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産業レポート2015.05.15

世界生産量8位!ジャガイモの話

地域:全国

テーマ:農業/農村開発

カテゴリ:注目分野

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日本人の食卓のおかずやスナックでおなじみのジャガイモ。日本ではあまり知られていないが、バングラデシュは世界で8番目のジャガイモ生産国なのである。

世界のジャガイモ生産量を見ると中国とインドの生産量が飛び抜けて多いが、バングラデシュも年間850万トンとドイツとポーランドに次いで多く、日本の実に約4倍の生産量である。なぜこれほどまでに多いのか。それはバングラデシュの食料危機からの克服とその後の農業生産の歴史に負うところが大きい。

世界のじゃがいも生産量

1970年にパキスタンから独立を果たしたバングラデシュは、戦争で疲弊した国土、度重なるサイクロンなどの自然災害、機能しない行政機構などにより、深刻な食料危機に見舞われた。独立後のバングラデシュ政府の重要課題は食料の安定確保であり、ジャガイモは食料危機克服のためのエースとして注目された。なぜならジャガイモは、1ヘクタールあたり15トンを生産することができ、これは米の生産量の4倍に匹敵する効率的な食料であったからだ。タンパク質、カリウムなどのミネラル、ビタミンB群やビタミンCなどの必須栄養素を多く含み、色が白く、味が淡白であることから主食ともなる。ジャガイモは米と並んで政府の強い推進製作を受け、その生産量は独立時に比べ8倍以上に増加した。

食料危機を乗り越えたバングラデシュ政府は、生産量が高まったジャガイモを輸出産品として後押しする政策を取る。政府は2001年よりジャガイモの輸出に対して20%〜30%の補助金を出すことを決め、ジャガイモの輸出競争力をつける政策を推進する。この推進策により、ジャガイモの輸出量は2009年から2014年の5年間で、9,700トンから54,000トンまで5倍に増えた。輸出先は、主にインドネシア、シンガポール、ロシアがメインである。

輸出の次に期待されているのが、ジャガイモの加工である。バングラデシュでは全生産量の73%が加工されずに消費されており(出典: The Daily Star, “Potato prices on the rebound”, March 09,2014)、日本では逆に71%が加工されていることと対照的である(農林水産省、じゃがいもの統計データ)。例えば、フレンチフライやポテトチップスなどの加工食品にされる割合は2%に過ぎず、日本の17%に比べるといかにも小さい。また日本では生産量の4割を占める加工食品用のでんぷん生産は、まだ始まってもいないという。

食品加工が遅れているのはジャガイモに限ったことではなく、バングラデシュの食品加工産業全体がまだ黎明期にある。統計によれば、GDPに占める食品加工業の割合は2.5%に過ぎず、他国と比較しても低い。食品加工の内容も、果実ジュース、パン、油、魚介類など一部の食品に限られている。農業生産は大幅に改善したが、風下側の食品加工はこれからだ。冷蔵庫の普及が急速に伸びており、冷凍食品に対する需要も高まりつつある。核家族化が進み、女性の社会進出も増えてきている中で、こうした食品加工ビジネスは、国内でも大きくなる可能性が高い。

GDP

バングラデシュのジャガイモ生産に関する大きな課題は減耗率の高さである。バングラデシュでは、生産されたジャガイモの3割が減耗によって廃棄されている。これは実に日本のジャガイモの年間生産量に匹敵する240万トンに及ぶ。この大量廃棄の背景にあるのは、ジャガイモを保存する冷蔵倉庫の不足とコストの高さである。

ジャガイモは常温での保存も可能であるが、1週間も放置すると芽が出て売り物にならなくなる。長期保存するためには、2℃〜3℃の低温状態にしておく必要がある。しかし、バングラデシュの全国にある冷蔵倉庫のキャパシティは2013年時点で300万トンしかなく(”Potato processing in Bangladesh”, Dr. Urs Egger, Bern University of Applied Science)、他の農産物の利用もある中、冷蔵倉庫が慢性的に不足している。また供給サイドが少ないので利用料金が高い。コストをかけて保存したとしても、値段の上下が激しい農産物市場でコストをカバーする値段でタイミングよく売りさばくことは難しい。損失を避けるためには、生産されたジャガイモを保存することなく、すぐに売りさばくか、廃棄するしかない。

Potato

こうしたバングラデシュの経緯は、日本のジャガイモ生産の歴史と重なるところも多い。日本でも時代の変遷と共にジャガイモは食生活の変化を受けて生食用から加工食品用へと大きくシフトしてきた。第二次世界大戦が終了した1945年以降、食料不足を補うためにジャガイモの大量生産運動が展開された。当時、今のバングラデシュと同様にジャガイモの保存が問題となり、全国各地で冷蔵・冷凍設備が普及した。また、政府によるでんぷんの固定価格買取制度の導入により、1960年から加工食品用のでんぷん生産が広まった。1970年代の高度経済成長を迎えると、家庭における冷蔵庫の普及や食の欧米化が進み、冷凍食品やポテトチップスの需要が急増し、ジャガイモ利用は大きく多様化することとなる。

バングラデシュも近年、都市部を中心に大型スーパーの出店や、外食産業のオープンが相次ぎ、食の多様化が進んでいる。スーパーでは大型の冷蔵装置に冷凍野菜、肉などバラエティー豊かな冷凍食品が並び、街のファーストフード店でもフライドポテトを頬張る若者も数多く見かける。日本が経験したようにバングラデシュの食生活の多様化はこれから進むだろう。ジャガイモを巡るビジネスの発展はこれからだ。

バングラデシュにおける農作物の廃棄を扱った資料として、本ホームページのお役立ち情報にある「ポストハーベスト・ロス削減のための加圧加熱食品加工技術の移転に関するニーズ調査」が詳しい。是非、ご参照ください。

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