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【番外編】JICA TICAD8サイドイベント参加レポート:JICAアフリカ広報 学生レポーター 井上遼大さん(明治大学4年)

2022年9月6日

2022年8月22日(月)から26日(金)、JICAの主催によるTICAD8サイドイベントがオンラインで実施されました。
合計24件のJICA主催イベントが開催され、日本、アフリカを含め、全世界から多くの方々にご参加いただき、大盛況に終えることができました。

今回は、イベントの中から、国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)と共催した「アフリカにおける難民を包摂する取り組みへの投資:マルチステークホルダーアプローチを通じた成長と持続的な開発の実現」(8月22日(月)開催)について、JICAアフリカ広報 学生レポーターに任命された明治大学4年生の井上遼大さんに、参加レポートを書いていただきました。
本イベントは、難民およびホストコミュニティの経済成長と社会発展を促進させるための多様なアクターによるアプローチについて、ウガンダ政府、ザンビア政府、国際金融公社(IFC)、豊田通商、そしてUNHCR、JICAによる議論が行われました。

Special Report toward TICAD8 の番外編として、井上さんのレポートをお楽しみください。

JICAアフリカ広報学生レポーター 井上遼大さんからの参加レポート

本イベントは、アフリカにおいて複数のステークホルダーがいかに連携して難民を社会に包摂するかを問うものであった。パネリストは、JICA理事長の田中氏、国連難民高等弁務官のGrandi氏、ウガンダ国救援・防災・難民相のOnek氏、ザンビア国内務相のMwiimbu氏、IFC 副総裁(アフリカ地域)のPimenta氏、豊田通商株式会社トヨタアフリカ自動車部の吉川氏が登壇され、モデレーターを務めたUNHCRのLippman氏の司会のもと、各々のアプローチから、アフリカにおける難民支援・開発協力・平和構築に第一線で携わっておられる“マルチ”な登壇者による活発かつ刺激的な議論が繰り広げられた。

具体的には、マルチステークホルダーの連携を通じた政策や開発計画、公的サービスや経済活動における難民の包摂について「これまでの実績」と「これからの課題」をテーマとして、各登壇者のそれぞれの機関が実施している取り組みについて、ある地域における具体的な成功例から難民を包摂することで得られる社会像といった中長期的なビジョンまで幅広くかつ示唆に富んだ講演と質疑応答が行われた。特に、機会さえ与えられれば、難民は開発に大いに貢献することができるアクターであることが強調された。

提示された「課題」の中で特に重視されていたと感じたのは、人道と開発と平和の連携(Nexus)の実現と民間企業のさらなる参画であった。

Nexusの実現については、ウガンダとザンビアではすでに様々なステークホルダーが連携し、難民を難民として区別するのではなく、ホストコミュニティと共に主体的なアクターとして開発計画や公的サービス、経済活動に包摂する取り組みが積極的に行われている様子がOnek氏とMwiimbu氏の両大臣から語られた。両大臣は、これらの取り組みには、人道的な動機に基づく側面だけでなく、社会経済的なメリットが得られる側面があることを強調し、開発のアクターとしての能力を持っている難民を重視していると論じた。そして、両国以外にも取り組む国が増えることを求め、国際社会の支援が引き続き必要であると呼び掛けた。

民間企業の参画については、豊田通商の吉川氏とIFCのPimenta氏の講演が示唆に富むものであった。両氏に共通していたのは、難民を社会に包摂することは、未開のマーケットを開拓することにつながるとしていた点だ。両機関がすでに取り組み、成功した事例なども紹介されていたが、民間企業の参画は資金だけでなく、ノウハウや専門性を持ち込むためにも重要であることがわかった。

私は本イベントを通じて、過去最大の危機に直面している難民を取り巻く、重層化した問題を解決し、彼ら彼女らの自立した生活とホストコミュニティの持続的な開発を実現するためにはマルチステークホルダーのこれまで以上の連携が欠かせないことを学ぶことができた。そして、これらの取り組みがさらに広がること、そのために重要だとされる情報共有の場がこれまで以上に拡充されることを望む。そして同時に、残されている難題として難民発生の根本原因への対応があるのだろうと感じた。ウガンダとザンビアはアフリカの中で政情が安定している国に分類されるが、そうではないアフリカの国々が難民送り出し国となっている現実がある。

こういった課題を含め本イベントで得られた知見をもとに、難民問題がTICAD8においてどのように議論されるか注目したい。

【画像】

登壇者:上段左から古川氏(田通商株式会社トヨタアフリカ自動車部国連・直販グループ グループリーダー)、田中氏(JICA理事長)、Mr. Onek(ウガンダ国救援・防災・難民相)、中段左からMr. Grandi(UNHCR国連難民高等弁務官)、Ms. Lippman(UNHCRレジリエンス・ソリューション局 局長付シニア・アドバイザー)、Mr. Pimenta(IFC国際金融公社 副総裁(アフリカ地域))、下段Mr. Mwiimbu(ザンビア国内務相)