当社では、高精度センサーやモーター、ジャイロといった、制御装置のキーパーツである角度制御センサーなどを製作しています。部品メーカーなので一般の方の目に触れることはあまりありませんが、自動車や新幹線、工業用ロボット、静止衛星などはこの装置なしには動きませんし、ハイブリッドカーでは、モーターの回転を制御する角度センサーの世界シェアは100パーセント。実は、みなさんの生活に密着した製品を作っている会社なのです。

　当社が協力隊経験者の募集を開始したきっかけは、本社のある長野県飯田市役所からの紹介でした。｢JICAを通じて、協力隊経験者を対象にした求人を出してみては｣というお話をいただき、｢設計開発｣や｢生産技術｣｢生産管理｣｢営業｣など幅広い職種で募集しました。そして今年、タンザニアで活動してきた杉山さんを海外営業担当として採用しました。

　当社の製品は特殊なものが多いため、自社の機械を理解することはもちろん、顧客であるメーカーの製品も知っていなければなりません。そのため、営業も通常のルートセールスとは異なり、専門的な技術の知識が求められます。

　杉山さんは協力隊に参加する前はメーカーで設計の仕事をしていたので、しっかりとした技術の基礎知識がありました。また、タンザニアでは英語で授業をしていたということで、語学力も期待できます。技術面では2年間のブランクはありますが、大学や前職で習得した基礎知識があれば大丈夫。むしろ、協力隊の2年間で得てきたものを、営業という職種に大いに生かしてほしいと考えています。

　私たちが協力隊経験者に期待することは、まずは語学力や異文化への適応能力。当社のような部品メーカーは世界的に見てもそれほど数が多くないため、今後は欧米や中国、東南アジアなどでも製品の需要がさらに増えると考えております。また、海外に営業所や、技術サポートセンターの拠点をつくるという計画も持ち上がっています。このように海外展開を進めていくにあたって、英語や中国語といった語学ができることや、現地の人とコミュニケーションが図れることは必須条件ともいえるでしょう。また、技術面での知識もあったほうがいいですね。

総務部　部長
各務 誠さん

さらに、海外で仕事をするにあたり、精神力や忍耐力があればなおいいでしょう。協力隊経験者の場合、過酷な場所で活動してきた人も多いので、精神面での強さや、トラブル解決の能力も期待できるのではないかと思っています。

　協力隊の活動を終えて、これから帰国される方は、日本での就職に対する不安もあるでしょう。しかし、基礎的な技術力に加え、協力隊で培った語学力や精神力があるのなら、あとは自分の考えをしっかりと持って就職活動してほしいと思います。そうした人材を当社では求めています。

長野県飯田市にある本社の業務風景

JICAボランティア経験者から

今までと違う職種に就いても、行動力があればやっていける

私は、メーカーで真空装置の設計の仕事に携わった後、協力隊に参加して、理数科教師隊員としてタンザニアで活動してきました。就職については帰国直前から考え始め、転職サイトに登録するなどして、準備はしていました。

　当社の求人は、JICAボランティア経験者向けの就職情報から見つけました。｢ものづくり｣をしている技術力を売りにした会社ということで前職での経験が生かせると感じたことや、私が大学時代を過ごした長野に本社があるということに魅力を感じて応募しました。

　面接試験では、前の会社と協力隊での経験をアピール。協力隊については、ものごとを自分で判断し、行動に移してきたこと、いろいろ工夫しながら生徒や同僚とコミュニケーションを図ってきたことなどを話しました。

　職種は設計を希望したのですが、今後は海外展開に力を入れたいということで、海外営業として採用されました。現在は、ヨーロッパ担当として、各国から入る当社製品の注文や問い合わせに対応しています。

　営業という職種は初めてですし、英語も完璧とはいえないため、最初は不安もありました。実際に働き始めてわからないことも多いのですが、そんなときには周りの人にどんどん聞いて、協力隊時代のように｢あれこれ考えるよりも行動してみよう｣という気持ちで働いています。

海外営業本部　営業部
杉山 正晃さん
(平成19年度派遣/タンザニア/理数科教師)