JICA協力隊の人とシゴト
門脇 宣幸(かどわき のぶゆき)さん

門脇 かどわき  宣幸のぶゆきさん

現在のシゴト
横浜市役所 高齢・障害支援課 勤務
職  種
ソーシャルワーカー
派遣国
ガーナ
派遣期間
2011年6月~2013年6月
  • グローバルキャリア
  • # 経験を生かす # ソーシャルワーカー # 地方自治体

国は違っても、大事なのは相手の立場に立つこと。
地域を支える福祉の仕事に、JICA海外協力隊での経験が生きている。

2019.05

応募のきっかけ

世界の誰かの力になろうと、
福祉の世界でキャリアを積んだ。
社会人経験を経て、
念願だったJICA海外協力隊に。

高校生の頃、授業で貧困や環境汚染といった世界の様々な問題を知り、「自分には何ができるだろう」と探る中で、福祉にたどり着きました。福祉系の大学を卒業した後は、障害者施設での介護やグループホームの新規立ち上げ、精神科病院での相談員など、福祉を軸にキャリアを積んできました。そんなとき、仕事で参加した社会福祉士の集まりで「多文化共生」や「外国人支援」といったテーマに出会い、改めて、学生時代に自分がやりたかったことを思い出しました。偶然にも青年海外協力隊の経験がある人に話を聞けたことで、国際協力に参加する決意が固まったのです。

派遣が決まったのは、2011年。宮城県出身の自分にとっては、東日本大震災直後に日本を発つことに葛藤もありましたが、「いま自分が求められている場所に行こう」と、覚悟を決めました。日本の状況を海外に伝えることも、大事な役割だと考えたからです。

門脇 宣幸さん

現地での活動

ガーナで学んだ“適切な距離感”。
指導者ではなく、
ともに歩むパートナーとして。

赴任先は、アフリカのガーナ。職種はソーシャルワーカーでしたが、障害者の所得向上支援の一環として、工芸品の販売や制作体験プログラムにも力を入れました。支援者とともに工芸品を制作し、ホームページや動画で制作風景を伝えるなど、今できることで工夫を凝らして、販路を拡大していきました。現地の人との協働では、「時間を守らない」「約束を守ってくれない」など、これまでの常識が通用せず、苛立ち、動揺する場面も多くありました。しかし、仕事を進めていくうちに、自分の気持ちを押し付けるのではなく、ゆっくりと一緒に進めていく立場でなければいけないのだと、徐々に気づき始めました。

協力隊員はサポートをする立場ですが、「自分はできる」という自負がある分、現地の人より上に立とうとしてしまいます。「ひとつの目標に向かって、どう一緒に進めていくか」を意識し、プライベートでもともに時間を過ごし、一緒に食事を囲む時間が、互いの距離を縮め、価値観の違いを埋めてくれました。

教会のバリアフリー化を記念して行われた会にて

帰国後のキャリア

帰国後は、JICA海外協力隊特別採用枠を利用して地方自治体へ。
助け合いの社会を実現すべく、
地域支援に携わる。

帰国後は、横浜市役所に就職し、福祉職に従事。もともと福祉業界に入るときから、業界でのキャリアアップを視野に入れ、高齢者、障害者、貧困、生活保護など、様々な現場を経験してきました。その後、施設にいる人や相談援助に来る人だけでなく、より広い範囲を対象とした福祉に携わろうと、自治体の福祉職に注目。とくに、横浜市には福祉の専門職があり、JICA海外協力隊特別採用枠があることから、自身の経験を生かして、より広い範囲で福祉に携わることができると考えたのです。現在は、JICA海外協力隊での地域支援の経験を生かし、高齢者や障害者の担当として支援や啓発などの活動をしています。

福祉の仕事では、自分が支援の対象者に近寄りすぎると、うまくいきません。「この人にはこういう支援が必要だ」「こうしなきゃいけない」という思いが強くなりすぎると、依存を生んでしまいます。ですから、支援者との適切な距離感が重要です。以前は、距離が近すぎたり、自分の考えに固執しすぎるあまり、押し付けがちになる部分もありました。しかし、ガーナでの経験を通じて、多様な価値観があることを学び、「相手自身がどうしたいのか」を意識するようになってからは、相手のペースや価値観を尊重し、支援の対象者と適切な距離感を保てるようになりました。異文化の環境に身を置いたことで、ものの見方が柔軟になり、自分自身の視野やキャパシティも広がったのです。

ガーナでの生活は、インフラの面では不便も多く、福祉の制度や環境も日本ほど整ってはいませんでした。しかし、困っている人がいれば当たり前のように手を差し伸べ、皆が助け合う環境があります。日本でも、ガーナで見た支え合いの光景が当たり前になるように、誰もが安心して暮らせる地域づくりを行なっていきたいと思います。

区民の相談にのる門脇さん

JICA海外協力隊で得たもの

JICA海外協力隊での経験を通じて、精神的・肉体的にタフになり、価値観や視野が広がりました。もともとは、「貧困に対して、何か自分ができることはないか?」というところから始まりましたが、貧しくてもみんなが幸せに暮らしている光景を目にし、制度やお金だけでは人の暮らしは豊かにはならないのだと気づきました。ガーナでの2年間は「必要な支援とは何か」を改めて考え、ソーシャルワーカーとしての自分のあり方を見つめ直す時間になりました。

視野の広がり

これからJICA海外協力隊を目指すみなさんへのメッセージ

「行きたいけど、帰国後が不安」「自分にできることがあるのか」といった心配もあると思いますが、悶々と考え続けるより、ぜひチャレンジしてほしいと思います。JICA海外協力隊でしか経験できないことがたくさんありますし、現地に赴き、生活してきたこと自体が自信になります。2年間の経験は、すぐにではなくても、後の人生で絶対に役に立つと思います。

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