『森から世界を変える
ソーシャルビジネスアワード』
ビジネスアイデア紹介

土で森を救う

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【提案者】
佐々木綾香さん(左)
武本純平さん(右)


【想定した対象地域】
インドネシア

【解決を目指す課題と目標】
インドネシアの森林火災を抑制する。


【プレゼンテーションの概要】

インドネシアではたびたび発生する大規模な森林火災が、森林減少や劣化の大きな要因になっています。このプロジェクトでは、大規模化、長期化しやすい「泥炭(ピート)火災」に着目しました。

泥炭火災の主な原因は、本来は地中で湿気を帯びている泥炭が、土地開発などによって露出して乾燥し、住民の火の不始末などによる発火や、頻度は少ないですが落雷などによる自然発火と言われています。乾燥した泥炭を再び地中で再湿潤化することが必要であり、そのためのコストを調達することを目指します。

泥炭地再生の方法として考えたのが、泥炭を活用した商品の開発です。具体的には、ウイスキーや化粧品、プランター(容器)などのプロダクトを製造して販売。プロモーションなどに現地住民の方にも活躍していただき、泥炭地の再湿潤化の費用と、泥炭地や森林の近隣の住民の生計向上を支援します。

商品の付加価値を高めるために、イギリスの「動物性素材を使わない」ファッション系高級ブランドをヒントにして、消費者の共感を得て倫理性の高い商品としてのニーズを創出します。顧客のターゲットとしては、インドネシアの中でも人気が高いバリ島を訪れる観光客。なかでも、年間108万人が来訪するオーストラリアからの観光客を主な顧客ターゲットに設定します。

これらの泥炭を活用した商品を、バリ島の五つ星ホテルなどで販売、SNSを活用した顧客とのコミュニケーション、さらに「泥炭地再生」をテーマとしたロイヤリティ・プログラムを実施します。泥炭や森林保全に加え、、たとえばオランウータンの保護など、動物や現地の人々への支援という面をアピールすることで、より多くの方々の共感を得られるようにして、「ピートエコシステム」を構築します。


講評

8/5プレゼンテーション時:審査員講評

堀正彦氏
(国際緑化推進センター)

事前にこのアイデアの資料をもらって調べてみたら、北海道の余市にウイスキー工場ができたのも、あの地域に豊富な泥炭があったからだと知りました。泥炭を活用したプロダクトをビジネスにしていくことは、現地の住民に「泥炭には価値がある」と認識してもらうためにも有意義でしょう。倫理性の高い商品も、それだけではなかなか売れないですが、バリ島で付加価値を高めて販売するというアイデアがユニークです。どのくらいの事業規模で展開できるのか、具体的な商品開発が可能なのかといった課題はありますが、とても興味深いアイデアです。

総監修:谷中修吾氏 講評

谷中修吾さん

  • 社会的課題の設定→課題解決のアプローチの設定→ビジネスアイデアの設定というロジックが明快なため、地に足のついた形でビジネス案の具体化を実現できていると思います。
  • 社会的課題(=森林火災)の主因である「泥炭火災」に着目し、泥炭地再生を図るための資金源を得る方策として泥炭そのものを活用したプロダクトを開発するという着想が非常に良いです。
  • さらに、泥炭を活用したプロダクトを考える際、付加価値をつけるという観点から「化粧品」と「ウィスキー」を取り上げた思考のジャンプに高い独創性があります。
  • 一方で、なぜ化粧品とウィスキーなのか?という問いは必ず出てくるため、その問いに対して明快に答える「ストーリー」などが明示できると実際のビジネス展開の際に有益だと思います。
  • 「TANAH」というネーミングもシンプルでわかりやすいため、あとは実際に開発したプロダクトとしての化粧品およびウィスキーがどんなものなのか次第だと思われ、その意味ではプロトタイピングの一歩手前まで思考を通せていると言えるとも思います。

特別審査員:パックンマックン 講評

パックン

スライドは文章が多いうえ、「泥炭地」や「再湿潤化」など、なじみのない単語がたくさん登場することから、プレゼンは少し食い付きづらい感じがします。しかし、前から気になっていたインドネシアの泥炭地火災のメカニズムなどが知ることが出来てうれしかったです。

また、解決の案は面白いが、ウィスキーの香り付けや化粧品の原材料として使う泥炭の量は限られているはずですし、そういう商品の産地として知られていないインドネシアでの売り上げが心配になります。ただ、味や値段、使い勝手などよりも「倫理性」を優先する消費者が存在するとしたら、それがバリ島の高級ホテルに集まるオーストラリア人かもしれません。 目の付けどころも面白いし、リサーチ力も見せているので、今後もどんどんアイディアを出し、大事な環境問題の解決に努めていただきたいです。


マックン

この企画を見させて頂いてから泥炭(ピート)について自分でも色々と調べて見ました。泥炭(ピート)の事は知っていましたが、どのように泥炭が出来るのか?とか、スコッチウイスキーの材料である麦芽を乾燥させる時に使う香り付けの燃料になる、というのは知りませんでした。皆さんの企画書のおかげで本当に勉強になります。ありがとうございます。

ウイスキーの製品化や泥炭対策を通じての地球環境の改善などのビジョンがすごくハッキリとしているのですが、あとは、ウイスキーをどこで(現地で)作るのか? 誰が(現地の人が)作るのか?どうやって現地の人の安定生活に繋げられるか、などの案がもうスコッチ(少し)盛り込まれているといいですね。