JICA協力隊の人とシゴト
黒木 豪(くろき ごう)さん

黒木 くろき ごうさん

職  種
野球
派遣国
ブラジル
派遣期間
2009年7月~2011年7月
  • 社会貢献キャリア
  • # 教師 # 野球 # 経験を生かす

野球一筋で
視野が狭かった自分。
ブラジルでの経験を通し、
新しい生き方を見つけた。

2015.07

応募のきっかけ

小学校から大学まで
野球漬けの毎日。
父親に背中を押され
JICA海外協力隊に応募。

私は小学校から大学まで、野球漬けの日々を送っていました。大学卒業後、公立中学校の非常勤講師として勤務していたある日、授業中にいじめの現場に遭遇。授業後にいじめていた生徒たちを呼んで指導し、先輩の先生に報告すると、その場で対処した方が良かったと指摘され、自分の考えの狭さを痛感しました。
 日系社会青年海外協力隊については大学の先輩から聞いたことがありましたが、当時は海外に興味がなく自分には関係ないことと受け流していました。しかし、そのいじめの一件が、海外で自分の視野を広げたいと思うきっかけになりました。父親に相談すると、「行動せずに停滞するくらいなら、若いうちに動きまくれ」と背中を押され、応募を決意しました。
 派遣前の研修ではたくさんのエネルギッシュな人に出会い、「これまで自分はごく限られた人としか接していなかった」と気付かされました。体育会系の人間関係では、自分の意見を主張することは基本的にタブー。でも、研修で「議論はケンカではない、自分の考えを述べることにはなんの問題もない」と教えられ、目からウロコが落ちました。派遣前訓練でいろいろな経歴や価値観を持つ方と出会えたことは、野球しかやってこなかった私にとって、今後の道を示してくれる大きな一歩になりました。

黒木 豪さん

現地での活動

当初は日本式の厳しい指導が
反発されるも、
弱小チームが全国大会3位の成績に!

派遣先は、日系移民とその子孫が多く住んでいる、ブラジルのサン・パウロ州インダイアツーバ市。私の役目は、日系移民の子どもたちに野球の指導をすることでした。
 野球を教える上で一番大変だったのが、派遣先から要望されていた「礼儀指導」です。当初、保護者の方々にきちんと説明をしないまま日本式の厳しい指導をして反発を受けてしまいました。最初は友好的だった現地のコーチの態度もだんだん変わり、13人いた子どもたちが1ヵ月間で3人にまで減ってしまう始末。
 役員会では、私の指導について目の前で批判される場面もあり、「今までのブラジルのやり方を尊重した方がいい」という人と、「それでは黒木が日本から来た意味がない」という人がいて、板挟みに。そんな中、「黒木のことを信じてみようじゃないか」と周りを説得してくれた人がいて、私も腹をくくることができました。
 残ってくれた3人の子どもたちに礼儀指導とともに野球の基礎を教え込むと、彼らはめきめきと上達。その噂が広まり、実際の活躍を目の当たりにした他の子どもたちが少しずつ練習に戻ってくるようになりました。「しっかり教え続けていれば、子どもたちは絶対に戻ってくる」と励ましてくれた方の言葉は本当でした。
 その後、予選全敗だったチームが、半年の猛練習の末にブラジル全国大会3位の成績を収めた時は、思わず泣いてしまいました。帰国前の送別会には300人近く集まっていただき、そのときも号泣。振り返ると、泣いてばかりでしたね(笑)。

子供たちに野球を指導する黒木さん

帰国後のキャリア

引き続きブラジルで野球を指導し
WBCのコーチに。
その経験から知った
行動を起こすことの大切さ。

派遣期間終了後、一度帰国してから、再びブラジルへ戻りました。現地でお世話になった方に誘われ、ベースボール・アカデミーで子どもたちに野球を指導することになったのです。さらには、プロ野球経験のない私が、なんとワールド・ベースボール・クラシック(WBC)のブラジル代表のコーチを務めることに!まさに人生のターニングポイントとなりました。現在は母校の日本体育大学に戻り、国際交流センターでJICA海外協力隊の窓口を担当しています。

2013WBCにブラジル代表のコーチとして参加

JICA海外協力隊で得たもの

JICA海外協力隊の経験から、配属先の方々や環境のせいにするのではなく、自らの選択に対して責任を持つことが重要だと学びました。日系社会青年海外協力隊に参加する以前の私は、自ら行動を起こすことがほとんどなく、周りの物事に対してもアンテナが立っていない状態でしたが、派遣先で活動していくうちに行動することの大切さを学び、人生の選択肢や考え方そのものがとても広がりました。そんな自分自身に驚き、うれしくも思っています。

自らの選択に責任を持つ

これからJICA海外協力隊を目指すみなさんへのメッセージ

今はテレビやインターネットなどでいくらでも情報を集められる時代ですが、行動することで得られる情報は、他とは一線を画しています。迷っているなら思い切って行動してみると世界が広がると思います。ボランティアで得た経験を生かせば、それはきっとその人だけが持つ強みになるはず。私も活動中は「チャレンジ=成長」だと信じて、七転び八起きを実践していました。皆さんも、自分の「ものさし」を増やすつもりで、どんどんチャレンジしてほしいと思います。

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