先輩隊員のシューカツ記

帰国後、内定までの就職活動の方法を聞きました。

【今月の先輩の就職先】株式会社博報堂DYスポーツマーケティング

青木伶奈さん
青木伶奈さん
モンゴル/バレーボール/2014年度3次隊・福井県出身

就職先:株式会社博報堂DYスポーツマーケティング
事業概要:スポーツ関連の商標・ロゴなどを活用した商品化・ライセンシング、オリジナル商品の開発、プロモーショングッズの制作、アスリートのマネジメント・キャスティング、エージェント事業、イベントプロデュースなど。

青木伶奈さんの略歴

  • ▶1989年          福井県生まれ
  • ▶2014年7月     大学院修了
  • ▶2015年1月     青年海外協力隊員としてモンゴルに赴任
  • ▶2017年1月     帰国
  • ▶2017年3月     ナショナルチームのコーチとしてモンゴルに赴任
  • ▶2017年6月     帰国
  • ▶2017年7月     (株)博報堂DYスポーツマーケティング入社

バレーボール隊員の経験を通じて
マーケティングの重要性を実感

   大学までバレーボールに熱中し、大学院ではコーチング論を専攻。卒業後は体育教師になることを考えていた青木伶奈さん。協力隊への参加を決めたのは、大学院時代にアナリストとして帯同した全日本女子ユースチームのコーチが元バレーボール隊員で、協力隊を身近に感じたことがきっかけだった。

「海外でいろいろな経験をしてから教師になったほうが指導の幅が広がると考えました」

   モンゴルでの青木さんの活動は、配属先である国立スポーツ学校での授業だけにとどまらなかった。依頼を受けて、授業のない時間には高校の県選抜チーム、男子ナショナルチームの指導も行った。そして、働きながらナショナルチームで競技をする選手たちと出会ったことは、その後の青木さんの進路にも大きな影響を与えた。

「選手たちは大会の1カ月前から集まって全体練習をしますが、その間は仕事ができないため給料をもらえません。電気代も払えなくなり、競技を諦める選手もいます。それが私には衝撃的でした。競技を強化するにはコーチング論だけでなく、選手を経済的にサポートするシステムが必要でした」

   そう考えた青木さんは、帰国後にスポーツマネジメントやマーケティングを学べる仕事に就くことに決め、転職サイトで求人情報を探し始めた。気になる会社を見つけると、モンゴルからエントリーシートを提出した。協力隊の任期終了後、4カ月はナショナルチームのコーチとしてモンゴルに再渡航することを決めていたので、就職活動ではそのことも伝えた。

   現在、世界で活躍するバレーボールのトップ選手のマネジメントも担当している青木さん。

「途上国ではトップ選手の試合を間近で見られる機会はありません。次世代の子どもたちがスポーツに夢を持てるように、将来的にそんな企画も立ち上げられたら」と夢は膨らむ。



1.協力隊時代   2015年1月~

中学生の体育では青木さん(前列右端)の地元の福井県から体育用具の寄付を受けて授業で使用した

中学生の体育では青木さん(前列右端)の地元の福井県から体育用具の寄付を受けて授業で使用した

配属先は2009年に設立された国立のスポーツ学校で、小学1年生から高校3年生まで約320人を対象に、一般教科と共にスポーツ強化が目的のスポーツ専攻授業を行っています。学校での私の担当は、体育授業のサポートと中学生のバレーボール専攻授業の指導です。モンゴルではバレーボールの人気は比較的高く、大会も頻繁に行われていました。しかし、授業は年間計画がなく不定期な上、生徒数が少ないと休講になることも少なくありませんでした。そんな時、カウンターパートの恩師で他校の教員をしている方から声をかけられ、高校の県選抜チームの指導を手伝うことになりました。また、日本人が監督を務めていた縁で、モンゴルの男子ナショナルチームの指導も手伝いました。

2.情報収集   2016年~

4年後に日本でオリンピックが開催されることから、オリンピックに関われる仕事も視野に入れ、転職サイトで、「スポーツ」「マーケティング」「オリンピック」などをキーワードに検索し、求人情報を探しました。オリンピックを控えていたためスポーツ分野の求人は多くありましたが、特定の競技や事業ではなく、スポーツ全般を総合的に扱う会社に行きたいと考えていたため、条件に合う会社は2社に絞られました。

3.書類提出   2016年10月

モンゴルからオンラインでプロフィールシートと志望動機を提出しました。志望動機には、途上国でスポーツを指導する中で金銭的な壁に突き当たったこと、それをきっかけにスポーツのマネジメント、マーケティングなどのノウハウを、実践を通じて学びたいと書いたと記憶しています。年内に書類審査通過の連絡が来ました。会社にはこの段階で、3月にモンゴルに再渡航する予定であることを伝えました。

4.面接   2017年2月

1月に帰国してから、部長クラスによる1次面接、役員クラスによる2次面接がありました。自己PRでは、フィジカルとメンタルの強さをアピールしました。その際、お風呂やシャワーがないモンゴルでの生活や、要請内容にない学校以外での指導を行うために、配属先の校長先生とどのように交渉したかなど、協力隊でのエピソードも話しました。

5.モンゴルに再渡航   2017年3月

5月にモンゴルで開かれる東アジア選手権に向け、ナショナルチーム強化のためのコーチとして参加しました。

2017年7月 入社

現在の仕事

青木さんが担当している男子バレーボールの石川祐希選手が所属する
イタリア・ミラノのクラブの体育館にて(今年2月)

青木さんが担当している男子バレーボールの石川祐希選手が所属する イタリア・ミラノのクラブの体育館にて(今年2月)

入社直後はイベントプロデュースの部署に所属し、陸上、バドミントン、インターハイ、野球の国際大会などに携わりました。2020年4月からはアスリートプロデュース本部に所属しています。業務は主に二つ。一つは企業が広告にアスリートを起用したいと考えた時に、企業とアスリートをつなぐキャスティング。もう一つはスポーツ選手のスケジュールや肖像権などを管理するマネジメントです。作品が世に出た時の反響の大きさにやりがいを感じています。



後輩へメッセージ

自分がやりたいことを大切にしてください。私自身は中学の頃からスポーツに関わってきて、スポーツに関係する仕事をしたいとずっと思ってきました。学生時代に思っていた体育教師とは形は変わりましたが、その信念は変わらずにきました。それを貫いたことが今の仕事につながっていると思っています。やりたいことに通じるルート、手法はいろいろあるので、やりたいことを諦めずに突き進んでほしいと思います。

Text =油科真弓 写真提供=青木伶奈さん

知られざるストーリー