保健・医療系NGOの現地駐在員となり
国際協力を仕事に

[帰国後]国際協力NGO職員(NPO法人ISAPH〈アイサップ〉)

池邉佳織さん
(マラウイ・公衆衛生・2014年度3次隊)




[池邉さんプロフィール]
1985年生まれ、鳥取県出身。看護学校を卒業後、大学病院の消化器外科病棟に看護師として3年間勤務。2015年1月、協力隊員としてマラウイに赴任。17年6月に帰国。18年1月、アジアやアフリカで保健・医療分野の活動を行うNPO法人ISAPH (International Support And Partnership for Health)に入職し、JICAの草の根技術協力事業「母と子の『最初の1000日』に配慮したコミュニティー栄養改善プロジェクト」のプロジェクト調整員に着任。


【BEFORE】

小学校を訪問し、マラリアに関する講習を行う協力隊時代の池邉さん。児童を寝かせて「蚊帳」の意義を説明している

 池邉さんの心に「アフリカ」が登場したのは、高校に入学したばかりのころ。医療が整っていないために亡くなる子どもがいることをテレビで知り、衝撃を受けた。やがて、アフリカで医療支援に携わるために看護師の道を志すようになった。資格を取ると、大学病院の消化器外科病棟で看護師としてのキャリアをスタートさせる。
 仕事にも慣れ、あらためて 「アフリカ」が頭にのぼったのは、就職して2年ほど経ったころだ。消化器外科の入院患者は末期ガンも少なくない。患者との会話はおのずと「生き方」に関するものが多くなった。「体が動くうちに、やりたいことはやっておいたほうが良い」。高齢の患者にそう言われ、「アフリカで医療支援」という夢を、まずは協力隊で実現する決心がついた。希望どおり、アフリカの国・マラウイに派遣された池邉さんは、地方の医療施設に配属され、母子保健や学校保健の支援に取り組んだ。

【AFTER】

ISAPHのマラウイ事務所で働くマラウイ人スタッフたちとミーティングを行う池邉さん(中央)。現在、同事務所は池邉さんを含めて日本人が2人、マラウイ人が12人という体制だ

 協力隊はすべてが期待どおりというわけにはいかなかった。たとえば、乳幼児健診の質向上を図ろうとしたものの、担当職員の給料は低く、技術を学ぶ意欲を持ってもらうのは容易ではなかった。
 それでも、現地の人々の笑顔は帰国後も頭から離れなかった。そうしたなか、保健・医療分野の国際協力活動を行うNPO法人ISAPHから、「マラウイで始まるプロジェクトに参加しないか」と声をかけられたのは、帰国の2カ月後。村落部の栄養改善を目的としたJICAのプロジェクトを請け負うこととなり、現地の事情を知る池邉さんに白羽の矢が立ったのだった。日本での仕事が務まる看護師はたくさんいるが、アフリカでの仕事が務まるのはごくわずかだ——。自分の存在意義がより高い仕事だと考え、ISAPHへの就職を決断した。
 現地に駐在する「プロジェクト調整員」として再びマラウイに赴任したのは2018年1月。以来、栄養バランスをとるための料理の紹介や、栄養に関する講習の実施などを担当してきた。それらに取り組むうえで役立っているのは、協力隊経験を通じて鍛えられた「自分で考える力」だと、池邉さんは感じている。
「日本での看護師の仕事は、決められた基本的な手順に沿うことが良しとされます。一方、現在の仕事は、プロジェクトのおおまかなプランはあるものの、啓発活動の具体的な実施方法などは、現場の状況を見ながら自分で考えていかなければなりません。それをこなすことができているのは、協力隊活動がまさに『自分で考える力』を必要とするものだったからだと思います」

知られざるストーリー