対面式での初会合をホスト~ファブラボブータンネットワーク会合

10月26日と27日の両日、私たちのプロジェクトが拠点を置くファブラボCSTで、対面では初めてとなるファブラボブータンネットワーク会合が開催されました。ブータンには2023年11月時点で全国に6つのファブラボがあります。このうち、ゲレフのTTTRCを除く5つのファブラボの担当者と、ファブラボの政策窓口とされている王立STEM教育協会(RSSTEM)の担当者が南西部の都市プンツォリンに集まり、各々の近況と活動報告に加え、直面する課題について話し合い、ラボの特色を生かした各地域コミュニティでの取組みについて、グッドプラクティスの共有が行われました。

集まったのは、ティンプーのスーパーファブラボとチェゴファブラボ、パロのDGI、ロベサのCNRバイオファブラボ、それにホストのファブラボCSTです。スーパーファブラボは、若手の技術者を3人派遣したのに対し、他のラボはすべてマネージャーが参加し、ラボの運営面での課題について、熱のこもったやりとりをリードしました。また、11月に正式開業するチェゴファブラボにとっては、ファブラボブータンネットワーク会合がデビューの場となりました。

地方ラボがいずれも指摘した共通課題としては、2024年1月開講のファブアカデミー(6カ月間のものづくり人材育成プログラム)への受講者派遣、あるいは7月の第18回世界ファブラボ会議(FAB23)の席上、MITニール・ガーシェンフェルド教授から示された「21世紀型スキル教育」のブータンでの実施、ファブアカデミーのブータン版の検討、資機材の共同調達制度の構築、7月の「ファブシティ」加盟宣言後のブータンでの取組みの検討、ファブフェスティバルの年次開催、ラボ運営の長期的持続可能性などが挙げられました。スーパーファブラボからの出席者が若手だったため、これら地方ラボの問いに対して回答し、方向性を議論するまでには至りませんでしたが、これらが地方ラボに共通の課題であるとの認識は共有されました。

また、会合では各ファブラボにもセッションのホストを依頼し、これをハンズオン研修や議論など、どのように使用してもよい、各ラボの発意に任せるプログラムも用意しました。例えば、ファブラボCSTでは、初日に障害者自助具のカスタマイズ製作の動きを全国に拡げるため、10月初旬にインド・チェンナイで開催されたEMPOWER2023カンファレンスに出席した、ブータンファンデーションの担当者をネットワーク会合にも招き、共同でセッションを運営しました。
また、2日目には、プンツォリン市内のユースセンターをお借りして、シングルボードコンピュータ「Raspberry-Pi(ラズベリーパイ)」搭載の拡張キット、「pi-top(パイトップ)」を用いた電子工作とプログラミングを、会合出席者に体験してもらいました。ユースセンターが近所にあるチェゴファブラボやCNRにとっては、参考にしてもらえる取組みといえます。

今回のネットワーク会合は、私たちの技術協力プロジェクトが間もなく終了を迎えることから、その成果ともいえるファブラボCSTの実績をアピールしたいとの思いで、山田浩司専門家から全国のファブラボに開催を呼びかけました。これまでオンラインで1時間の短い会合しか行われず、実質的な議論の場となってこなかったネットワーク会合を、2日間の日程で集中的に論点を整理し、今後の具体的な行動につなげるきっかけを作ることができ、出席者の間では、「年1回ではなく年2回は開催すべき」との強い声が聞かれました。

【関連リンク】

「カトマンズ・チェンナイ視察旅行で見てきたもの」
https://www.jica.go.jp/oda/project/1900281/news/1520449_45018.html

「pi-top(パイトップ)をめぐる地元ユースセンターとの協働」
https://www.jica.go.jp/oda/project/1900281/news/20231016.html

ネットワーク会合の会場はファブラボCST(写真/山田浩司)

ネットワーク会合の会場はファブラボCST(写真/山田浩司)

自助具技術の普及に関しては、インドの協力者ともオンラインでつないで議論を行った(写真/山田浩司)

自助具技術の普及に関しては、インドの協力者ともオンラインでつないで議論を行った(写真/山田浩司)

スーパーファブラボからの提案によるコンピュータ支援三次元製造技術のハンズオンセッション(写真/山田浩司)

スーパーファブラボからの提案によるコンピュータ支援三次元製造技術のハンズオンセッション(写真/山田浩司)

ユースセンターをお借りして、pi-topの操作説明を行う山田専門家(写真/Tenzin Dorji)

ユースセンターをお借りして、pi-topの操作説明を行う山田専門家(写真/Tenzin Dorji)

pi-topを使ったコーディング学習を体験する参加者(写真/山田浩司)

pi-topを使ったコーディング学習を体験する参加者(写真/山田浩司)