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事例紹介2018.3.15

Friendship~CSR資金を獲得し続けるプロフェッショナルNGOのビジネス・モデル

【ソーシャルビジネス事例解剖⑦】

地域:ダッカ

分野:資源・エネルギー

中洲や川岸に暮らす貧困層に医療サービスを提供する船の病院

(出典)Friendship

 その船が川岸に接岸すると多くの村人が集まってきます。彼らは、中洲や川岸に暮らすため、村の医療機関までは遠く、この船の病院がアクセスできる唯一の医療機関です。この船には基本的な医療器材の他に、手術室(2部屋)、入院設備(8床のベッドが2部屋)、レントゲン、病理検査といった設備を備えています。この為、通常の診察の他に、小児科や婦人科、歯科治療も可能です。

 Friendshipは現在、3艘の船により、このような船の病院事業を展開しています。2013年には、この船の病院により10万9,000人を診察しましたが、2016年にはその数は14万5,000人に達し、この間1.3倍に増加しています。

FriendshipはバングラデシュのNGOで、船の病院事業の他に、教育やガバナンス、文化保全などの分野で活動を実施しています。これらの費用は、基本的には企業などからの資金提供(寄付)によって賄われています。例えば、船の病院事業では、ユニリーバ―社やエミレーツ航空から、それぞれ資金を受け、病院船を1艘ずつ運営しています。即ち、船の維持費用、医者や看護師などの人件費、機材費の総費用について、ユニリーバ―社の場合はその半分が、またエミレーツ航空の場合は全ての費用が、これらの企業の資金により賄われています。この為、貧困層は、これらの医療サービスを無料で受診することが出来ます。

(出典)Friendship

CSR資金‐出し手の「論理」‐

 一方、ここで立ち止まって考えたいのは、エミレーツ航空やユニリーバ社は、何故Friendshipが実施する船の病院事業に資金を提供しているのか、という点です。両社とも企業の社会的責任(Corporate Social Responsibility:CSR)活動の一環として、この資金を提供していますが、両社の事業と船の病院(医療サービス)は、一見すると関係がありません。エミレーツ航空やユニリーバ社は、単に慈善事業として資金を提供しているのか、或いは何らかの意図を持って提供しているのでしょうか。

 結論から先に書けば、ユニリーバ社とエミレーツ航空は異なる目的の下に、資金を提供していました。まず、ユニリーバ社が支援する船の名前は「Lifebuoy Friendship Hospital」と呼ばれ、同社が農村地域で展開する石鹸のブランド名「Lifebuoy」が名前に入っています。更に、この名前は病院船の側面にも大きく掲げられており、同社は、自社製品の広告の為に病院船に資金を提供している意図が分かります。一方、エミレーツ航空が支援する船でも「Emirates Friendship Hospital」と名付けられていますが、FriendshipのCEOのルナ・カーンさんによると、「ビジネスとは直接的な関係はなく、総合的なコーポレートブランド向上の為に資金を提供している」とのことです。即ち、例えばエミレーツ航空の機内に置かれているパンフレットへの掲載や従業員の満足度向上の為に、エミレーツ航空は同事業に資金を提供している由です。

更に、Friendshipでは、船の病院におけるユニリーバ社やエミレーツ航空の他に、30~40の外国企業や財団などから資金や機材(或いは機材の使い方をトレーニングする技術者)の提供を受け、教育など他の事業を展開しています。欧州のある銀行では、Friendshipの活動に資金を提供しつつ、顧客や従業員の家族を活動の視察に連れてきて、顧客との関係性強化や従業員満足度の向上を狙っているとのこと。

 このように、同じFriendshipにおける活動であっても、マーケティング活動や企業イメージの向上、或いは顧客との関係性強化や従業員満足度など、様々な目的の下にCSR資金が提供されていることが分かります。

(出典)Friendship

CSR資金‐受け手の「論理」‐

ソーシャル・ビジネスやBOPビジネスでは、現地機関との連携が重要視される中、今回、ルナ・カーンさんに、「バングラデシュには、このような外国企業などからの資金や技術を欲しているNGOは山のように存在するが、何故Friendshipは、これほど多くの外国企業や財団と連携できるのか」と単刀直入に尋ねました。するとルナ・カーンさんは「それは私たちが事業でベストを尽くし、しっかりと結果を残している為だ」と強調しました。例えば外国企業がCSRの一環として資金を提供してきた場合、「我々は、そのお金が、例えば従業員の寄付によって賄われていることや、外国企業が苦労をして稼いだ資金の一部であることを理解している。バングラデシュのNGOの中には、このような資金で私腹を肥やす輩も多いが、我々は事業内容や会計については、きっちりと報告を行い、透明性を確保している」と述べ、「だから、一度、外国企業と連携を始めると、そこから長期的な関係性に発展することが多い」と述べました。

社会的効果と事業の持続性を両立させるビジネスモデル

 一般的に外国企業が現地NGOにCSRの資金を提供するのは、自分達だけでは発展途上国の貧困層を対象にどのように事業を展開したらよいか分からないので、そのノウハウを期待して資金を提供することが多いと考えられます。船の病院事業の場合、Friendshipには船の病院事業を運営・管理することにより医療サービスを提供できるというノウハウを有しており、ユニリーバ社やエミレーツ航空は、このノウハウに期待をしてFriendshipに対し資金を提供していると言えます。一方、ルナ・カーンさんの言葉からは、このような「ノウハウ」は、現地での医療サービスの品質もさることながら、定期的な事業報告や透明性の確保といった外国企業の「ルール」にも沿った形による事業運営も含まれることを意味しています。

 更に、ルナ・カーンさんは、「我々は無節操に資金を受け取っている訳ではなく、自分達のビジョンや戦略に合った資金しか受けらない。残念ながらこの部分が合わずに資金提供をお断りしたこともある。」と強調します。

Friendshipが実施する船の病院事業は、貧困層に医療サービスを提供しつつ、外国企業から資金を受け取るという形の「ソーシャルビジネス」と捉えるならば、医療サービスの受け手である貧困層のニーズを満たすと同時に、資金の出し手である外国企業のニーズをも同時に満たすことによって、このビジネスが持続的なものになっていることが分かります。

 これらのことから、日本企業にとっても、現地機関との連携を模索する場合には、事業内容も去ることながら、このような事業報告や経理の透明性、或いは当該団体のビジョンや戦略なども、よくよく吟味することが重要であることが分かります。

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