UNV経験レポート

田村さんは、青年海外協力隊ではスリランカで青少年活動隊員として活動されました。帰国後の数年間、日本で暮らす難民への支援に携わり、より一層、難民保護・支援の経験を積みたいと考え、UNVでは2021年よりUNHCRマラウイ事務所でAssociate Field Officerとして活躍されました。その経験を紹介いたします。

応募のきっかけ

協力隊の任期が終了した後、日本で難民に出会ったことがきっかけとなり日本で暮らす難民を支援するNGOに3年ほど勤務しました。日本は資金援助の面では難民問題に大いに貢献している一方、国内の難民受け入れには問題が多く、他国のモデルとなるような制度がありません。そこで世界各地で難民を保護しそのリード機関として第一線で活動する UNHCRで難民保護の経験を積みたいと思うようになり、JOCV枠UNVに関心のある職種が上がったタイミングで応募をしました。難民キャンプでの勤務を希望していたため、このポジションに合格できたことはとても幸運だったと思っています。

UNVとしての業務

難民キャンプ内の様子

難民キャンプ内の様子

②関係団体と実施したシェルターアセスメント

関係団体と実施したシェルターアセスメント

③コミュニティーラジオを通しUNHCRの方針を伝える

コミュニティーラジオを通しUNHCRの方針を伝える

1年目はField OfficerとしてDzaleka難民キャンプ内でのプロジェクト調整業務を主に担当し、2年目はそれに加え予算管理、ドナー対応などが加わり、空席になったlivelihoods Officerを兼任しながら多岐に渡る業務を経験しました。

難民キャンプでは、水・衛生、医療、住居、教育、生計向上等の様々なサービスが提供されていますが、フィールドスタッフはその全てが難民に適切に提供されるように調整することが期待されます。規模としては決して大きくないキャンプですが、Dzaleka難民キャンプが開設されて約30年が経つ中でキャンプ内の状況は大きく変容し、その情報が蓄積されてこなかったこと、それに加えて前任者からの引き継ぎ書やチームの共有ファイルが存在していなかったため、1年目は大変苦労しました。

そんな中で最初に取り組んだのは、「生活必需品が難民に届いていない」という問題でした。着任当初、難民や物資配布を担当するNGOから調達を担当するUNHCRに対して苦情が相次いでおり、物資が迅速に届くためのプロセスの見直しが急務でした。

まず担当者を明確にし、紙ベースで行われていたリクエストをデジタル化しました。実際に物資がキャンプに届けられるためには最低でも3つの部署の担当者とのやり取りが必要でしたが、多忙なスケジュールの中でメールを見落とされることは良くあり、時にはメールや電話で、時には担当者の部屋まで足を運び、承認が遅れないようにフォローしました。

半年が過ぎた頃には、一連のプロセスを業務作業手順書に落とす必要性を感じ、長い間アップデートされていなかった作業書を大幅に改定しました。この作業書ができたことで担当とプロセスが明確になり、ニーズ把握後から実際に物資が届くまでの時間が大幅に削減されました。

予期せぬ出来事や予算削減が理由で計画通りにいかなこともあり、現在も難民のニーズに十分に応えられているとは言えませんが、現場のNGO職員や政府の担当者から不満の声は聞かれなくなりました。

UNVを終えたその後

今後は、ポジションが変わりますが、引き続きUNHCRマラウイ事務所で勤務することになっています。具体的には、第三国定住に関わる業務を担当する予定です。

これからUNVを目指す協力隊OB/OGの皆さんへ

国連の仕事では自主性と柔軟性が問われます。自分の仕事は自分で見つけなければいけないという状況も多々あり、多くの海外協力隊の方が直面する状況に似ていると思います。また、配属される国や地域にもよりますが、想像もつかないようなことが理由で業務が滞ることもありますので、協力隊の経験で培われる柔軟性は国連でも活かされると思います。国籍や人種、育った環境の異なる同僚と同じ方向を見て仕事をすることは容易ではなく、プロセスの複雑さから実際に物事が決定するために気の遠くなるような時間がかかることもありますが、だからこそチームで何かを成し遂げた時の達成感は大きいです。国連で働くという選択肢が自分に向いているのか迷っているのであれば、まずはUNVを経験し、国連でその後も働きたいかを考えても良いのではないかと思います。

・帰国隊員進路情報ページ