『森から世界を変える
ソーシャルビジネスアワード』
ビジネスアイデア紹介

森の語リスト

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【提案者】
丁子基彦さん(左)
今井絵里菜さん(右)


【想定した対象地域】
インドネシア

【解決を目指す課題と目標】
貧困問題を解決してインドネシアの違法伐採を抑制する。


【プレゼンテーションの概要】

インドネシアの森林減少の原因のひとつに「違法伐採」の横行があります。住民が違法伐採をしてしまう背景には、生計手段が乏しいことによる貧困の問題があります。このプロジェクトでは、日本の手すき和紙の技術や器具を伝え、現地で手漉き和紙を生産することで、新たな生計向上手段を創出します。

生産した和紙は、そのまま紙として活用するだけでなく、インドネシアの伝統的な特産品である「パティック(ろうけつ染めの柄物布地)」に加工。付加価値の高い商品として販売することを目指します。

インドネシアの森でも和紙の原料となる「コウゾ」は自生もしています。また、日本ではスギやヒノキの樹皮などを活用した和紙づくりの技術もあるので、将来的にはコウゾ以外の、森林に自生する原料を活用して、よりサステナブルなプロダクト開発をしていきます。

日本でも、手すき和紙づくりは後継者不足という問題があります。このプロジェクトが、和紙、インドネシアの林業、そしてパティックというインドネシアの伝統文化を繋ぐ『森の語リスト(かたりすと)』となり、途上国の森で暮らす人たちの生計向上を支援します。


講評

8/5プレゼンテーション時:審査員講評

森田隆博氏
(JICA 地球環境部)

プレゼンテーション資料に「パーマン丁子」「今井パー子」というペンネームを使うなど、さすが関西人という印象の面白いプレゼンテーションでした。伝統文化には普遍的な価値があります。日本の和紙文化をインドネシアの人たちと共有し、インドネシアのパティックを作るなどの新たな価値を生み出そうという発想がユニークだと感じます。

総監修:谷中修吾氏 講評

谷中修吾さん

  • インドネシアの森林における社会的課題を解決する上で、日本の地域伝統産業における社会的課題の解決と組み合わせて考えるという前提条件が、とてもチャレンジングであるとともに独創性が高いと思います。
  • 大規模展開するというよりも、小規模展開でじっくりソーシャルビジネスとして育て上げながら発信を強めていくことで、啓発的なミッションを帯びた取り組みにすることも可能かと思います。
  • インドネシア側と日本側のマッチングの成否が、事業の成立に極めて大きなインパクトを与えるスキームのため、実際に展開するときにはご縁ベースで組み立てていくプロセスになるだろうと思われます。
  • プランニング段階で多角的に検討されている点は素晴らしいと思いますので、この先は逆にポイントを絞り込んでエッジを効かせることで、より魅力的なプランにアップデートされると思います。

特別審査員:パックンマックン 講評

パックン

目のつけどころが素晴らしい!外国人技能実習制度は、「限定した期間中に実習生に日本の技術を伝授して、自国に帰ったあとその国のために活かしてもらう」という目的で作られたものだが、その目的を達成できないことも多い。"Think 4 Rest"は、後継者がいなくて歴史が途絶えかけない「手すき和紙」に目をつけて、日本側にとっても実習生にその技術を伝える意味を見出した。しっかりとしたビジネスモデルを提供しているし、熟慮した企画だと思います。実現すれば、外国の自然や民の生活を守りながら、日本の伝統文化を守ることができるはず。和紙も森も人も大好きな僕からもぜひ応援したい。


マックン

今では外国人の陶芸家、ガラス職人、漫才師などもいますから、日本の伝統工芸である和紙作りを海外の人に継承するのもいいと思います。和紙の職人さんや工場など取材させていただいたことがありますが、技術を身に付けるまでには相当な時間と努力が必要とおっしゃっていました。また、和紙に適した木がインドネシアで育つのか、和紙を作るための環境(気候)は適しているのかなどの課題もあると思います。しかしこれが実現すれば現地の方の生活と環境問題の改善に繋がると思います。そしていつか、インドネシアの学生さん達が自分たちの卒業証書を自分たちで作れるようになったらいいですね。