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産業レポート2015.04.05

テレビが欲しい!電化地域の広がりと高まる家電ニーズ!

地域:全国

テーマ:資源・エネルギー

カテゴリ:ライフスタイルの変化

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家電をめぐる環境の大きな変化

バングラデシュを語るとき、電力不足や度重なる停電のことが良く言われる。確かにダッカのような都市においても数時間おきに停電になることが多く、特に夏のエアコン利用が増えると電力需要が大きくなるので停電は日常茶飯事であった。全国の電化率はつい最近まで50%を切っており、大半の人々にとって電気の通じない生活が長く続いていたのである。当然、農村には家電市場は生まれず、家電製品を買えるのは都市の富裕層に限られていた。

こうした状況は、今、大きく変化してきている。今も時折停電はあるが、電力不足を改善する政府のはたらきによって、かなり改善してきた。現在、電化率は68%まで進み、2009年にくらべ、電力の発電能力も倍増している。

こうした中、家電をめぐる環境も変化してきている。昨日まで無電化だった農村にも液晶テレビが広く普及をはじめ、家電に関する消費意欲が高まってきているのである。人口1億6千万人の巨大な家電マーケットである。

電化率の大きな改善

バングラデシュが独立国家となって30年がたった2001年においても、バングラデシュの電化率は30%に留まっていた。人口の70%にあたる1800万世帯は電気の通じない無電化の生活を余儀なくされていたのだ。電灯も無く、灯油の小さなランプで夜の闇を照らすほかなかった。発電施設は2009年においても27基しかなく、電力インフラは極めて脆弱だった。

一方、経済成長に伴い、家庭や産業部門での電力消費が増え、電力需要が年率平均7%で伸びて電力不足に拍車をかけた。毎年火力発電所1基分に相当する新規需要が生じ、発電所が新しく建設されても増加分は既存の電化地域の不足に充当され、無電化地域の電化は遅々として進まなかった。

こうした状況を受け政府は、2008年にバングラデシュを2021年にまでに中所得国にする「Vision 21」と呼ばれる政策目標を掲げ、電力についても「2021年までに電化率を100%」にすると宣言した。また当時4,942メガワットの発電許容量を24,000メガワットまで増やすことを目標に定めた。

この電力インフラの改善目標は、過去6年の間に順調な改善を示している。発電所の数は新規に65基が建設され、2009年の27基から2014年には92基にまで増えた。その結果、発電許容量は2009年の4,942メガワットから11,265メガワットまで増加、現在はさらに大型の発電所建設計画が進んでいる。電化率も徐々にではあるが高まり、現在時点では68%まで改善した。政府は、2018年までの中長期計画において、9,600メガワット増やす計画で、JICAもバングラデシュ南東部のマタバリに輸入石炭を燃料とする定格出力1,200メガワット(600メガワット×2基)の発電所を建設し、急増する電力需要に対応する。

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ソーラー・ホーム・システムの急速な普及

一方、遅々として進まない農村の電化に関しては、政府は再生可能エネルギーの活用を推進することを決め、2002年には世界銀行から200億円の支援を受け、無電化地域に ソーラー・ホーム・システム(SHS)と呼ばれる自家用のソーラー発電システムを導入するプログラム「Rural Electrification and Renewable Energy Development」を開始した。

SHSは家庭用のソーラー発電システムであり、主に電気の通じていない地域を対象に、照明等の最低限の電化製品の電気をまかなうための発電装置である。ソーラーパネル、バッテリー、コントローラー、照明器具を1つの自家用発電システムとしてパッケージ化しており、住宅の屋根に「たたみ一畳ほど」のソーラーパネルを設置する。これで1日約5時間にわたり電気が通じ、照明が明るく部屋を照らす。

ソーラーホームシステムズ概略図

2003年に導入が始まったSHSは、当初はなかなか普及しなかったが、2010年に50万世帯を超えて以来、勢いを加速させ、2014年10月には導入世帯数が300万世帯を超えた。今も勢いは衰えず、今後2〜3年間は毎年100万世帯ずつ増加すると予想されている。100万世帯というのは日本で言えば京都府の全世帯数に匹敵する。それぞれの発電規模は比較にならないほど小さいが、導入している世帯数だけを比較すれば、日本の157万世帯(2013年時点)の倍の導入数になっている。

太陽光発電住宅の世帯数

ソーラー・ホーム・システム急伸の背景

こうした政府の動きは、世界的なソーラーパネルの低価格化が背景となっている。1990年代後半にかけて、先進国を中心にソーラー発電システムは普及期を迎えた。ドイツ等のヨーロッパ諸国が再生可能エネルギーの固定価格買取制度(太陽光・風力などの自然エネルギーを長期間、優遇価格で買い取る制度)を開始し、再生可能エネルギーを推進したからだ。100メガワット級の巨大なソーラー発電所の建設が相次いで始まり、再生可能エネルギーのブームが起こった。

ソーラーパネルの世界の生産量は2000年の277メガワットから2010年の24,000メガワットと約90倍に増えた。2000年時点では1ワットにつき7ドルだったソーラーパネルの価格は、2010年には1ドルまで低下し、2014年現在では0.4ドルまで下がった。この10年あまりで、20分の1の価格に低下しているのだ。もはやソーラー発電システムは高価なものではなくなった。

太陽光パネルの価格推移

もう一つ急伸した要因は、政府による包括的な推進策であろう。SHSは基本的にシステムを各家庭が割賦販売で購入する。買い手は頭金を支払い、毎月定額を返済するしくみだ。この買い手に対するファイナンスは、政府傘下のインフラ開発公社(IDCOL)が販売ディーラーに対して低利融資を行うことを通じて行った。また貧困家庭に対しては補助金を出すことで普及を後押しした。

SHSの規格、システムに使用される設備や部品等の品質確認と認証、販売ディーラーの選別と指導など、本プログラムをきちんと推進するための包括的なマネジメントをIDCOLが主導して行うことで、関係者に安心感が生まれた。

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当初は20ワットの発電システムに白熱電球一つが付属するセットが主力であったが、現在は同程度の価格で50ワットの発電システムにLED電球4つと15インチの液晶テレビが付属するセットになっている。このパッケージの場合、販売価格は27,000 タカ(約41,500円)である(Grameen Shaktiホームページより)。ソーラーパネルは20年保証、電池は3年〜5年、制御装置にも3年の保証がついている。パッケージは最大、135ワット型まで用意されており、発電量や付属する家電に応じてバラエティのあるラインナップとなっている。

SHSの普及はLED電球の登場により加速を早めた。LED電球導入の前には、白熱電球ひとつ灯すので精一杯であったが、LED電球の場合、電力消費が3ワット〜5ワットと数分の一に小さくなったことから、同じ発電量でも余剰ができ、液晶テレビなど他の家電も使えるようになったのだ。

広がる家電市場

電気が通じることで、バングラデシュの人々の関心は家電製品購入に大きく傾く。今、市場の牽引役となっているのは液晶テレビである。テレビは一昔前までは高嶺の花であった。ブラウン管のテレビは電力の消費量が高く、また液晶テレビは値段が非常に高かった。しかし、ここ10年の間に液晶テレビの値段が大幅に低下し、15インチの液晶テレビであれば7000円程度で買えるようになった。これであれば農家でも十分に手が届く。

電化の広がりと、家電製品の低価格化により、今まで取り残されてきた農村に住むバングラデシュの多くの人々が新たな家電の消費者として台頭してきた。国民所得が向上し、より付加価値の高いものへの消費意欲も高まっていくだろう。手つかずの巨大な市場が生まれようとしている。日本の企業にも是非注目頂きたい。

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