成果指標はクリアしたものの、持続性については注意が必要-第6回合同調整委員会開催

11月16日(木)、王立ブータン大学科学技術単科大学(CST)ファブラボCSTレクチャールームにおいて、プロジェクトの第6回合同調整委員会(Joint Coordination Committee, JCC)が開催されました。JICAからは、山田智之ブータン事務所長が共同議長としてオンライン出席し、JICA本部からも担当のSTI・DX室職員2名がオンラインで出席しました。その他にJICAブータン事務所からは、所員3人が対面での委員会に臨みました。

プロジェクトからは、山田浩司専門家(チーフアドバイザー)と小暮陽一短期専門家が同席し、CSTも、共同議長であるチェキ・ドルジ学長を筆頭に、カウンターパートに指名されてきた多くの関係者と、ファブラボCSTをプロジェクトから継承して今後運営を担っていくCST電気通信工学科の教員数名が新たに委員会に臨みました。

委員会では、前回今年2月の第5回JCCから今日までのプロジェクトの進捗について、プロジェクトマネージャーであるカルマ・ケザン・ユーデン電気通信工学科講師と小暮専門家が手短に報告したあと、山田専門家が、現在プロジェクトで執筆中のプロジェクト業務完了報告書の要旨、特に成果指標の達成状況と今後の課題について、30分の発表を行いました。

山田専門家報告によると、プロジェクトでは、2022年8月のファブラボCST開所以降、15カ月間であらかじめ設定されていた成果指標のすべてを達成し、プロジェクト目標の計測指標とされてきた「構築された制度の運用」も軌道に乗せることができました。ファブラボCSTは、ブータンにおけるファブラボとしては6番目の誕生でしたが、この中でも最も活発な活動を展開しているラボとしての認知をすでに確立しています。特に、もともと強いとされてきた電子工作だけでなく、テキスタイル系のマシン操作や、自助具技術の研究開発と普及にも強いとの評価を受けるに至っています。

一方、プロジェクトでは成果指標の短期達成に注力してきた結果、運営体制や財務の持続性については課題が残っており、CSTは現在のファブラボCSTの運営体制を適宜見直し、内外の高い注目に応えていくことが求められると、山田専門家は指摘しました。

プロジェクトチーム側からの以上の報告を受け、後半はJICA側からもファブラボの持続性確保に向けたCSTの方策について意見を求める声が相次ぎました。CSTチェキ・ドルジ学長は、学生がこれだけ活用し、プロトタイプを社会に実装するケースも生み出してきたファブラボの活力を維持していくのは、CSTの責務であると強調しました。

ファブラボCSTでは、今年4月から機械利用や材料費の料金徴収を開始していますが、これは現地入手可能な材料の購入は十分カバーできますが、輸入が必要となる消耗品や機材の新規投資にははるかに及びません。そこで、プロジェクトでは、他の開発協力事業との連携によるプロトタイプ製作の受注や、研究助成やプロジェクト助成による資金調達なども狙っていくことが必要との見方も示されました。

現在、ブータンでは国政選挙の期間中であり、大衆の動員を伴う公開イベントの開催は自粛を求められています。残念ながらプロジェクトとしてはその成果を披露するセミナーなどの開催が許されない中で終了を迎えようとしていますが、その成果はFacebookやYouTube、さらに独自ウェブサイト、日本語ホームページなどでこれまで積極的に発信を行ってきており、確認いただくことができます。

議事進行を行うチェキ・ドルジCST学長(写真/山田浩司)

議事進行を行うチェキ・ドルジCST学長(写真/山田浩司)

JCCは対面とオンラインのハイブリッドで行われた(写真/Tenzin Dorji)

JCCは対面とオンラインのハイブリッドで行われた(写真/Tenzin Dorji)

出席者が揃っての集合写真(写真/山田浩司)

出席者が揃っての集合写真(写真/山田浩司)

関連リンク

「プロジェクト終了まで残り11ヵ月、第5回合同調整委員会を開催」(2023年2月10日)
https://www.jica.go.jp/Resource/project/bhutan/012/news/20230210.html

「ファブラボ開所式を前に、第4回プロジェクト合同調整委員会を開催」(2022年8月25日)
https://www.jica.go.jp/Resource/project/bhutan/012/news/20220825.html