横浜市役所協力隊の経験がすごく生きている

  • グローバル人材の育成・確保

JICAボランティア経験者を採用した人事担当者から

横浜市では、青年海外協力隊・民間企業などの経験を横浜市政に生かしたいという意欲的な人材を求めています。平成21年度の横浜市職員採用試験・社会人枠は4回目の募集でした。試験開始の理由は民間企業の流れと同様に、団塊世代の退職が続いており、大卒などの枠だけでなく、経験のある社会人も採用して即戦力として働いてもらうという試みでした。3つの社会人枠があり、民間企業枠、社会福祉枠、そして協力隊など経験のある方が受けられる国際貢献活動枠です。

 「市民力と創造力により新しい『横浜らしさ』を生み出す都市」の実現を目指して、協力隊などの国際貢献活動の経験を通じて、海外で培われえたタフなチャレンジ精神や忍耐力、さまざまな文化・生活様式などを持つ人々を理解できるコミュニケーション力、受容力、適応力などを求めています。横浜市は開港して以来、国際色豊かですので、青年海外協力隊の方が横浜市に入ることで、組織としても向上すると考えたのです。

 一般試験に比べて、受験要件がそれ程厳しくなく、海外での活動が2年以上経験のある方は受験できるので、入口は広いと言えるのではないでしょうか。試験では、語学力とか国際的な感覚が判断基準というわけではありません。見知らぬ海外で、途上国の人たちと接していく中で、いろんなハードルを乗り越えてきたと思うのですが、その中で培ったタフさというかコミュニケーション力に期待している部分もあります。

 採用後は必ずしも国際的な部署に配属されるわけではありませんが、基本的には合格後に個別に希望を聞いて、可能な範囲で海外経験を活かせる部署に配置させていただいています。ただ全体を通して大人数の部署ではないので、例えば海外で子どもたちに対する支援をしていた方は、国際的なものではないですが、子どもに関わる部署に配属するなど、全体のバランスの中でやっています。

横浜市行政運営調整局 人材組織部
人事組織課 人事第二係長(当時)
栗原 浩一さん

協力隊経験者の働きぶりを検証すると、どの方も、どの部署においても好評で戦力になっているという評価を聞いています。ある協力隊OBは、役所にて温暖化対策に取り組んでいますが、協力隊時代にナイジェリア政府と交渉した経験を生かして、ほかの環境団体と連絡を取り連携して取り組んでいます。そこには協力隊で培ったタフなコミュニケーション能力が生かされていますよね。そして周りのスタッフにも少なからず良い影響を与えているようです。横浜市は国際会議も行なわれる機会もあります。そんな時に我々も人事当局として、国際貢献活動経験者にヘルプを出して期待しますと、俄然、本人もやる気を持って活動してくれます。

 協力隊に参加された皆さんは、単にお金のために働くといった気持ちではなく、自分の成長のためとか、人のためとか、世界のためとか、そういう根本的な思いがあると思います。横浜市の区政にもそれがありまして、公の貢献活動というモチベーションを持つくらいの気持ちで、みんなが幸せになる世の中になるためということを念頭に置いていただきたいです。日本に戻ってきてからもいろいろハードルはあると思いますが、横浜市は能力のある方々といろんな仕事をしていきたいと思っています。平成21年度の申し込みのあった54人は、北海道から九州まで全国から集まりました。その中で6人採用しました。倍率は8.2倍です。現在、会社に属している方も受けることができるので、ぜひ多くの方にチャレンジしていただきたいです。

人材組織部 人事組織課(当時)
楠 浩一郎さん

協力隊経験者は心強い

横浜市鶴見区役所総務部区政推進課は区の事業の方針を決めて推進していく課です。環境問題を考えて緑化を推進したり、外国人が多く在住するので多文化に対応したりと様々な部署が関わる問題を横断的に取り組む部署です。鶴見区は京浜工業地帯からの流れで世代を重ねる在日の方も多く、28人に1人が外国人です。青年海外協力隊OBの伊藤さんには鶴見区に住んでらっしゃる外国人の方の生活サポート、多文化共生関連の仕事を中心に担当してもらっています。区内に住む外国人の方に言葉と言葉の壁だけでなく、日本の仕組みで苦労している面を理解してサポートしてもらう事業が主な仕事です。

 伊藤さんの協力隊での経験は心強いです。鶴見区に移住している外国人同様に、彼自身が母国ではない所に入って行って苦労した経験もあるし、いろんな文化を持った方々と肌で接してきているので、外国の方の立場を素直に理解していると思います。知らず知らずのうちに経験を生かして本領を発揮し、それが区政に還元されているのではないでしょうか。これは大変ありがたいことです。やはり協力隊での経験を持つ人が部署にいると、柔軟な考えも生み出されます。行政での取り決めを一方的に支援するのではなく、実際に暮らしている外国人の方から話を聞いてニーズを探って、区政として何をいますべきか考えてくれています。特にコミュニケーション力が大事になる中、彼の人間性もあるとは思いますが、人との関わり方が上手ですし、相手に安心感も与えてスムーズに悩みを聞き出して、推進も上手くいっています。

 地域行政に携わると、区民のひとりひとりの顔が見えますので、様々な対処していかないといけません。役所の枠を超えて対応し、頭を固くせずに発想も柔軟にしないといけません。伊藤さんを見ていて、そんな様々な場面でも、協力隊の経験がすごく生きているなぁと感じることが多いので、これからの鶴見のためにも、是非活躍していってほしいと思っています。

鶴見区役所総務部 区政推進課
まちづくり調整担当係長
大塚 尚子さん

JICAボランティア経験者から

在日外国人の気持ちを理解できる強み

横浜市の職員採用試験を受けたのは、「国際貢献活動経験者枠」が初めて設けられた2006年です。そこで採用されて以来、現在まで鶴見区役所に配属されています。担当しているのは「多文化共生」の分野。同区には外国人の方が非常に多く住んでおり、その出身国も中国や韓国、ブラジルやペルーなどさまざまです。そうした方々が、子育てのこと、保険のことなど、暮らしで困っていることがないか、耳を傾け、解決していくというのが私の仕事です。

 私がJICAボランティアとして赴任していたときは、鶴見区に住む外国人とちょうど逆の立場にいたわけです。外国で暮らすというのは、わからないことだらけで不安です。そういう視点を持てるのは、やはりJICAボランティアを経験していることが大きいのではないでしょうか。

 外国人の方が困っていると思うと、自然に動き出す。そんな行動力も、JICAボランティア経験者ならではではないかと思います。

鶴見区役所総務部 区政推進課 企画調整係
伊藤 豊さん
(平成12年度派遣/ブラジル/体育指導)

一覧に戻る

TOP