東芝放送ネットワークエンジニアリング株式会社価値観の多様性に触れた経験で
新しい風を吹き込むことを期待

  • グローバル人材の育成・確保

協力隊参加で度胸がすわった

弊社は株式会社東芝のグループ会社として2004年に設立されました。主な事業として、放送事業、現在は特に地上デジタル放送事業に必要な機器の製作や、携帯電話の基地局の設計などを行っております。
 弊社は大きく分けて、設計を担当するエンジニア部門、工事関係の施工管理をする部門、総務や経理などの管理部門の3部門で構成されており、笠原くん(平成18年度派遣/エルサルバドル/感染症対策)には入社以来、総務の仕事に携わってもらっています。
 私自身が現在の部署に来たときには、笠原くんはエルサルバドルに協力隊員として赴任している最中でした。帰国後にきちんと会社に復帰してくれるのだろうかという不安はありましたが、彼の人柄については人から聞いていたので心配はしていませんでした。帰国して実際に会って受けた印象は、途上国で活動してきたからだと思いますが、「相当度胸が座っている」というもの。むしろ私の方が感情的になってしまうことがあったりするくらいです。
 協力隊に現職参加するのは、笠原くんが弊社として初めてのケースでした。協力隊に参加したいという社員が出てきた場合、「いつから参加するのか」「任期はどのくらいか」「その間の業務をどうカバーするのか」などについて、本人と腰を据えて話をすることが大切だと考えています。管理部門の場合、人事異動が比較的頻繁にあります。そのため、協力隊への現職参加を含め、長期休職もタイミングさえ適切ならば成立しやすいのではないでしょうか。

管理部 総務担当グループ長
岡田 興起さん

社員を協力隊へ送り出す意義

社員が協力隊を経験することは、会社にとって直接利益につながるものではありません。また、参加した本人にとっても、その経験をそのまま社内の業務で生かせる機会は少ないと思います。
 しかし、弊社には東芝グループに共通のものとして、国籍や宗教をはじめとする人間の多様性を企業として受け入れていこうという姿勢があります。笠原くんは協力隊員として外国で生活するなかで、多様な価値観を見てきたと思います。企業には「社風」と呼ばれる、一定の習慣やしきたりがあると思いますが、さまざまな価値観があることを実感してきた彼には、企業に染みついているそうした固定概念にとらわれずに、広い視野で社風を見つめ、これをいい方向に変化させていく役割を任ってほしいと思います。
 これは、突拍子もない行動や組織人として相応しくない行動をしても構わないということではありません。あくまでも社の価値観を理解したうえで、組織に新しい風を吹き込むことを期待しているのです。
 企業として社員を協力隊に参加させるときには、「復帰してもすぐに辞めてしまうのではないか」とか、「外国流の考え方で勝手に行動するようになってしまうのではないか」といった不安はつきものだと思います。送り出す企業の側が、協力隊から戻ってきたあとに、その経験をどう仕事に結びつけてもらうかを含めてしっかり考えたうえで、覚悟をもつことが必要なのだと思います。「Win‐Win」という言葉がありますが、企業と社員の双方が満足のいく道を模索して初めて、社員を快く現職参加制度で送り出すことができるのではないでしょうか。

東芝放送ネットワークエンジニアリングの本社が入るビル

JICAボランティア経験者から

人と組織をつなぐ協力隊時代の役目は「総務」の仕事と通じるもの

青年海外協力隊には中学生のころからずっと憧れを抱いていました。「協力隊=正義の味方」というイメージが強かったからです。学生時代にも募集説明会に行きましたが、専門的な知識や技術を持たない自分には到底無理だなと思ってそのときはあきらめました。
 大学を卒業後、就職して社会人として働き始めましたが、協力隊に参加する夢も捨て切れませんでした。そろそろ年齢制限を迎えてしまう歳になって、中学時代から思い続けてきた夢を終わらせるわけにはいかないと一念発起し、協力隊に応募しました。
 派遣されたのはエルサルバドルのモラサン県地方医務局です。中南米の代表的な感染症のひとつであるシャ-ガス病の対策に取り組むというのが私の役目でした。私が行った主な活動は、モラサン県内のサシガメ(シャ-ガス病の原因となる原虫をもった虫)の生息状況の調査、サシガメが生息しがちな日干しレンガや木、藁でできた家屋での殺虫剤散布、小学校や保健所での啓発活動です。
 エルサルバドル人の50人に1人がシャ-ガス病に感染しているのにもかかわらず、貧困層がかかりやすい病気であるため、社会問題になりにくいというのがこの病気の特徴です。私の活動のメインとなったのは、小学校を巡回して啓発活動を行うことでした。やがて、モラサン県内の村や町で私は「チンチェ・ピク-ダ(スペイン語でサシガメを指す)」とあだ名で呼ばれるほどになりました。
 感染症対策の隊員の活動は医療行為をするわけではありません。配属先や活動にかかわる人たちの間をとりもち、彼らのモチベーションをアップさせつつ、ひとつの目標に向かって進むというのが、その活動の柱です。これは、職場の人たちの話を聞き、職場と従業員の間の調整をしていく私の今の総務の仕事と通じるものだと思います。協力隊時代に初めて「多様な価値観」を肌で感じた経験なども、今後、仕事のなかで何かしらの形で生かしていきたいと考えています。

シャーガス病の予防に関する啓発活動を行った小学校の児童と笠原さん

PROFILE

東芝放送ネットワークエンジニアリング株式会社
設 立:2004年7月1日
本社所在地:東京都府中市東芝1
事業内容:放送システムや伝送・ネットワークシステムの製作など
従業員数:380名
協力隊現職参加実績:1名
一覧に戻る

TOP