先輩隊員のシューカツ記

帰国後、内定までの就職活動の方法を聞きました。

【今月の先輩の就職先】戸田建設株式会社

杉原俊宏さん
杉原俊宏さん
ガーナ/PCインストラクター/2017年度4次隊・岐阜県出身

就職先:戸田建設株式会社

事業概要: 建築・土木事業において、エンジニアリングおよびコンサルティング業務を提供する総合建設会社。不動産の売買・賃貸などの投資開発、再生可能エネルギー事業も展開。海外に事業拠点、グループ会社を有し、海外事業の歴史も長い。

杉原俊宏さんの略歴

  • ▶1990年               岐阜県生まれ
  • ▶2010年~17年     民間企業に勤務
  • ▶2018年3月          協力隊員としてガーナに赴任
  • ▶2020年3月          帰国
  • ▶2020年6月~2022年7月     民間企業に勤務
  • ▶2023年7月          戸田建設株式会社に就職

インフラ整備を通じて
人々の生活向上に貢献したい

   高専時代、オーストラリアに半年間留学し、将来は海外で働きたいと考えるようになった杉原俊宏さん。航空機のエンジニアとして大手重工メーカーに就職したが、将来、海外で働くためには別の経験も必要だと考え協力隊への応募を決めた。任地には「ここで経験を積めば、世界中どこにでも住めるだろう」とアフリカを希望した。

   ガーナでは、職業訓練校のPCインストラクターとして活動する一方、ガーナに派遣されている協力隊員を中心に約70人が集まる総会の自治会長を任された。総会で帰国後の進路に不安を語る隊員が多かったことから、杉原さんは、ガーナで働いている日本企業の社員を総会に招き意見交換会を企画するなど、新たな試みを導入していった。

   自身の進路については、任期が終盤に近づくと「PARTNER」(※)やネットをチェックし、在外公館や大使館など気になる求人を見つけると応募もした。総会に招いた会社員から求人情報を教えてもらうこともあったという。

   任期後はドバイ万博で仕事をする予定だった。しかし、新型コロナウイルス感染症の拡大により万博が延期となり、杉原さんは帰国した。そして、ガーナで知り合った会社員の紹介で、海外事業を展開している民間企業に就職したが、コロナ禍のため海外勤務ができず退社。その後はヨーロッパを旅行し、ドイツでうどん店を開こうと香川に修業に出たりもしたが、「1カ所にとどまることが性に合わないんです。海外を転々としながら仕事をしたいと、改めて思った」という。

   現在、勤務している戸田建設の求人情報は、協力隊の同期が起業したWATATU株式会社に紹介してもらった。現在はスリランカに駐在しているが、会社からはアフリカでの活躍も期待されている。

「ガーナには日本のゼネコンが数十年前に建設した道路が今もきれいに残っていて、『助かっている』と感謝されることもありました。そんなふうに、現地に長く貢献できる仕事をしたいと思っています」

※PARTNER…JICAが運営する国際キャリア総合情報サイト(https://partner.jica.go.jp/)


1.協力隊時代   2018年3月~2020年3月

ガーナの職業訓練校でコンピュータの指導をする杉原さん

ガーナの職業訓練校でコンピュータの指導をする杉原さん

パワーポイントを駆使して行うプレゼン大会に参加した生徒たちと杉原さん

パワーポイントを駆使して行うプレゼン大会に参加した生徒たちと杉原さん

配属先は電気、調理、服飾など6コースを開講している生徒数120人ほどの職業訓練校です。ガーナでは2007年から必修科目にICTが導入されましたが、指導教員も環境も十分ではなかったため、PCインストラクターの私には、全生徒を対象としたPCの授業と同僚への技術移転が要請されました。同僚の授業は座学がメインで実技がなかったため、校内に約20台あったパソコンを修理し、使えるパソコンをクラスでシェアしながら、実技を交えて授業を進めました。職業訓練校ですが、卒業後の就職先は少ないため、授業では起業や就職に役立つよう、パワーポイントを使ったプレゼンのやり方を指導。技術を競うコンテストなども企画し、モチベーション維持に努めました。

2.民間企業に勤務   2020年6月~2022年7月

任期中にガーナで知り合った日本の商社の人に誘われ、海外でコンサル、施工管理をしている会社のガーナ支社に就職しました。しかし、コロナ禍のため日本での勤務が主となってしまったこともあり、海外で働ける場所を求めて転職を決めました。

3.就職活動   2023年1月~

協力隊の同期の集まりに参加した際、海外で働きたいと話したところ、タンザニアの小規模農家を支援しているWATATU株式会社を起業した元隊員から、別事業として協力隊経験者と企業のマッチングを行っていると聞き、ウェブサイトの「協力隊転職ナビ」の求人情報をチェックするようになりました。同社の自己分析プログラムの受講やニーズに合った求人紹介、応募書類の添削、面接対策を活用しました。

4.書類提出   2023年3月

「協力隊転職ナビ」で、戸田建設がアフリカ勤務の人材を求めていることを知り、履歴書と職務経歴書を提出しました。自己アピールでは、メーカー、協力隊、前職と異なる業種を経験する中で、それぞれの現場に適応するためにスキルアップをしてきたこと、現地語を交えてのコミュニケーション力を培ってきたこと、途上国に住みインフラが整備されていく利便性を身をもって感じていて、この仕事に携わっていきたいことなどを書きました。

5.面談・面接   2023年3~5月

私の能力が現場のニーズに合っているのかを確認するため、まずは現場の代表と2回面談し、その後、人事部・役員との面接が行われました。面談・面接では、ガーナの生活を通してインフラの整備がいかに重要であるかを実感したことなどを話しました。入社後に聞いた話では、アフリカ勤務を希望したことも、採用の決め手の一つだったらしいです。

2023年5月 採用決定➡7月 入社

現在の仕事

現在はスリランカに駐在中の杉原さん

現在はスリランカに駐在中の杉原さん

土木グローバルプロジェクト室に所属し、土木施工管理を行っています。入社後はアフリカに赴任する予定でしたが、アフリカでの業務が予定よりも遅れているため、約2カ月の本社勤務を経て、9月からODA(政府開発援助)の有償資金協力で建設した橋の瑕疵対応のため、スリランカに駐在しています。3月ごろにアフリカの案件が動きだせば、そちらに赴任する予定です。当社は現地でエンジニアを雇用し本社で研修を実施するなど、海外人材の発掘・育成にも力を入れています。将来的には、そうした人材育成の分野でも貢献できたらと考えています。

後輩へメッセージ

協力隊の経験を言葉でしっかり伝えることができれば、興味を持ってくれる企業は多いと思います。私の場合、そのために役立ったのが、履歴書のアピールポイントを何度も書いたことです。私は任期中から気になる求人に応募していましたが、そのたびに、自分の経験を振り返り、それをどう伝えたらいいのか考えていました。それを繰り返したことで、自分のことを客観的に伝えるための引き出しが増えたと感じています。その時は結果につながらなくても、長い目で見れば必ず役立つと思います。

Text=油科真弓 写真提供=杉原俊宏さん

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