株式会社ジェイペックJICAボランティアの事前研修で
技術面のサポート

  • グローバル人材の育成・確保
  • CSR活動
  • 研究・教育プログラムの強化

環境改善に役立つ技術普及のため

JICA九州のある北九州市。過去に工業都市として深刻な公害問題がありましたが、市民・企業・行政が一体となった取り組みにより、環境は急速に改善。今では「環境モデル都市」として、廃棄物対策をはじめ、環境にかかわるさまざまな取り組みを行っています。北九州市では環境関連の国際協力も行っており、そのひとつがコンポスト(生ごみから作る堆肥)の普及事業。その元になっているのが、発電事業を行っているJ-POWERのグループ会社「ジェイペック」の若松環境研究所業務推進役CSR担当、高倉弘二さんが開発した方法です。
 「高倉式コンポスト」と呼ばれるこの技術は、「発酵菌」を使って生ごみを処理し、堆肥化するもの。生ごみを堆肥にするための媒体となる「発酵床」は、米ぬかなどで作るためにコストがかからず、また容器を選ばない点など、さまざまな利点があります。「高倉式コンポスト」の普及事業は、北九州市と若松環境研究所、財団法人北九州国際技術協力協会、財団法人地球環境戦略研究機関の4者が連携して行っており、インドネシアのスラバヤ市などで廃棄物減量に大きな成果を上げています。
 そうした実績について知り、途上国で「高倉式コンポスト」を独自に実践する青年海外協力隊員から北九州市に質問などが寄せられていました。そこで、世界各地にこの技術を普及するために、協力隊員が有力な人材だと考えた北九州市がJICA九州に連携を打診。JICAとしても、JICAボランティアの技術や意識の向上に有益だと判断し、環境分野で活動する予定のJICAボランティア対象の事前研修として、「高倉式コンポスト」の研修を行うことに。若松環境研究所では、社会貢献活動の一環として「高倉式コンポスト」の普及事業に取り組んでおり、同じ趣旨のもと、この研修を担当することになりました。

「高倉式コンポスト」研修で講義を行う、ジェイペック若松環境研究所の高倉 弘二さん(中央)と八百屋 さやかさん(左)

現地ですぐに実践できるように

2010年9月に第1回の研修を北九州市内で実施し、派遣前の環境分野の協力隊員7人が受講しました。研修プログラムには、北九州市の環境行政についての講義や、市内の環境関連施設を訪れて、そこでの環境教育手法を学ぶことなども盛り込まれました。
 若松環境研究所が担当した「高倉式コンポスト」の研修では、コンポスト作りの目的や概要などの「座学」に加え、受講者が実際にコンポストを作ってみる「実習」も行われました。「コンポスト作りには何を必要とし、どういう現象が起きて堆肥になるか、限られた時間のなかで一通りのことを学べる内容です」と高倉さん。また、高倉さんとともにこの研修を担当したのが、ネパールで環境教育の協力隊員(平成19年度派遣)として活動した後、若松環境研究所で働く八百屋さやかさん。八百屋さんは現地で「高倉式コンポスト」の普及に取り組んだ経験があるため、受講者が現地ですぐに実践するうえでの必要なポイントを伝えながら研修を行いました。11年3月には2回目の研修が実施され、今後も継続する予定です。
 若松環境研究所によるサポートは、受講者が協力隊員として派遣された後も続けられています。現地からの質問に対して、高倉さんや八百屋さんが対応。すでに80件ほどの質問が寄せられており、それらの回答をまとめた「Q&A」集を作成中とのこと。今後、そうした「Q&A」の公開なども検討しており、より多くのJICAボランティアが実践できるような体制を、若松環境研究所とJICAが連携しながら構築しつつあります。「このコンポストでは、ごみの減量化の観点だけでなく、いかによい堆肥を作るかという点も考えています。今後は農業分野の人にも実践してもらえたら」と、高倉さんは期待しています。

「高倉式コンポスト」研修を受講する派遣前の青年海外協力隊員。自作の「発酵床」を手で握り、水分量の感覚をつかもうとしている

受講者の声

2010年9月に「高倉式コンポスト」研修を受けた人たちの研修の感想等をご紹介します。

前田賢治さん(平成22年度派遣/インドネシア/環境教育)
 研修では、「高倉式コンポスト」の原理や実践、それに伴う問題までをわかりやすく解説していただき、非常に有意義なものでした。アジアを中心に広がっている「高倉式コンポスト」ですが、研修を受講した協力隊員が各地に派遣されていくのに伴って、世界中に広がりつつあります。私は今、そのネットワーク作りに中心的に携わっていて、この研修は、実践に伴うデータ収集や整理、質疑応答の取りまとめなどを効果的に行うことに大いに役立っています。

野本敦志さん(平成22年度派遣/コスタリカ/環境教育)
 研修では、「高倉式コンポスト」の理論やノウハウを学び、私たち受講生の各派遣国の条件などに応じたアドバイスをいただきました。いざ現地で「高倉式コンポスト」を実施してみると、想定外の困ったことや疑問点が出てきました。ジェイペック若松環境研究所の高倉さんらに相談させてもらうこともありますが、質問に対して丁寧に答えてくださって、とても助けられています。また、ほかの派遣国の隊員たちとコンポスト専用のメーリングリストを作り、情報交換やアイデアの共有をしています。

※ここで紹介した研修の詳細については、JICA九州のホームページをご覧ください。

PROFILE

J-POWERグループ株式会社ジェイペック
設 立:1967年6月
所在地:
<本店>東京都中央区日本橋室町4-1-6
<若松環境研究所>福岡県北九州市若松区柳崎町1
事業内容:火力原子力技術事業、資源リサイクル事業、環境関連事業、海運事業を展開
従業員数:全社1,326名(うち、若松環境研究所勤務は44名、2011年4月末現在)
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