つくばフットボールクラブ(つくばFC)組織に多様性をもたらす人材として
青年海外協力隊経験者に期待

  • グローバル人材の育成・確保
  • 開発途上国への物品提供
  • 研究・教育プログラムの強化

青年海外協力隊事業との親和性

茨城県つくば市をホームタウンとするサッカークラブであるつくばFCは、株式会社つくばFCとNPO法人つくばフットボールクラブという2つの組織が経営母体となっています。

 2015シーズンは関東サッカーリーグ1部を戦う男子チーム「ジョイフル本田つくばFC」やチャレンジリーグを戦う女子チーム「つくばFCレディース」というトップチームをはじめ、各年代のチームを擁しています。

 クラブの事業理念は「すべての人が、生涯、すばらしい環境でスポーツを楽しめるようにする」です。スポーツ普及やスポーツ環境の整備に貢献することが大切なクラブの役目と考え、さまざまな形でその実現に向けた取り組みを進めています。その中で現在、二人の青年海外協力隊経験者がクラブの専任スタッフとして活躍しています。一人はパプアニューギニアで村落開発普及員として活動した男性で、もう一人はバングラデシュでサッカー指導に携わった男性です。

 彼らから当時の協力隊活動の様子を聞くと、つくばFCの事業と青年海外協力隊の活動は非常に親和性が高いと感じます。前述の理念のもと、つくばFCでは、幼稚園や小学校にクラブ専任のコーチを派遣してスポーツ活動を推進したり、ハンディキャップをもつ方々のサッカーチーム、高齢者が行うグラウンドゴルフ団体などに指導や施設提供をするという形でサポートを続けています。一方、青年海外協力隊も同じように、派遣された国の学校や障害者施設などに入って自分が持つ技術やノウハウを伝える活動をしていると聞いています。

 つくばFCではクラブ理念の実現のため人工芝や天然芝グラウンドを普及する活動も行っていますが、そのような「物の支援」だけではなく、コーチを小学校などに派遣してサッカーや体育を教えるといった「人と人とがかかわる支援」をとても大事にしています。この点も、青年海外協力隊の理念と相通じるものだと思います。

 青年海外協力隊を経験した二人のスタッフは、それぞれの任国で得たものをもとにつくばFCに新たな事業のアイデアをもたらしてくれています。例えば、つくばFCに通う子どもたちと、青年海外協力隊員が関わる途上国の子どもたちとが交流し、双方が「世界」に触れられるような機会をつくることであったり、つくば市には外国人が多く暮らしているので、彼らと地元の人たちとが交流するイベントをつくば市と協働し、企画、運営をしてくれています。また、JICA筑波に研修できている研修員たちがクラブが運営するフットサル場に訪れ、サッカーを楽しむ様子がみられるようになりました。これらの変化は、彼らがもたらしたクラブの新たな価値となっています。

株式会社つくばFC代表取締役 兼 特定非営利活動法つくばフットボールクラブ代表
石川 慎之助さん

青年海外協力隊経験者が持つ「積極性」

彼らの仕事ぶりを見ていると、青年海外協力隊経験者のいわば「特長」だろうと感じる点はほかにもあります。例えば、「自分の考えをきちんと言える」という点です。社内の会議では、「黙って周囲の空気を読む」という姿勢になりがちな中、彼らは周囲の空気を読みつつも、言わなければならないことはきちんと伝えてくれます。また、「ちょっと汗をかかなければならない」というようなときに、それを厭わないという点も、彼らに共通して見られる特徴です。もともとそうした資質を持っていたからこそ、青年海外協力隊に参加したのだと思いますが、さらに、派遣中の経験でそれが磨かれ、洗練されてもいるはずです。

 つくばFCでは、青年海外協力隊経験者には間違いなくほかの人にはない個性があると確信したことから、今後も、「現職参加」や「経験者の採用」といった形で青年海外協力隊員をスタッフに取り込んでいきたいと考えています。当クラブは筑波大学蹴球部のOBが母体となって立ち上がったクラブであるため、スタッフの大半が筑波大学の関係者となっています。しかし、そのままではスタッフの考え方に多様性が生まれず、事業の広がりに限界がきてしまいます。だからこそ、さまざまなバックグラウンドの人にクラブの運営に参加していただきたいと考えています。その意味で、青年海外協力隊経験者は、クラブにとってひとつの貴重な資源になると考えています。青年海外協力隊がスタッフのなかに増えれば、彼らの考え方や現地での経験から、ほかのスタッフが刺激を受け、外に目を向けるきっかけになるだろうとも思います。

青年海外協力隊員を通じてサッカー用具を寄贈

青年海外協力隊経験者を初めて雇用したのは2011年ですが、それ以前の2009年から、JICAの「世界の笑顔のために」プログラム(※)を通じて青年海外協力隊事業とのかかわりを持ち始めていました。同プログラムでこれまでに、サッカーボールやユニフォーム、シューズをモザンビーク、パプアニューギニア、バングラデシュといった国々に寄贈させていただいています。つくばFCは「すべての人が、生涯、すばらしい環境でスポーツを楽しめるようにする」という理念を掲げていると申し上げましたが、この「すべての人」は、「つくば市」や「日本」を超え、世界に広げていくべきだと考えています。それを実現する足がかりとして青年海外協力隊事業と連携させていただいてきました。今後も、私どもの事業を通じて青年海外協力隊への興味を持つ青少年の掘り起こしなどに協力させていただく等、互いの思いを実現できるような関係を続けていければと考えています。

※「世界の笑顔のために」プログラム
開発途上国で必要とされている教育、福祉、スポーツ、文化などの関連物品について、ご提供くださる方々を日本国内で募集し、JICAが派遣中のボランティアを通じて世界各地へ届けるプログラム。

PROFILE

特定非営利活動法人つくばフットボールクラブ、株式会社つくばFC
クラブ創設:1993年
法人設立:2003年(特定非営利活動法人つくばフットボールクラブ)、2005年(株式会社つくばFC)
事務所所在地:茨城県つくば市稲岡66-1 イオンモールつくばA区画
事業内容:サッカークラブの運営、スポーツの普及、スポーツ環境の整備、スポーツに関する研究など
HP:http://www.tsukuba-fc.com
一覧に戻る

TOP