村道を補修するために
プロジェクトを立ち上げる。
自分にできることは何かを考えた。
選考と派遣前訓練を経て赴任した先は、タンザニアのムベヤ州ルングウェ県。国内でも比較的降水量が多い地域で、大雨のたびに道がぼろぼろになる問題がありました。その解決のため、国立の道路工法研修センターが中心となり、できるだけ人力を使って道路を補修する「LBT(Labour Based Technology)」という方法を、地域住民に広める活動をしていました。センターに赴任した私に求められたことは、LBTのテクニックを地域住民に紹介することと、センターの認知度を上げるため、さまざまな広報活動を提案することでした。
しかしそこで直面した問題は、配属先の同僚の仕事が忙しく、広報活動に協力的ではないこと。そして、そもそも広報の重要性をあまり実感していないことでした。現地のために何かしたいと思ってアフリカまで来たのに、何のためにここにいるのか分からなくなり、落ち込むこともありました。それでも、私にできることは住民と密にコミュニケーションを取ることだと考え、道づくりの実習に積極的に参加したり、近隣の学校を回ったりしながら、活動の糸口を探そうともがく日々が続きました。
転機が訪れたのは、赴任してから約1年が経過し、センターの副校長が交代した時です。それまで大雨のたびに崩れ、子どもたちが学校に通うのも大変な状況だったセンター付近の村道を、村人と協同で補修するプロジェクトを企画・提案しました。するとその企画を副校長が受け入れてくれ、プロジェクトが動き出したのです。
このプロジェクトを通じて、村の方々とのつながりが深まり、その後の活動を続けていく上で大きな支えとなりました。また、道がきれいに整備された状態を目にした人々が、「うちの近くの道も整備してくれないか」と次々に声を掛けてくれるようになり、センターやLBTが理解されていく実感を持つことができました。約3ヵ月の工期をかけてセンターと村人が一丸となって完成させた道に、今まで入ることができなかったトラックが乗り入れた時の、村人たちの喜ぶ顔は今でも忘れられません。