地域とともに学ぶ
移住学習授業の創設。
日系一世の苦労を後の
世代に伝える。
配属先はパラグアイ共和国ピラポ市にある、ピラポ日本語学校。1960年に移住した日系人の方々が運営する歴史ある学校です。私が担当したのは、日本語の授業をメインに、カリキュラムの改定や現地の教師への勉強会の開催。中でも力を入れた活動は、「移住学習授業」の立ち上げです。移住後50年が経ち、現在では忘れられがちなパラグアイの日系人社会の歴史を、地域の方々と共に体験しながら学ぶことを主眼に置いた授業です。今でこそ成功し、安定した生活を送っている日系一世も、入植当時は貧困や困難に苦しんだと聞きます。そんな日系一世の苦労があったからこそ今の日系人社会があることを、日本語学校の生徒である日系子弟やその後に続く世代に伝えたい、そんな日系人社会の方々の思いを、カリキュラムの形にしました。
内容は、小学4年生から中学3年生まで、学年に応じ、できるだけ楽しく、分かりやすく自分のルーツが学べるよう工夫。例えば、中学2年生では、家族から話を聞き、それをもとに移住してから現在までの自分の家族年表を作るというように、座学だけではなく、実際の体験を通して日本や日系人社会を知ることができるよう心掛けました。
現地の方々にもこの授業に協力いただき、授業を通じて日系一世と日系子弟の交流が深まったと実感できたときは、本当に感動しました。現在もこの「移住学習授業」は、現地の人々の手によって行われています。
帰国が迫ったころ、ピラポ市の皆さんへの感謝の気持ちを込めて、「祭」というイベントを企画。パラグアイ人も日本人もみんなで騒ぐ!というテーマで、パラグアイのダンスや歌、和太鼓演奏や日系一世の高齢者と体操をするなど、15演目程度を準備し、私自身がほとんどに出演しました(笑)。イベントには約1,000人もの人が集まり、「ここまで大きなイベントを主催した日本人ボランティアは初めてだ」と現地の人々に言われたときは、自分の存在を認めてもらえたように感じうれしかったです。