パックンマックンも納得!Really? REDD+!!

【LESSON.2】 つまり、REDD+ で何をやるのか?

「REDD+(レッドプラス)」の森へ探検に出かけたパックンマックン。【Lesson.1】では、今なぜREDD+ が必要なのかを知ることができました。今回のテーマは「REDD+ で何をやるのか?」です。みなさんも、ふたりと一緒に「REDD+」について理解を深めてくださいね!

パックンマックン
群馬県出身のマックン(吉田眞)とアメリカ・コロラド州出身のパックン(パトリック ハーラン)のお笑いコンビ。1997年に知人の紹介で知り合ってコンビを結成。漫才はもちろん知的なトークなどを駆使して、さまざまな番組などで活躍中!

ところで、「REDD+」で何をやってるんだろう?

前回の探検で、REDD+ がとても大事な取組だってことはよくわかった。

そもそも、僕らは「森」が好きだしね。白神山地のブナの森から西表島の原生林まで、日本中の森を歩く番組の仕事を10年くらいやってるし。

やってきたねぇ。

インドネシアも行きました。マックンはいなかったけど、ボルネオの森では野生のオランウータンに会うこともできた。

おお、いいねぇ。自分の子どもの頃を思い出すと、森は自然のいろいろなことを教えてくれる場所だった。秘密基地作って遊んだなぁ。

それにしても、「REDD+」が途上国の熱帯林を守る取組だってことはわかったけど、実際にどんなことをやってるんだろうね。

え? いや、それをボクに聞かれても……

おわっ! 今回はオランウータンが葉っぱのタブレットを届けてくれたよ。

懐かしいなあ。ボルネオで会った君だね。

いやいや、さすがにそれは違うでしょ。

パックンマックンさん、こんにちは。「森林総合研究所」の松本です。今日は私が、おふたりにREDD+ で何をやるのかについてご説明します。
松本光朗さん: 独立行政法人森林総合研究所研究コーディネータ、北海道支所長。「REDD研究開発センター」の前所長でもあり、日本におけるREDD+ 研究の第一人者。

はじめまして!

松本先生、よろしくお願いします!

REDD+ Suggestion

途上国と先進国が協力して森を守る、それがREDD+です。

今、突然、地元住民の方々に、地球温暖化を防ぐために木を切るな! 森を守れ! と言っても、地元の人達は困りますよね。それに、かけ声だけでは誰も従ってくれないでしょう。

なぜなら、地元住民の方々にとっては森を切り開いて畑を広げたり、木を伐り出したりすることなど、森は大切な生計手段をもたらしてくれる場所でもあるからです。

地球温暖化を防ぐためには途上国の森を守ることが緊急の課題とはいえ、ただ「森を守ろう」というだけでは、その生計手段を失うことにもなりかねません。また、先進国が技術協力をしようとしても、見返りのない支援だけでは限界があります。

そこで、REDD+では「森林を守り、森林破壊や伐採によって出る二酸化炭素の量を減らせば、経済的インセンティブ、つまりお金がもらえるという仕組みを作る」ことを目指しています。

REDD+の経済的インセンティブを創出する仕組み

REDD+ プロジェクトを実施することで削減できる排出量が、インセンティブ(クレジット)として認められます。

このグラフは、REDD+ のプロジェクトで「経済的インセンティブ」を創出する仕組みについて示したものです。

グラフの赤い線は、このまま森が減少した場合の二酸化炭素など温室効果ガスの排出量を示しています。黄色の線は、REDD+ のプロジェクトを実施して森を守った場合に、削減できる温室効果ガスの排出量です。何もしなかった場合と、REDD+ を実施した場合の排出量の差を、排出削減クレジットなどとして認めようということですね。

経済的インセンティブ、つまり、森を守ることでクレジットという利益を創出できることで、たとえば先進国側の民間企業もREDD+ プロジェクトに参画しやすくなります。途上国と先進国が協力して豊かな森を守る取組、それがREDD+ です。

REDD+の具体的な活動としては、森林を伐採し農地を造るなどの開発計画を変更する、森林を伐採しなくても良い農業や産業を導入する、違法な伐採が起きないように監視する、山火事を防ぐ、森林保全の教育を進めるなど、様々なものが考えられます。

森を守ると、いいことがある!

なるほど、森を守ると「いいことがある」ってことだね。

まさに「Win-Win」で、地元住民の人たちの生活もよくなって、森を守っていけるなら素晴らしい。

ボクらはこれからREDD+のオフィシャルサポーターになるわけだけど、こうやって勉強してみると「REDD+ っていうのは、すごいプロジェクトじゃないか!」って思えてきた。

そうだね。でもさ、森林減少や劣化で排出される温室効果ガスを削減っていうけど、森林減少の規模を予測したり、排出量の計測とかはどうするんだろう。結構難しいんじゃないかと思うよ。

たしかに、でっかい森が相手だからね。正確に計測したり予測するのは難しそうだ。

さすがパックン。いいところに気付きましたね。
REDD+で対象にしている森林は一つの国全体に渡るほど広いものです。地上から見ただけでは森林の状態や変化はなかなか見つかりません。そこで、宇宙から人工衛星を使って森林を調べるのです。
人工衛星での森林の面積や森林減少の面積を調査し、地上のデータと組み合わせて二酸化炭素の排出量を推定します。このような森林面積の測定や排出量予測などの技術は途上国だけではなかなか難しいところがあるので、技術面での途上国の支援が先進国の重要な役割のひとつになります。
さらに最先端の技術として、日本ではJICAとJAXAが連携して、人工衛星『だいち2号』を使った違法伐採監視システムを提供するなどしています。
さまざまな技術的な開発や合意が整って、いよいよREDD+ は本格的に実施される段階になっているのです。

『だいち2号』を活用した「JICA-JAXA熱帯林早期警戒システム」(JJ-FAST)サービスが、2016年11月13日に開始されました。インターネットを通じて、誰でも簡単に世界の熱帯林の状況を見ることができます。
http://www.eorc.jaxa.jp/jjfast/

おお、これはすごい。『だいち2号』は、雲があっても地上の森をちゃんと撮影できるんだってさ。

森が大事ってことは、頭の中でわかっているつもりでも、普段の生活の中では頭の端っこにしかないもんね。REDD+ について勉強していると、森の大切さをひしひしと実感できますね。

ほんとにそうだよ。森ってさ、飲み水を濾過してくれる大事な場所でもあったりするし、先進国で暮らしているボクらの生活にも、途上国の熱帯林はいろいろ関係しているんだよね。たとえば、木材の加工製品を買ったら、原料の木は熱帯の森から運ばれたものかも知れないし。無関心のままじゃいけないねえ。

REDD+ Suggestion

REDD+ は森を守るだけではありません!

REDD+ で途上国の熱帯林を守ることには、温室効果ガス排出量を削減し地球温暖化を防止するという目標のほかにも、さまざまな意義があります。

たとえば「生物多様性の保全」です。温室効果ガス排出量の増加と同様に、今の地球では生物多様性保全が大きな課題になっています。そして、REDD+ の対象である熱帯の森は、たくさんの種類の生き物が生活する生物多様性の宝庫です。

また、森はそこに住む人たちにも恩恵を生み出します。たとえば、森があることによりきれいな水を飲めるようになり、食べ物や木材ももたらします。これらを、上手に持続的に使うことにより、地域の経済にも恩恵をもたらします。途上国の熱帯林を守ることは、地球の生物多様性を守り、地元の人々を守ることでもあるのです。

いいこといろいろ。だから「+」なんですね!

言われてみれば、そうだよねぇ。地球温暖化だけじゃなくて、地球の命を守るためにも、森がすごく大事なんだなぁ。

その中でも、REDD+は、森を守ると同時に地元の人の生活を守ったり、先進国の民間企業であれば、REDD+ に参加して途上国の熱帯林に関わることで、新しいグリーンビジネスのチャンスがあるかも知れない。

ほんとに、いいことがいっぱいだ。

「REDD」の英語の意味は「途上国の熱帯林を守る」っていうことだったけど、それだけじゃなくて、持続可能な森林保全とか地球温暖化抑制に貢献するということが「+(プラス)」の意味なんだっていうことがよくわかったね。

ところで、さっき松本先生が「REDD+ は本格的に実施される段階になっている」って教えてくれたけど、実際に、日本が支援してREDD+ のプロジェクトが始まっているところって、あるんですかね?

REDD+ Suggestion

はい、すでにREDD+ は始まっています!

森から世界を変えるREDD+プラットフォームの主な活動

  1. 国内外での理解拡大
    Webサイト、イベント活動、国際会議等を通じた情報発信。
  2. 情報・知見共有/意見交換
    先行事例や最新情報の共有。 ビジネスモデル開発
  3. 民間ビジネスモデルの検討。
    諸制度や公的な支援の在り方などの提言。

2015年に合意されたパリ協定では、REDD+を2020年以降の新たな国際枠組みの中に位置づけることになりました。今、より具体的な制度づくりが行われています。企業や団体の自主的排出削減の取り組みとしても、現在議論が進められています。日本では、官民が一体となってREDD+ を推進していくために、2014年11月7日に「森から世界を変えるREDD+プラットフォーム」が設立されました。

「森から世界を変える REDD+ プラットフォーム」には、2016年12月現在、政府の関係省庁をはじめ、国際協力機構や森林総合研究所などの公的機関や、80を超えるさまざまな民間団体・企業が加盟しています。REDD+に関する国内外での理解拡大、情報・知見共有、意見交換、ビジネスモデル開発について、それぞれの立場から、それぞれが持つリソースを活用した活動を行っており、すでに、各地で具体的なプロジェクトがスタートしています。

おいしいチョコレートで、インドネシアの森を守る!

インドネシア・ボアレモ県における焼畑耕作の抑制によるREDD+ プロジェクト
実施団体:兼松株式会社、ボアレモ県政府

インドネシア共和国のスラウェシ島に位置する、ゴロンタロ州ボアレモ県では、兼松株式会社が、県政府や、現地の有力企業であるゴーベルグループと連携して、良質なカカオへの転作によって、トウモロコシの焼畑耕作による森林減少の抑制と、現地農家の収益改善に取り組んでいます。

もともとこの地域ではチョコレートの原料となるカカオ栽培が行われていました。しかし、カカオの付加価値を高めるための発酵技術がなく、手早く収益が上がる焼畑によるトウモロコシ栽培が台頭し、森林が次々と消失していたのです。このプロジェクトでは日本のチョコレート会社である『東京フード(株)』や『Dari K』が、カカオの栽培や発酵技術を指導するなど、複数の企業や官民が連携した先例となっています。

プロジェクトが始まったのは2011年。最近の調査では、すでに焼畑による森林減少の抑制効果が確認され始めており、プロジェクト全体で、年間およそ8.6万CO2トンの温室効果ガス削減を目標に取組が進んでいます。

新しい農業技術で、ラオスの森を守る!

ラオス・ルアンパバーン県における焼畑耕作の抑制によるREDD+ プロジェクト
実施団体:学校法人早稲田大学、丸紅株式会社、三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社、一般社団法人日本森林技術協会、ラオス国立農林業研究所

ラオス人民民主共和国北部の古都ルアンパバーンを中心とする地域では、焼畑移動耕作による森林減少を抑制するためのさまざまな取組が進められています。2009年から2015年までJICA(国際協力機構)が実施した「森林減少抑制のための参加型土地・森林管理プロジェクト」を、早稲田大学をはじめとする産官学が連携したチームが引き継ぎ、実施しています。

現地のコミュニティとの信頼関係を築きつつ、焼畑耕作の代替となる生計手段の導入や、衛星画像などを活用した温室効果ガス排出削減などの効果測定、REDD+ を円滑に実施するための戦略と体制構築などを行っています。

先行して進められている約3万haを対象とした村落規模のプロジェクトでは、年間約14万トンの温室効果ガス排出削減量が見込まれています。ルアンパバーン県全体にはおよそ200万haの森林があります。将来的に県規模のREDD+ 事業まで拡大すれば、さらに多くの温室効果ガスの削減が可能となります。

ほほぉ、いろんなところで、もう始まってるんですね。

森林面積や排出量の計測技術だけじゃなく、カカオ栽培とか、農業技術の支援もやってるんだね。ボク自身、長く日本に住んでみて感じるのは、日本は技術大国というばかりではなくて、組織力や治安、倫理観とかが揃っている国だっていうこと。こうした理念を、組織と一緒に熱帯林のある国に提供することもできるんじゃないかと思いますね。

ボクたちも、REDD+ を応援しますよ!

ボクたちはREDD+ オフィシャルサポーターになって、これからREDD+ をもっともっといろんな人に知ってもらえるように活動していくわけだけど、これは、ほんとに大切な仕事だな。

日本は今までも里山とか森を大切にしてきた経験がある。その経験を活かしながら、豊かな熱帯林がある途上国でも、それぞれの国の文化や特徴をいかしながら、「Win-Win」のプロジェクトを成功させて、地球温暖化を抑制しなくっちゃね。

自然豊かな集落の特徴をいかした取組っていうのも、日本にはたくさん「いい例」があるしね。たとえば、ボクが大好きな高知県の馬路村。ゆずの産地として有名なんだけど、この村にはもともとそんなにたくさんのゆずを育てていたわけじゃない。このままじゃ過疎で村がやばいぞっていう時に、10年後、50年後のために「ゆずを植えよう」と決めて取り組んできて、今、村の力になっている。REDD+ のプロジェクトも、ゆくゆくはその森がある地域の発展に結びつくような「実り」が得られるといいよねえ。

オフィシャルサポーターにボクらが抜擢されたのは、たぶんREDD+ の「Reducing emissions from deforestation and forest degradation and the role of conservation, sustainable management of forests and enhancement of forest carbon stocks in developing countries.」っていう英語がわかるタレントはボクしかいなかったからだと思うけど。

いやいや、ほかにもわかる人いるでしょ。

とにかく、今回の体験ではボクら自身がREDD+ の大切さを痛感できたのがよかったね。頑張りましょう!

そうだね。みなさん、これからもREDD+ に注目してくださいね!

第3回はこちらから!

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