派遣国の横顔   ~知っていますか?
派遣地域の歴史とこれから[セネガル]

サッカーの強豪国として知られ、人の良さやご飯のおいしさが魅力の国。
首都ダカールは欧米から西アフリカへの玄関口でもある。
セネガル

セネガル共和国

  • 面積:197,161平方キロメートル(日本の約半分)
  • 人口:1,732万人(2022年、世銀)
  • 首都:ダカール
  • 民族:ウォロフ、プル、セレールなど
  • 言語:フランス語(公用語)、ウォロフ語など各民族語
  • 宗教:イスラム教、キリスト教、伝統的宗教

※2023年9月19日現在
出典:外務省ホームページ

    
  • 派遣実績
  • 派遣取極締結日:1979年4月18日
  • 派遣取極締結地:東京
  • 派遣開始:1980年10月
  • 派遣隊員累計:1,204人

※2023年11月30日現在
出典:国際協力機構(JICA)

平和を尊重する「テランガ(おもてなし)」の国
仏語圏西アフリカで最多の隊員を派遣

仏語圏アフリカ初の協力隊派遣国であるセネガルでは、1980年の派遣開始以来、1000名以上の隊員が活動してきた。国の歩みや協力隊事業の歴史を紹介する。

お話を伺ったのは

角 雄介さん
角 雄介さん
セネガル/野菜栽培/2015年度2次隊・埼玉県出身

PROFILE
JICAセネガル事務所企画調査員(ボランティア事業)。大学卒業後、会社員などを経て、映像作品に楽曲提供を行う仕事に従事。協力隊に参加した大学の先輩を訪ねてブルキナファソに行き、協力隊に興味を持つ。アジア学院で1年間ボランティアを経験してから協力隊に参加。帰国後は青年海外協力隊事務局の国内協力員を経て、2021年より現職。

   北はサハラ砂漠に、西は大西洋に面するセネガル。15世紀のポルトガル人到来を経てフランスの植民地となり、ダカール沖合のゴレ島は奴隷貿易の拠点になった。1960年にマリ連邦の一部としてフランスより独立した後に分離し、それ以来、アフリカでは数少ない安定した民主主義国家となっている。

   セネガルはアフリカ諸国の中では民族数が少なく、南部カザマンス地方の独立問題を抱えるものの、民族間対立はほとんどない。イスラム教徒が約95%を占めるが、祝祭日がイスラム教とキリスト教由来の両方で設定されるなど、他宗教とも共存している。こうした根底には平和を尊重するセネガルの国民性があると話すのは、JICAセネガル事務所の企画調査員(ボランティア事業)である角 雄介さんだ。

「セネガルには、困った時に助け合う〝テランガ(ウォロフ語でおもてなしの意味)〟の文化があり、隊員もよくご飯をごちそうになります。また、あいさつを大切にし、『家族は元気?』『仕事はどう?』といろいろ尋ねてきます。答え方はさまざまですが、ウォロフ語で『ジャム(平和)・レック(だけ)』というのが何にでも対応できる返しです」

アフリカ大陸西端に位置する首都ダカール。かつてはパリ・ダカール・ラリーのゴール地点だったことでも知られる(写真提供=JICAセネガル事務所)

アフリカ大陸西端に位置する首都ダカール。かつてはパリ・ダカール・ラリーのゴール地点だったことでも知られる(写真提供=JICAセネガル事務所)

   青年海外協力隊の派遣開始は80年で、初代隊員は野菜栽培、水産物加工、看護師の3名。以降、首都よりも農村・漁村中心に派遣されてきた。農産物の収穫量や水産物の水揚げ量の増大、栄養・衛生状態の改善のほか、環境保全や教育支援で活動し、技術協力プロジェクトや無償資金協力とも連携してきた。近年は就学前・初等中等教育や母子保健を中心とした地域医療、職業訓練、障害児・者支援といった分野のほか、2026年に首都ダカールでアフリカとしては始めて開催される第4回夏季ユースオリンピックに向けたスポーツ分野の派遣も増えている。

   西アフリカ経済圏の地域拠点として経済特区の開発などを進め、経済も好調なセネガル。ただ、1人当たり所得は年間1500ドルを超え、最貧国を脱したものの、首都と地方の格差など、まだ多くの開発課題を抱え、協力隊へのニーズは高い。

「長年の協力の成果から、セネガルの政府や市民もJICAや協力隊の存在をよく知っており、『協力隊に来てもらえたらありがたい』と言われます」

   セネガルは米が主食で、優しく真面目に仕事をする人も多く、活動しやすい国柄ではある。一方、停電や断水が珍しくなく、内陸部は時に気温40度を超えるなど過酷な環境下で、人々の生活には死も身近に存在する。日本の常識が通じないことに多く出会うと角さんは言う。

「人々の暮らしや考え方の背景を知ることが活動をスムーズにし、ストレスも抱えずに済むことにつながります。皆でお昼ご飯を囲み、その後はまったりしながら午後の暑さをしのぐ。そうした時間を大切にしてほしいですね」

Text=工藤美和 写真提供=角 雄介さん

知られざるストーリー