2023.11 道路防災情報システムの開発

フィリピンでは地すべり・斜面崩壊等による道路の交通遮断が毎年のように発生しています。そのため、公共事業道路省は安全で安心な国道の確保、持続可能な国土開発に日夜、取り組んでいるところです。JICAではこうした道路斜面防災の対策・管理能力強化を目指して「山岳地域における道路防災プロジェクト」を実施中であり、その活動のなかで、道路災害の予防と迅速な対応のための道路防災情報の管理技術の向上を目指し、道路防災情報システム(Road Disaster Information System; RDIS)の開発を進めています。

2023年11月時点において、DPWHでは道路斜面対策工のための予算計画プロセス、道路斜面の緊急時における交通規制等の情報収集と共有プロセスなど、一部の業務においてIT技術の導入が試みられています。しかしながら、道路防災業務においてDPWH内でのデータの共有、計画から実施に至るプロセス間での情報共有、過去の道路災害にかかる履歴データの管理等に課題が残っていました。今回開発するRDISでは、それらの課題に対して、既存のアプリケーションやデータベースとの動的な連携、過去履歴データの蓄積と利活用などが可能となる機能を開発します。また、GISベースによるシステムとして、道路災害や斜面対策にかかる位置情報の管理の精度向上を図ります。また、道路斜面の現場の情報収集業務の効率化のために、スマートフォンアプリケーションを開発し、情報収集業務に携わる現場のエンジニアを支援します。その結果、RDISの運用により、DPWHの道路防災業務における意思決定の高度化と迅速化、過去データ等に基づく分析による政策の客観化、透明性の確保などが期待されます。

RDISの機能設計においては、DPWHの主導のもと、現在の道路防災業務における情報管理及び利活用の課題の洗い出し、RDISの導入によるソリューションやそのための必要機能等について、ワークショップ形式で議論を繰り返し、RDISの要件定義を作成しました。ITシステムの設計段階からユーザとなるDPWHが主体的に参加する方法をとったことにより、RDISに対するオーナーシップの醸成に繋がることが期待されます。

まもなく開始されるRDISの開発は、現地再委託にてフィリピン国内のITベンダーとの協働により実施します。ITシステムの継続的な利用、メンテナンス、機能向上のためには、フィリピン国内でのサポート体制の構築が重要となります。そのためにはフィリピン国内のITベンダー等の専門家の継続的な協力も必要となります。本プロジェクトでは、プロジェクト完了後のITシステムが継続的に運用できる体制の構築についても議論します。

DPWH,地方事務所におけるワークショップの様子

DPWH,地方事務所におけるワークショップの様子

道路防災情報のデータ収集の現場作業トレーニング風景(1)

道路防災情報のデータ収集の現場作業トレーニング風景(1)

道路防災情報のデータ収集の現場作業トレーニング風景(2)

道路防災情報のデータ収集の現場作業トレーニング風景(2)

DPWH主催のITシステム導入研修風景

DPWH主催のITシステム導入研修風景