『森から世界を変える
ソーシャルビジネスアワード』
ビジネスアイデア紹介

世界ふしぎの"森"発見
VRを使った体感型テーマパーク
〜「熱帯林に暮らす住民」も
「私たち」も幸せに〜

...

【提案者】
小川 結さん(左) 
黒岩 健一さん(中) 
赤塚 千春さん(右)


【想定した対象地域】
ブラジル

【解決を目指す課題と目標】
日本から遠い国での森林保全への理解を深め、森林破壊を防止する。


【プレゼンテーションの概要】

森林破壊が深刻なブラジルまでの距離は日本から約1万7000km。多くの日本人にとっては遠い存在で、熱帯林の保全にも実感がなく、支援もせず、森林破壊が広がっています。そうした課題の解決手段として、日本などの先進国と熱帯林がある途上国を繋ぐVR(バーチャルリアリティ)テーマパークを提案します。

具体的には、守るべき熱帯林を現地の住民が撮影。先進国のVRテーマパークでは、訪れた人たちがVR空間の森を歩き、動植物と出会うなどの体験を楽しめる「散策編」のほか、現地のレンジャー目線で違法伐採や森林火災の現場を体感できる「レンジャー編」、現地住民の暮らしや文化を体験できる「文化伝統編」などのコンテンツを用意します。さらに、森林破壊の現状などをゲーム感覚で楽しめるコンテンツを開発していくことを想定しています。

必要な初期投資や技術は、さまざまな企業、森林の専門家、環境NGOなどをパートナーとして連携。最初から大きな施設を作るのではなく、イベントの体験ブースのような空間で楽しめるコンテンツとして広げていくことも考えています。

このプロジェクトによって、現地住民にとっては森林を活用した新たな収入源が生まれます。また、テーマパークには「ポイント制」を導入し、貯まったポイントで森林保全や動植物の保護を支援できる仕組みを設けます。VR技術で途上国と先進国を繋ぎ、先進国の人たちが楽しみながら熱帯林への関心を高められるプロジェクトです。


講評

応募アイデアの総評

「アミューズメント」と「倫理性」を結び付ける
ユニークな発想と着眼点。
アワードで唯一の日本国内をベースとした企画。

8/5プレゼンテーション時:審査員講評

森田隆博氏
(JICA 地球環境部)

人は五感で自然と触れ合いますが、五感の中でも脳に伝えられる情報量の7割以上が視覚であるという話を聞いたことがあります。進化がめざましい、そして視覚に訴えるVR技術を活用するのは、森林保全への意識を広めるためにも、効果的なアプローチだと感じます。

森林保全は地球にとって大切なことですが、どんな「いいこと」も楽しくなければ続きません。その意味でもアミューズメントビジネスと森林保全を結びつけるアイデアは斬新で、ポイント制などを採り入れて「楽しさ」を継続するアイデアなども、実現可能性が高いでしょう。たとえばJICAの「地球ひろば」で、訪れる子どもたちに体感してもらいたいですね。

総監修:谷中修吾氏 講評

谷中修吾さん

  • 限られた時間的制約の中でのビジネスプランへの落とし込みにおいて、その仕上がりの度合いとしては極めて優れたドキュメンテーションを実現していると思います。
  • 森林を保全することが地域住民にとってビジネスになるという切り口で検討し、森林というコンテンツを撮影することでキャッシュが生まれる「VR」というロジックを打ち立てたところが議論の拠り所として安定しています。
  • 最大のポイントは、VRコンテンツを見たいという顧客(ユーザー)を本当に惹きつけられるのかという点であり、「総論として良い」の先にある「個別具体的な各論としても良い」にするための商品設計が極めて重要になると思います。
  • ターゲッティングとしては「自然とVRに関心を持つ、のんびり気分転換したい20-30代」をコアとして設定し、さらにアクティブ系と教養系の2つのサブを設定しているところに検討の深みを感じます。
  • だからこそ、コアターゲットが本当に見に来たいと思うコンテンツが作れるのか、換言すれば、お金を払ってまで見に来たい(繰り返し見に来たい)と思えるコンテンツを提供できるのか、というソフト面のプロトタイピングが成否を分ける企画になると思います。
  • 強力な訴求力を持つコンテンツフォーマットが生み出されれば、VRテーマパークにおける関連事業からのビジネスモデルも増設され得るためポテンシャルが広がります。

特別審査員:パックンマックン 講評

パックン

熱帯雨林を救うために、伐採林業や焼き畑農業からどうにか離れないといけない。昔からそう叫ばれている。そのたびに「観光資源として生かす」という案はよく出る。しかし、飛行機に乗る人数を増やしたり、駆け込む大勢の観光客を受け入れる施設を建設したりすると、その解決法も結局は温暖化や森林破壊につながるというジレンマに陥ってしまう。そこでVRを駆使するというのが待ちに待った名案かもしれない。

双方が得するWin-Winは最近、聞きあきたぐらい流行っている言葉だが、このアイデアにぴったりな表現だ。途上国と先進国のニーズの接点。住民の生活を支える収入源と、先進国の人が娯楽にかける遊び代の合流点。のこぎりという原始的なツールとVRという最新の技術の交差点。さまざまなトレンドや情勢がオーバーラップするところにうまく着眼している。スライドは細かい文章で多少込み合っているが、情報と主調を綺麗に整列していて、とてもわかりやすい形に仕上がっている。

地元住民のためにも、この観光好きな僕のためにも、ぜひ、その発信力を使ってこのアイデアを実現させてほしい。


マックン

今流行りのVRを使った体験型アトラクション・・・ターゲット層にはなっていない40代ですが、僕も 体験したいと思いました!VRのプログラムは既にバリエーションが豊富ですが、更に広がる可能性を持っていると思います。また、VRを体験した後にフェアトレード商品が販売されていたら「買ってみよう」という気持ちになりますね。こちらもVR同様、商品数をどんどん増やせる可能性もあるのではないでしょうか。途上国の人材雇用の仕組みもしっかりと考えられている素晴らしい企画だと思いました。