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産業レポート2015.04.19

ダッカ市に高速高架鉄道!渋滞緩和へ向けて進む都市計画

地域:ダッカダッカ管区

テーマ:民間セクター開発

カテゴリ:注目分野

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知らない人にダッカの渋滞の様子を伝えるのは、かなり難しい。それは東京のラッシュアワーに見かけるそれとは随分と雰囲気が違う。バス、トラック、タクシー、リキシャなどあらゆる乗り物が、道を行く人や牛馬と渾然と混ざり合い、灼熱のアスファルトの上にカオスが生まれ、クラクションが耳を突き刺し、埃と排気ガスに包まれる。

バングラデシュは世界で最も人口密度の高い国であるが、首都ダッカの人口密度は飛び抜けて高い。2000万人近い人口を抱えるダッカの市街地では1平方キロメートルあたり3万人が住み、過密地域となると4万人に到るという。東京都23区の人口密度が1万4千人、ニューヨーク市が1万人 である。ダッカの人口がいかに突出しているかがわかるであろう。

産業構造が変化し、農村から都市への人口流入が加速するにつれて、この傾向はいよいよ強まっているという。統計では、ダッカ市は毎年100万人程度の人口が増えている。100万人と言えば、仙台市の人口に匹敵する。このような状況が続けば、2025年には人口は2500万人を超えることが予想されている。(出典: Bangladesh Bureau of Statistics, population and housing report)

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都市の過密化は、社会や人々の生活に様々な問題を引き起こすことになる。住宅や学校などのインフラ不足から、ゴミや生活排水の処理問題まで、都市のキャパシティを超えた人口増は、そこに住む人々の生活を脅かす。中でも極端な交通渋滞は、経済社会への影響において、とても深刻な問題である。現在でも、ちょっとした距離を行くにも1時間から2時間かかり、市内の用事で半日かかることも珍しくない。また公共交通機関が整備されていないので、時間通りに目的地につくためには、よほどの時間の余裕を持っておかないと、遅刻する恐れが高い。このまま人口が増え、車が増えてくると都市機能はパンクしてしまうであろう。

現在、この渋滞を緩和すべく、ダッカ市の都市交通計画が進んでいる。道路の幹線整備から都市高速鉄道の導入まで、今後の5年から10年の間に、ダッカの交通インフラを変えようとする計画だ。

2005年にバングラデシュ政府は、世界銀行の国際開発協会(International Development Association)の支援を受けて2025年までの都市交通戦略計画(Strategic Transport Plan)をまとめた。この計画の柱となるのは70本を超える道路整備プロジェクトと大量輸送のための公共交通機関の整備プロジェクトで、無秩で錯綜とした道路を整備し、バスや鉄道などの公共交通機関の整備を行う巨大なプロジェクトである。

東京モノレール

高架鉄道のイメージ図(写真は東京モノレール)

公共交通機関整備の目玉は、バングラデシュ初の高速都市鉄道(MRT)の導入である。現在、ダッカ市内の公共交通機関はバスやオート・リキシャと呼ばれる天然ガスで走る三輪自動車、近距離であれば人力で走るリキシャが中心で、市内を走る鉄道も地下鉄もない。バスは渋滞でいつ来るかわからず、使い勝手が悪い。オート・リキシャは事故の危険が多い上に、値段が高い。高速鉄道が導入されることは、過密都市ダッカに画期的な変化を起こすことになる。

この高速鉄道はJICAの支援で敷設されるもので、総額2450億円の「ダッカ都市交通整備事業」の一環である。これはバンコク市にあるような高架鉄道で、ダッカの北から南へ縦断する形で、総延長20キロメートルに及ぶ。2014年から工事が始まり、2019年に一部開通の後、2021年を目処に全線開通する予定である。1日に51万人の利用者を見込んでおり、これは東京メトロの南北線とほぼ同規模である(1日の利用者が45万人)。

ダッカ市は、市内の移動のしにくさが大きな障害であったが、この鉄道により移動時間が短くなり、ある程度移動の時間が読めるようになることは、実に画期的である。ダッカ市に実際に住んでいる者にとっては夢のような話であり、一日も早い開通を望みたい。

この高速鉄道では、乗車券や改札システムを日本のSUICAのような非接触ICカード方式(日本技術)にすることを目指している。既に、一部のバス路線で試用されているが、このようなプリペイド・カードがバングラデシュでも広がる可能性もある。

高速鉄道の導入は、渋滞の緩和だけでなく、駅前開発などを通じて、都市の様相を変えて行くことになろう。駅を中心とした住宅街や商業施設の開発も進めば、人々の生活やライフスタイルも変化していく。

大事なことは、これは10年先の夢の話ではなく、5年先の具体的な計画であるという点だ。これからの数年間にバングラデシュは、坂道を走り抜けるように変化を遂げていく。

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