[特集]協力隊の「活動成果」を考える

失敗から学んだことは?
[現役隊員へのアドバイス]

磯野美子さん

上から目線で日本式を押しつけないこと

磯野美子さん

「ヨシコ、ここはコスタリカなんだよ」。任地の教え子にそう言われた時に、自分がいかに上から目線で、日本式にやろうとしていたかを思い知らされました。例えば日本だと、集合時間5分前に集まるのは当たり前。でもコスタリカでは、雨が降ったら来ない。「どうせぬれるんだから、来るのは当然でしょ」と私は思って待ちますが、30分たっても誰も来ない。もう帰ろうかと思った頃に、一人だけ来たんですが、その一人に対して、「なんでこんなに遅いんだ」と怒ってしまった。でも褒めるべきなんですよね。遅れてでも来たのですから。そういう時に、日本式を押しつけていてはダメだと感じました。

後藤大祐さん

「課題」と「違い」を切り分けて考える

後藤大祐さん

活動で何をすべきか悩んだ時、たくさん見つけたいろんな違いを「課題」と「違い」に切り分けてみてはどうでしょう。「課題」は何かしら解決すべき事柄。「違い」は解決すべきこともあるけれど、解決しなくてもいいこともある事柄です。解決しなくていい「違い」は、それが日本や自分のやり方であって任地とは違うという場合です。この場合は、日本のやり方を強いるものではありません。ゆっくり考えて切り分けてみると、活動の方向性を見いだせるかもしれません。活動内容のみならず、人と人としてのつき合いの中でも認め合えることができれば、それもまた活動に生きてくるかもしれませんね。

太田美帆さん

歩くペースを合わせると見える世界が変わる

太田美帆さん

私の隊員時代はスマホもなく、村にどっぷりと漬かり、わからないことは村の人たちに聞くしかありませんでした。今はどの国でもスマホがあり、検索すれば何でもわかります。とはいえ、せっかく異国にいるのだからその国の時の流れや考え方に身を任せ、そこでしかできない経験をしてほしいと思います。ある先輩隊員の話です。「任地で日本のペースで歩くと、現地の人を皆、追い越してしまう。それに気づいて、現地のペースで歩いてみると、周りの人から声をかけられるようになった」と。現地の人と歩幅を合わせると、見える世界が変わってくるのです。ぜひそれを味わってください。

小國和子さん

持ち回り移動式の会合で現地理解を深める

小國和子さん

「女性月例会」のように定期的に集まって行う取り組みは、なかなか人が集まらず苦労するという話をよく聞きます。集会所や集落長の家で、という固定方式もあり得ましたが、私の場合は、現地理解を目的の一つとしていたこともあり、毎回、「次は誰の家でやる?」と声をかけて話し合って決めてもらいました。1回目はこの集落のAさんの家、2回目は隣の集落のBさんの家、と参加者たちが話し合うのを見聞きすることは、現地の人にとって「会合場所」がどのような条件で決まるのかや、メンバー間の関係性、リーダーシップなどを理解する一助となりました。活動初期などに試してみてください。


Text=池田純子 Photo=ホシカワミナコ(本誌/後藤さん、小國さんプロフィール) 写真提供=ご協力いただいた各位

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