どこでもやっていける人になる。
それが自分の強みになると思う。
任期終了後は、「また海外で働きたい」との思いから、国際事業部のある、前職のグループ会社に行くことにしました。1年間、日本で実績を上げ、上司に認めてもらい、2年目には念願だったインドのプロジェクトへ。新築改修工事のエリアマネージャーとして、コスト管理や実施設計の統括などに従事しました。日本に比べるとインドの環境も過酷でしたが、ブータンでの2年間があったので、生活は苦には感じませんでした。
インドは縦社会なので、現地プロジェクトマネージャーからの信頼がすべてです。当初は、私が若かったこともあり、話を聞いてもらえず無視される状況が続いていました。何とか信頼を得たいと、指示書を書いて渡したり、現場で写真を撮影して分かりやすく説明したりと、もがく日々でしたが、辛くてもあきらめなかったのは、「思いが伝わるまで積極的に動けば、相手も応えてくれる」とブータンでの経験から確信していたからです。
そして2ヶ月後、ある日突然、現地マネージャーの態度が変わったのです。そこからはプロジェクトも軌道に乗り、厳しい要求にも応えてくれるようになりました。今でも彼が来日した際には、一緒にお酒を飲み交わしています。
ブータンで度胸がついたことで、インドの厳しい状況下でも「何とかなる」「ここまでやれば、誰かがわかってくれる」と、前向きに仕事に取り組めました。同時に、相手の文化を尊重する柔軟性も身に付きました。ブータンの人は、仕事よりも生活を大事にし、それが気持ちの豊かさにつながっていると身をもって実感していたので、インドでも現地の慣習に違和感なく溶け込めました。その余裕がプロジェクトの成功につながり、結果的に会社からの評価にもつながったのだと思います。
そして今は日本に戻り、不動産管理会社でビルのリニューアル管理に携わっています。自身の将来を考えた時、海外も含めてどこでも通用する人間になりたいと思い、営業から契約、交渉、支払いまで、すべてを担える今の会社に移りました。人とコミュニケーションを取り、皆が動きやすい環境を作るのが好きなので、今の環境は自由度が高く、刺激的です。
築30年を超える建物が増えている日本では、建物を維持・運用するための施設管理は不可欠です。今後は、ゼロから建物を築くのとは違う角度から、業界に関わっていきたいと思います。
「こうありたい」という思いはその時々で変わりますが、チャンスが来た時に選び取れるよう、今はその可能性を広げておきたいと思っています。