月電ソフトウェア株式会社SEとしての基盤と海外勤務への積極的な姿勢

  • グローバル人材の育成・確保
  • 開発途上国へのビジネス展開

当社の主な業務は、ソフトウェアのシステム開発です。通信系ソリューションから自動車の組み込み、携帯のアプリケーションまで、クライアントであるメーカーからシステム開発の仕事を受託して、自社で開発しております。当社を設立した翌年にはフィリピンに現地法人を設立。現在、約320人のフィリピン人のシステムエンジニア(SE)が、簡易システムから基幹系通信システムまで、さまざまなプロジェクトを担当しています。

 フィリピンの現地法人には日本人の「ブリッジSE」が出向し、クライアントと現地スタッフのリーダーとの調整役をしています。当初は、このブリッジSEとなる人材を見つけるのが大変でした。本社は福島にあるのですが、土地柄なのか、ほとんどの社員が福島県内での勤務を希望し、海外勤務を打診してもなかなか首を縦に振らなかったのです。

 そんな折、協力隊経験者向けに求人募集を出せるということを知りました。SEとして活動していた協力隊経験者なら、スキルがあることはもちろん、海外生活にも慣れていて現地スタッフともうまくやれるのではないか。そう考えてJICAを通じて募集を始めました。現在までに3人を採用し、彼らはフィリピンで勤務しています。

 私たちのクライアントはほぼ100パーセントが日本の企業なので、ブリッジSEの職務は、文字どおり日本とフィリピンの橋渡しといえます。クライアントからの注文は、言葉や表現の違い、日本人独特の価値観などがありますから、そのまま伝えればいいというものではありません。ブリッジSEが、それを適宜、現地スタッフのリーダーに伝えて調整することで、クライアントが希望するシステムをスムーズに作り上げることができるのです。

管理部 執行役員 人事総務・経理担当
菅野 茂夫さん

私たちが協力隊経験者に求めるもののなかで最たるものは、SEとしてのしっかりとした基盤と、海外で働くことへの抵抗のなさ。なぜなら、最近は若い人のなかに「海外勤務はしたくない」という人が増えていると感じるからです。協力隊経験者でも、「数年なら」と、期限付きで赴任したいという気持ちが強い人が多いと思います。

 海外勤務への積極的な姿勢とともに、コミュニケーション能力も大切。人の話を聞かず、一方的に自分の主張をまくしたてるような人には、現地スタッフはまずついていかないでしょう。英語力は必ずしも必要ではありません。現地のリーダーたちは経験年数も長いし、基礎的な日本語教育も受けているので、語学力不足がコミュニケーションの妨げになることはさほど多くはありません。

 ブリッジSEは、SEでありながらクライアントと現地スタッフをつなぐという「人」相手の仕事。システム開発の経験があり、海外が好きで、コミュニケーション能力がある人に応募してほしいと思っています。

フィリピンにある現地法人での業務風景

JICAボランティア経験者から

協力隊時代の価値観でなく、会社の立場を考えた行動が必要な海外駐在

取締役
増田 宏治さん
(平成12年度派遣/エチオピア/コンピュータ技術)

私が会社を辞めて協力隊に参加したのは38歳のとき。延長したので、帰国時には42歳でした。もともと私はバックパッカーで、海外が好きだったので、「帰国後は、海外とかかわりのある企業で働きたい」と考えていました。

 ある日、フィリピンでSEを募集している当社の求人案内を見つけました。自分に合っているのではないかと考えて応募。ブリッジSEとして入社し、希望通りフィリピン勤務となりました。

 大手から末端の作業を請け負う中小企業では、SEはたとえ勤続10年で課長の肩書きがついたとしても、仕事内容は今までの延長であることが多いと思います。しかし当社では、15人いるブリッジSEが、それぞれ10~20人の現地スタッフのチームを運営。そのため、SEといっても、パソコンに向かって作業をするというより、チーム全体のマネジメントをしているという感覚です。「ある程度、自分の采配でプロジェクトを動かしたい」と考えているSEにはぴったりの仕事ではないでしょうか。

 協力隊経験者へのアドバイスとしては、企業に就職したら仕事と私生活の区別をつけたほうがいいということ。現地の人と同じように暮らすことは、隊員にとって、かけがえのない財産になると思います。しかし、一般企業の海外駐在でそれをしてしまうと、会社に迷惑がかかることがあります。「衛生面に問題がありそうな店では食事をしない」「料金は安くても、遅れたり事故の危険がありそうなバスには乗らない」など、価値観の切り替えはしっかりとしてほしいと思います。

 現在、私は取締役として、主に日本企業向けの営業を行っています。私はしゃべるのが大好きだし、人事担当者には「営業が向いている」と思われたのかもしれません。今後はフィリピンの現地法人を500人、そして1,000人態勢に拡大し、それと同時にほかの国にも進出していきたいという目標を持っています。

PROFILE

月電ソフトウェア株式会社
設立:1989年3月
所在地:福島県福島市大町7-11 明治安田生命ビル4階
事業内容:福島にある本社のほか、フィリピンに現地法人を持ち、ソフトウェアの受託開発を行っている
職員数:121名(2009年7月現在)
JICAボランティア経験者数:3名(2010年5月現在)

HP:http://www.tsukiden.co.jp/
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