の技術補完研修を受託させていただいたことは、滝川市にとって、国際協力に向けた取り組みの新たな1歩となりました。これは、全国でもトップクラスの農業関連機関と経験豊富な農業者が揃っている滝川市で、派遣前の協力隊員を受け入れ、農業に関するノウハウや知識を、学んでいただくという取り組みです。

 第1回目の技術補完研修には、野菜栽培隊員としてルワンダとドミニカ共和国への派遣を控えた女性2人が参加されました。研修中のお2人は地元の方ともすっかり打ち解けて、わが娘のように皆さんに可愛がっていただきながら、5ヶ月間の研修を終えました。研修後に行われた、お2人による最終報告会には、50名以上の市民の皆さんが集まってくださいました。それぞれの任国へ旅立たれたあとも、研修で知り合った農家さんとは、メールなどを通じて、激励しあっているようです。また、滝川市での研修で学んだことが、非常に役立っているとの報告を受けています。

 こうした国際協力活動の輪は、市民の皆さんにも次第に広がり、非常に素晴らしい効果をもたらしています。例えば、農業経営は保守的になりがちですが、滝川市では外に目を向け、技術を伝えようとする農家が増えています。こうした姿勢は、自らの農業技術への自信の表れであり、また、自己研鑽への意欲につながるものと考えます。また、マラウイからの研修員と子どもたちとの交流がきっかけで、滝川市の子どもたちは、外国人に対しても構えることなく自然に接することができるようになってきました。以前、研修員と滝川市の小学校の子どもたちが、共に育てた野菜を共に収穫し、カレーライスを作って食べたことがありました。後日、子どもたちが、そのときの様子を絵に描いてくれたのですが、全員同じ肌の色で描かれていました。外国人に対して違和感を持たないという感覚は、世界を舞台に活躍する国際人の最低条件です。そういう意味で、こうした子どもたちの様子は、素晴らしい国際化であると思います。

 これからは、地方都市も「多文化共生」の意識を持って、行動しなければ生き残れません。その旗振り役になるのが、やはり協力隊のように、自らの意思で海外へ飛び出し、異国の地で活動をしてきた人たちになると思うのです。滝川市では、職員採用時に協力隊経験者の優遇を検討しております。また、現在も実施している社会人経験者採用の枠には、「多文化共生」の感覚を実地訓練で身につけてきた協力隊経験者の皆さんに、是非とも応募していただきたい考えです。世界に目を向け、世界を知った上で、自分たちの足元をしっかり固めようという考え方ができる人材が、地方都市にも必要です。したがって、青年海外協力隊事業は、この日本に必要不可欠であると言えます。私たちは責任をもって、帰国された協力隊経験者をきちんと受け入れる態勢を整えていきますので、JICAさんには、優秀な人材を育てる青年海外協力隊事業をさらに充実させていただきたいと思います。

市長
前田 康吉さん

PROFILE

滝川市役所
所在地:〒073-8686 北海道滝川市大町1-2-15
HP:http://www.city.takikawa.hokkaido.jp/
一覧に戻る

TOP