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産業レポート2015.04.05

バングラデシュの最新医療情報!

地域:全国

テーマ:保健医療

カテゴリ:ライフスタイルの変化

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20年間で大きく改善した農村の医療事情

この20年あまりのバングラデシュの医療事情の変化を端的に表すのが、死亡要因の変化であろう。20年前の死亡要因の上位を占めていたのは、下痢や栄養失調による乳幼児の死亡、マラリア、結核などの感染症であった。特に感染症による死亡は全体の6割を占めていた。こうした死因の背景には農村部において保健衛生に関する知識や支援体制が不足していたことが挙げられる。非衛生的な水やトイレ、感染に関する知識の欠如、蚊などに無防備な住まいなど、基本的な保健衛生面での対応が遅れていた。また病人を治療するクリニックや医者、看護婦の数が圧倒的に少なかった。

しかし、こうした状況も今、大きく様変わりしている。下痢による死亡者数は20年間で91%減少し、栄養失調による乳幼児の死亡も79%減少した。マラリアや結核による死亡者数も目を見張るほどに改善した。これはバングラデシュ政府と多くの支援団体の努力の賜物である。

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農村における保健衛生の改善には、JICAをはじめとした国際機関やNGOも積極的に取り組んできた。例えば、JICAバングラデシュ事務所では、現在、母子保健/保健システム強化プログラムを推進中である。また非営利の調査機関であるInternational Center for Diarrhoeal Disease Research, Bangladesh(バングラデシュ下痢性疾患国際研究センター: icddr,b)は、感染症の予防、乳幼児の栄養改善、妊産婦の死亡率改善に大きな成果を挙げている。

こうした努力の結果、1990年において死因の6割を占めた感染症は3割まで半減、妊産婦や乳幼児の死亡率も大幅な削減を見た。医療の地域間格差など課題はまだ多いが、確実に状況は良くなっていると言える。

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またこうした医療環境の改善は、バングラデシュの平均寿命の伸びにも反映し、この20年間で10歳伸びている。

各国の平均寿命

バングラデシュの新たな医療課題

感染症などの死亡が減った今、バングラデシュでは新たな医療課題に直面している。現在、バングラデシュの死因第1位は「心臓病」であるという。1990年と比較して死亡者数は脳卒中が200%増加し、糖尿病では200%そして心臓病で400%も増えたという。

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生活習慣病の代表格である心臓病の伸びは著しく、バングラデシュの全国にある国立循環器病院では外来患者が10年で2倍に増え、年間16万人に達したという。2013年にはバングラデシュ全国の心臓病起因の死亡者数は日本の19万人に匹敵する13万人に上っている。(出典:The daily star, Medical college, dist hospitals to get cardiac units, December 20, 2014)

日本の場合、心臓病による人口10万人当たりの死亡率は、戦後50年間かけて2倍に増加し、心臓病の死亡者数は平成17年に19万人に達した。バングラデシュの場合は、20年間で4倍に上昇している。いかにバングラデシュの変化が急激であることが分かるであろう.

この心臓病の急激な増加の背景として挙げられているのはバングラデシュの食生活の変化である。バングラデシュでは豊かな経済成長を背景に米・野菜中心の食事から、肉や魚を中心に油を多く使う食事に変わってきた。そのため、塩分摂取量が増えており、心臓病の一因となる高血圧者数が急増しているのだ。WHOの調査によれば、バングラデシュの高血圧者数はおよそ11人に1人の1200万人、都市部、成人男性1日の塩分摂取量は平均11gとWHO基準値の2倍であるという。また子供から大人まで、肥満となる人々が増えており、生活習慣病の危険が高まっている。

そして、心臓病患者数の急増に肝心の心臓病用医療インフラが追いついていない。現地新聞の報道によれば、バングラデシュの公立病院120カ所のうち、心臓病患者用のベッド数は1000台に過ぎず、心臓病患者数のわずか数%しか収容できていないという。ベッド数が足りないため、入院し手術をするまでに1年を要するケースも出ており、お金の余裕のある富裕層に至っては、国内に見切りをつけインドやヨーロッパなど海外に治療を受けるケースも多い。( 出典: the daily star, Medical colleges, dist hospitals to get cardiac units, December 20, 2014 )

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さらに、診察する医療機器も不足している。調査会社によると、バングラデシュの医療機器市場のマーケットサイズは2013年現在、1億6,200万ドル(日本円で約200億円)と日本の医療機器市場の2兆2000億円と比較すると、1/100程度と小さい、市場は年率9%で伸長しており、成長産業として期待されているもの、まだまだ市場は発展途上の段階なのである。

医療機器市場の動きはまだ限定的であるものの、水面下では外国企業の医療市場参入が起こり始めている。日本の大手医療機器メーカー、オムロンは2014年5月から電子血圧計や電子体温計などの健康医療器具の販売を開始した。バングラデシュでの今後の健康意識の高まりを予測した動きであるという。(出典:日経新聞、オムロン、バングラで健康機器 血圧計などを販売、2014年4月25日)

バングラデシュの心臓病患者数は今後も拡大が予想されている。バングラデシュ調査機関の予測では、2025年の心臓病死亡者数は2014年のおよそ5倍、60万人に達するとしている。この増加は単なる医療機器や健康機器の普及に止まらないであろう。心臓病を予防するために、人々はジムなどのフィットネスに勤しみ、低カロリーな健康食品を求めるようになる。医療機器分野だけでなく食品産業、サービス産業など様々な産業を横断した波及が予想される。

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