THK株式会社休職を認めた甲斐があった社員の協力隊参加

  • グローバル人材の育成・確保
  • 開発途上国へのビジネス展開
  • CSR活動

THK株式会社は、世界シェア約60%、国内シェア約70%を誇る直動システム「LMガイド」のパイオニアメーカーであり、工作機械、産業用ロボット等の基幹部品として、世の中に広く貢献してきました。現在は、その技術力と提案力で免震装置、自動車・航空機部品、医療・福祉機器、ロボット、風力・太陽光発電装置部品等の分野にも事業領域を拡大しております。

 当社では、"21世紀には、機械要素メーカーとして、世界で10指に数えられる企業に成長しよう"という経営スローガン「Global10 21」のもと、まずは直近の目標として「グローバル展開」と「新規分野への展開」に注力しています。その実現において、最も重要なのが「人財」です。当社では、特に「心の才能」を持った人財を求めています。「心の才能」とは、常に前向きで、何事も素直に受けとめ、周囲の人や環境にとらわれることなく、努力し続ける資質のことです。そうした意味において、協力隊経験者の林さんは、現地でのさまざまな経験を通して、もとから備わっていた「心の才能」にさらに磨きをかけた人財の1人だといえます。

 林さんから、協力隊参加の意向があることを聞かされたときは大変驚きましたが、斬新な感性を持つ彼女らしい決断だと感心したことを覚えています。それと同時に、大切な人財を失ってはならないとの強い思いが所属部署内のみならず、我々人事部門の上層部にも芽生えました。CSRの観点から、ボランティア活動への積極的な参加を促すことは当然であるとの考えがあったことも事実です。その後、検討を重ねた結果、ボランティア活動には、仕事では経験しがたい学びや新たな気づきがあること、それがひいては、今後の職務を遂行していくうえでプラスになるとの結論に至り、2007年12月に、「ボランティア休業制度」を制定しました。本制度は、勤続3年以上の社員が地域社会に貢献度の高いボランティア活動をする際に、最大で3年まで休業を認めるというものです。優秀な人材が協力隊参加のため2年にわたり不在になることは、確かに社の損失ではあります。しかし、社員の成長は当社の財産であることを考えると、協力隊に参加することは天秤にかけても、大きな意味があると考えます。

 世界中に市場を持つ当社にとって、社員一人ひとりが、グローバルな感覚や視点を持って職務を遂行することは、極めて重要なことですが、そうしたものは教育で身につくものではありません。林さんのように実際に海外へ赴き、現地の多様な価値観に接しながらでしか、なかなか身につかないのが現状です。したがって、当社のようにグローバル人材を求める企業にとって、青年海外協力隊の活動は大変有意義であると考えています。林さんは、協力隊経験を通じて、持ち前の前向きさに加え、いかなる状況でも最後まで諦めずにやり抜く力や、柔軟にものごとを捉えたり、考えたりするバランス感覚を備えたように思います。また、決して折れない心と精神的なタフさにも磨きがかかったといえます。これは、言語も文化も習慣も異なるなかで仕事を進めていく苦労や、そこで出会った様々な人たちとの出会いによって、大きく成長が促されたものだと思われます。

 昨年、林さんには、実務レベルでは初の女性社員として、3ヶ月間のブラジル出張が命ぜられました。もちろん、林さんの背景に、ペルーでの2年にわたる協力隊経験があることを鑑みての抜擢でしたが、ペルーとは言語が異なること、3ヶ月という長期であることなどを考えると、林さんの反応が少々心配でした。また、治安の面はもちろんですが、ブラジル事務所には日本人駐在員が一人も居ないこともあり、現地での生活やコミュニケーションは大丈夫だろうかと思っていました。しかし本人からは、「電気と水道さえあれば基本的にどこでも行けます。出発まで2ヶ月もあれば日常会話レベルまでは身に付けられますから」との頼もしい言葉がありました。立派に業務遂行をしてきてくれたことは、言うまでもありません。こうした柔軟性やタフさを備えた社員が生き生きと仕事をする姿は、他の社員の良い手本にもなりますし、良い刺激にもなります。こうした点も人事部門としては、大きなメリットだといえます。したがって、今後も協力隊の活動への参加希望者には、前向きな支援を行っていく考えです。

経営戦略室 人事総務部 人財課 課長
佐藤 常弘さん

グローバル展開に注力するTHK株式会社。

JICAボランティア経験者から

協力隊での過酷な2年間がいかなるタスクもこなせる自信に

大学で国際協力・開発経済学を専攻していたこともあり、学生時代は国連機関、外務省やNGOなどを通じてボランティア活動に携わってきた経験がありました。2003年、当社に入社し、販売促進・宣伝広告等の業務に就き、仕事へのやり甲斐を感じる一方で、「国際協力に携わりたい!」との思いが消えることはありませんでした。そして、入社5年目のときに、協力隊に応募したのです。合格と同時に退社を決意し、その旨を上司に伝えところ、多くの方が尽力してくださり、1ヶ月もしないうちに「ボランティア休業制度」が制定されました。一民間企業が、一社員の声に真剣に耳を傾け、社会貢献に繋がる協力隊事業に理解を示してくれたことは、国際協力に携わってきた者として、とても嬉しいことでした。

 私は、2008年から2010年の2年にわたり、協力隊員としてペルーの首都、リマ郊外にある養護施設に派遣されました。家族と一緒に暮らすことができない2歳から19歳までの子どもが40人ほど生活する施設で、私も寝食を共にしながら学習支援を行い、時には日本の文化を伝えたりしながら、対話を重ね、子ども達との間に信頼関係を築く努力をしました。施設内のスタッフと理解しあおうにも、不慣れな言語のために、どうしても直接的な表現しかできず、お互いに声を荒げてしまうこともありました。理不尽な状況に直面し、とても悔しい思いをしたこともあります。自分の思いだけが空回りをしているような気がして、すっかり落ち込んでしまい、日本に帰ることを考えたこともありました。しかし、そんな自分を信頼してくれている子どもたちのことを思うと、任期途中で帰国することはできませんでした。また、当社での業務を通じて、多様な意見をまとめることの難しさや、新しいプロジェクトに取り組むときのノウハウを経験していたことも、私の支えになっていたと思います。

 苦労の多い2年間ではありましたが、協力隊での経験を通じて、あらためて価値観の多様性を知り、自分の視野を広げることができたと感じています。そして、思うようにいかないことばかりの協力隊経験は、私をとてもタフにしてくれました。現在、私は海外営業統括部に在籍し、主に南米マーケットを担当しているのですが、一見不可能とも思えるようなタスクに対しても、「まずはチャレンジしてみよう!」「ペルーでの2年間に比べれば、たいしたことない」と思うことができます。また、立場の異なる方や海外の方と接するときに、協力隊経験で得た多様な価値観が、私の大きな武器になっているように思います。そうしたかけがえのないものを、今の業務に最大限に生かしながら、当社が新興国へ進出するうえでの一翼を担っていきたい考えです。

 ペルーから帰国して職場復帰した際、当時の上司から「自分が働いている会社も変えられずに、世界を変えられると思うのか!」と叱咤激励をされた事は今でも忘れられません。まだまだ、自分が当社でやるべき事は山ほどあると感じています。日々の業務に忙殺されがちな毎日ですが、協力隊の2年間で学んだこと、そして自分の夢と目標を見失わないように、貴重な経験をさせてくれた当社と共に、これからも成長し続けたいと思っています。

海外営業統括部 海外営業推進部
海外営業推進課
林 麻里子さん
(平成19年度派遣/ペルー/青少年活動)

派遣先の養護施設の子どもたちと。帰国から2年が過ぎた今もなお交流は続いている。

PROFILE

THK株式会社
設立:1971年4月
所在地:〒141-8503 東京都品川区西五反田3-11-6
事業内容:各種軸受および機械要素の製造、販売/工作機械およびその部品の製造、販売/自動車部品、自転車部品および輸送用機械部品の製造、販売 など
従業員数:3,392名/連結会社合計 8,628名(2012年3月31日現在)
協力隊経験者数:1名(※現職参加)(2012年6月現在)

HP:http://www.thk.com/jp/
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