Q&Aで不安や疑問を払拭!JICA海外協力隊ガイド

豊澤彩乃さんと榊原克利さん

JICA海外協力隊に応募するにあたっての疑問や不安、心配事に、協力隊OB・OGでもある青年海外協力隊事務局の豊澤彩乃さん(ウガンダ/体育/2016年度3次隊)と、マダガスカルでの企画調査員(ボランティア事業)経験もある、榊原克利さん(カメルーン/コミュニティ開発/2018年度3次隊)がお答えします。

Q そもそもJICA海外協力隊は何をする人たちですか?

A JICA海外協力隊は、「青年海外協力隊」「海外協力隊」「日系社会青年海外協力隊」「日系社会海外協力隊」「シニア海外協力隊」「日系社会シニア海外協力隊」の総称であり、開発途上国で現地の人々と共に生活し、同じ目線で課題解決に貢献する活動を行っています。独立行政法人国際協力機構(JICA)が派遣国からの要請内容に基づいて、それに見合った技術や経験を持つ人を選考し、派遣しています。JICA海外協力隊は、青年海外協力隊事業として1965年に発足し、2023年12月現在までの派遣実績国の累計は99カ国です。

榊原克利さん

昨年1月、99カ国目の派遣国として、ジョージアへのJICA海外協力隊派遣が始まりました。派遣国の人々と共に活動することで視野が広がり、帰国後の生き方が変わる隊員もいます。

Q 語学が上達するか心配です

A 訓練前には、自宅で受けていただく「語学事前学習」があり、語学教材(eラーニング)などを用意しています。また、二本松・駒ヶ根の両訓練所で行われる派遣前訓練の「語学授業」では、語学講師が現地で活動と生活をスムーズに始めるために必要な語学力を身につけるための授業を実施します。派遣国に赴任してから配属先に着任するまでの間にも、数週間~約1カ月にわたって「現地語学訓練」があります。より実践的な力を養う目的で、派遣前訓練で学んだ言語や現地語を学びます。

豊澤彩乃さん

語学授業は訓練期間の約6割の時間を充て、実践的な学習をします。私は応募時の語学力目安にギリギリの点数で、文法が苦手でしたが、訓練所の語学授業でグンと伸びました!

Q 途上国で体を壊さないか、安全面も心配です

A   健康、安全、生活面のサポートもあります。派遣前には赴任にあたって必要な健康診断や、予防接種を案内・実施しています。予防接種は自己手配で接種いただくものと、訓練所で接種いただくものがあります(詳細は合格後にご案内します)。また、派遣前訓練中に、現地での活動と生活に必要な健康と安全の管理に関する意識を養うための講座を実施しています。
派遣中は、看護師免許取得者である「在外健康管理員」が健康に関する相談、病気や医療に関する情報の提供、疾病発生時の対応などを、現地の医療機関や医師と連携しながら行ってくれる国も多くあります。
加えて各国にあるJICAの在外拠点では、「安全対策の情報提供」を行っています。現地の治安状況、犯罪防止や交通安全対策に資する情報を提供するほか、通信連絡手段の確保、必要に応じて住居の防犯対策強化なども実施しています。

豊澤彩乃さん

体調を崩した時、病院に行ったほうがいいか相談したりと、健康管理員さんにお世話になりました。何かあった時に日本語で相談できる専門家がいるのは安心です。

▶クロスロード2022年8月号 特集「JICA健康管理室が監修 派遣国の病気・ケガ対策」もご覧ください
▶ クロスロード2022年11月号 特集「年末年始は特に注意を!セルフディフェンスの見直しと徹底」もご覧ください

Q 職種の専門性があまりないので、派遣国で役に立てるのか心配です

A 派遣前訓練に入る前に「1. 講座事前学習」や「2. 課題別派遣前プログラム」があり、派遣前訓練中も「3. 各種講座」で知識や経験を増やしたり、同じ職種の隊員と情報交換したりすることができます。派遣中は技術顧問・技術専門委員への「4.活動支援依頼」のほか、現役のJICA海外協力隊員に向けた実践ガイド「5. クロスロード」で情報を得ることもできます。

1.講座事前学習
JICA海外協力隊員として活動を行うために必要な一般知識をオンラインで学べるよう、教材を用意しています。

2.課題別派遣前プログラム
派遣前訓練の前に、LMS(Learning Management System)を通じ、課題別オンデマンド動画教材を配信しています。派遣前訓練の後には、対象となる方に対し、オンライン型あるいは対面での集合型の課題別派遣前訓練を実施しています。これらを通じ、協力活動分野において必要とされる、実務的な技術・技能および教授法などの向上、習得を図ります。

3.各種講座
JICA海外協力隊の基礎、活動管理手法など、現地での活動と生活に必要なさまざまな講座を実施しています。

4.活動支援依頼
JICA青年海外協力隊事務局は、隊員の分野・職種別に技術顧問や技術専門委員を配置しています。派遣中の隊員が活動上の技術的なアドバイスなどを希望する場合には、技術顧問や技術専門委員に支援を依頼することができます。

5.クロスロード
派遣中の隊員に向け、現地での活動と生活の参考となる実践的な情報などをまとめた「クロスロード」を毎月発行しています。JICA海外協力隊のウェブサイトから閲覧やダウンロードができます。また、楽天Koboの電子書籍版もあります。
クロスロードウェブ版

榊原克利さん

「クロスロード」をPCで読みたい方はJICA海外協力隊ウェブサイト、スマートフォンやタブレットで読みたい方は楽天Koboの電子書籍がお薦めです。どちらもまずは上記ウェブサイトをチェックしてください。

職種選びで迷ったらCheck!
自分に合う職種を見つける2つのポイント

Point1
自己分析・自分自身の棚卸しをする

これまで経験したことや関心のあることなどを振り返り、整理してみましょう。例えば…
■学校で学んだことは?
■仕事やアルバイトで経験したことは?
■興味・関心があることは?
■持っている免許や資格は?
■打ち込んだ競技や特技は?
■指導経験は?
■ボランティア経験は?
■JICAに関心を持ったきっかけは?

Point2
やりたいこと/やれることで探す

「やりたい」気持ちだけでなく、これまで培ってきた経験や技術の裏づけがあって初めてやれることがわかります。両面から探していきましょう。

図

▶職種選びについては、PDFのP20-21も参考にしてください


Q お金のサポートはありますか?

A 訓練所までの往復交通費、派遣国の赴任・帰任にかかる旅費はJICAが負担します。現地での住居は派遣国の政府またはJICAが用意します。国や地域によっては住居に警備員が配置される場合もあります。業務連絡用に携帯電話(SIM)などが貸与されます。「国内手当(※)」や「現地生活費」(派遣国での生活費で、JICAが、派遣国の住民と同等程度の生活を営むに足る金額を、物価、為替変動などを勘案の上、定めています)などの支給もあります。
※支給要件に合致する場合のみ

豊澤彩乃さん

派遣中の住まいは、一人暮らし、住居シェア、ホームステイなど、派遣される国や地域の状況によりさまざまです。すべてJICAの安全管理チェックをクリアした住まいです。

Q 仕事を辞めずに協力隊員になる人もいると聞きましたが、どんな人たちですか?

A 勤務先の承諾が得られれば、現職のまま参加することが可能です。特別な制度としては、学校の教員がその身分を保持したままでかつ有給で参加できる「現職教員特別参加制度」もあります。また、個人の意向というよりも、所属先の意向が重要となりますが、自治体・大学・企業などの所属先が継続的に人を派遣したい場合、「連携派遣」という仕組みで、組織としてJICAに派遣を提案する場合もあります。

榊原克利さん

各企業のボランティア休暇制度などを利用して参加する方もいます。また、勤務先が参加者の雇用を継続することを支援する仕組みとして、勤務先に対して支給する現職参加促進費の制度もあります。

Q 派遣されている2年間に、余暇や休日、長期休暇はありますか?

A あります。活動先により、勤務時間や休日・長期休暇の日数は違い、朝7時から昼過ぎまでで活動が終了する隊員もいれば、夕方くらいまで活動が続く隊員もいます。あらかじめ申請して現地のJICA事務所の承認があれば、私費で任国内旅行や任国外旅行をすることもできます。

■平日のスケジュール例

 西岡大介さん(ラオス・コミュニティ開発)の場合 西岡大介さん(ラオス・コミュニティ開発)の場合

豊澤彩乃さん

事前に申請すれば、長期休みなどを利用して、派遣国内・外を旅行することもできます。その際に日本を行き先にすることもできます。

Q 帰国後の進路に関する支援はありますか?

A 青年海外協力隊事務局では、「1.進路検討支援」「2.キャリア支援」「3.進学・研修支援」を通じて帰国した皆さんをサポートしています。

1. 進路検討支援
帰国隊員を対象に、研修やセミナー、勉強会などを通じて進路開拓や協力隊経験の社会還元に関する検討のサポート、進路開拓に役立つ技術の取得、免許・資格の取得につながる学習に対して必要な経費を支援する「教育訓練手当」制度があります。また、「進路相談カウンセラー」や「JICA海外協力隊相談役」を全国に配置し、進路相談にも対応しています。

2. 就職支援
国際協力分野のキャリア情報サイト「PARTNER」による求人情報の提供を行っています。また、教員・自治体職員の特別採用枠の取りまとめや、JOCV枠UNV制度(国際協力分野でキャリアップを目指している青年層のJICA海外協力隊OB/OGを国連ボランティアとして主に国連機関に派遣する制度)も設けています。

3. 進学支援
JICA海外協力隊OBOG向けの大学・大学院の特別入試制度や、国際協力人材を目指す人向けの研修制度などがあります。また、帰国後2年以内の帰国隊員のうち、JICA海外協力隊への参加で得た知識および経験を、国内外で生かす社会還元を促進するために、国内外の大学院への進学を志望する方および進学している方を対象とした、奨学金給付事業があります。

榊原克利さん

2年間のJICA海外協力隊経験が評価され、教員採用試験の一次試験が免除されるなど、採用で特別枠を設けている自治体もあります。

2019年度帰国隊員の進路状況は?(回答743人)

※新型コロナウイルス感染拡大前の最新の集計結果を記載しています。
2019年度帰国隊員の進路状況は?(回答743人)
※2019年4月1日~20年3月31日までに帰国した青年海外協力隊および日系社会青年海外協力隊(合計919人)に対して、
青年海外協力隊事務局が行ったアンケート結果より。19年4月~21年5月までに回答があった743人の進路状況を集計。
JICAの支援体制の詳細についてはこちらをご覧ください。


Text&Photo=ホシカワミナコ(本誌)

知られざるストーリー