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事例紹介2018.8.5

JITA Social Business Bangladesh ltd ~販売事業で農村女性のエンパワーメントを目指すビジネスモデル

【ソーシャルビジネス事例解剖⑨】

地域:ダッカ

分野:資源・エネルギー

農村女性が直面する問題

発展途上国では、女性は世帯内で劣位な立場に置かれがちです。バングラデシュにおいても、男性は女性よりも権威があると捉えられています。例えば、特に農村地域における女性は自由に家から外に出られないといったことや、夫に先立たれた場合、未亡人は経済的・社会的に困窮するリスクが高いと考えられています。このように厳しい立場に強いられがちな農村女性に対し、経済的・社会的に自立を促していくこと、或いは自立できる環境を作っていくことは、農村地域の貧困削減を考える上で重要な視点と言えるでしょう。

“アパラジタ”による販売事業という「ソリューション」

JITA Social Business Bangladesh ltd(以後JITA)は、農村女性を組織化し、日用品の販売活動を展開している民間企業です。JITAでは販売活動に従事する女性達を“不屈の女性(women who never accept defeat)”を意味する「アパラジタ(Aparajita)」と呼んでいます。JITAは現在120名のアパラジタを雇用し、このアパラジタが農村地域の各世帯を訪問し、石鹸や化粧品、栄養食品などを販売しています。

JITAのMazad Hossain Mahin氏(Business Development Manager)は、「アパラジタの訪問販売により、農村女性に雇用機会を提供している他、普段は買い物に出ることすら出来ない女性にも買い物の機会を提供することが出来ている」と語った。

(出典)JITA

JITAが直面する「試練」

JITAによると、アパラジタによる販売事業開始から7年が経過したものの、未だに事業が黒字化しないとのことです。

他方で、農村女性のリクルートが年々難しくなってきています。農村地域では縫製工場などでの就業機会が増えてきており、暑い中を歩き回るアパラジタの仕事より、工場の中で出来る仕事を選ぶ傾向があるようです。このため、アパラジタ人材を確保するために、給与含め比較的良い雇用条件を提供する必要がありますが、経常コストとして財務面に影響を及ぼしています。

このような販売事業は、いわゆる「小売業」に該当します。特に日用品等を扱う小売業では、日本のスーパーマーケットやコンビニに見られるように、量的規模を以て販売することが、収益を上げる一助となります。しかしアパラジタは製品を詰めた鞄を持って1軒1軒回って販売しており、また販売製品が(基本的に単価が高くない)日用品ですから、それほど大きな売上は期待できません。このような状況で少しでも利益を上げるためには、アパラジタの数を増やして売上を拡大させることも一手ですが、農村地域の就業構造の変化からそれもままならない、という苦しい状況です。このような構造的な問題は、JITAが直面する「試練」と言えるでしょう。

(出典)JITA

JITAの次なる事業戦略

このような状況を受け、JITAは新たな戦略を検討しています。それは、これまでのアパラジタによる移動販売に加え、金融サービスや医療サービスも提供する「コンビニ」を設立するという新たな事業モデルです。別の言い方をすれば、これまでのアパラジタという単線的な販売チャネルから、「アパラジタ+コンビニ」を組み合わせた複線的な販売チャネルを築く、そういう狙いです。これにより、アパラジタ単体モデルよりも幅広い製品・サービスを提供できるとともに、顧客にとっての利便性も向上することが期待されます。

(出典)JITA

社会的効果と事業の持続性を両立させるビジネスモデル

このJITAの事例を通じて、次のことが言えるでしょう。

女性が社会的に厳しい状況に置かれる「ジェンダー」の問題は、現在のバングラデシュにおいても根深く残る開発課題です。従前は、農村地域における女性の(農作以外への)就業機会は極めて限定的でした。JITAは女性を販売員として雇用することで、女性の収入向上や発言権の強化に確実に寄与したと言えるでしょう。しかし、女性の雇用機会が開かれたことで、工場勤務などの選択肢が多く存在するようになりました。JITAはこのような農村地域における女性を取り巻く環境変化を受け、今や女性の販売員を獲得することに苦労しています。このようなことから、「ジェンダー」問題は決して解決されたものではありませんが、女性の地位は日々刻々と変化していることから、その変化を的確に捉えてビジネスモデルを練り上げることが必要になります。

社会的効果と事業の持続性を両立させるためには、顧客の利便性に焦点を当てることが重要ということです。JITAの新たな事業戦略は、農村地域で日用品から金融サービス・医療サービスまで提供する「コンビニ」の展開です。これは、多様化する農村地域の顧客層のニーズに対応するために、それまでのアパラジタ単体方式よりも少ないコストで、幅広い製品・サービスを提供することを狙ったものです。ビジネスで社会的効果を生じさせるにしても、やはりビジネスの基本に立ち返り、顧客のニーズに徹底して着目することは、社会的効果と事業の持続性の両立を図る上でも重要なことであると考えられます。

バングラデシュの農村地域で女性が経営するコンビニ。流行る日も近いかもしれません。

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