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産業レポート2014.12.26

バングラデシュで成長する精米ビジネス

地域:全国

テーマ:民間セクター開発農業/農村開発

カテゴリ:注目分野

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1億5千万人の食卓を飾る主食「お米」

バングラデシュ人は自宅に親戚や友人を招いて、食事をするのが大好きだ。日本人でも少し親しくなると「うちに食事にこないか」と誘われる。娯楽の少ないバングラデシュでは、こうした食卓を囲んでの懇親が何よりの楽しみなのだ。数種類のカレーを次々とご飯にかけて食べながら、あれやこれやのよもやま話で盛り上がる。

 そこで初めての日本人なら、皿に盛られた山盛りのご飯に驚くであろう。タイ米のようなサラサラとしたご飯を、これでもかとばかりに大量に盛られる。その量たるや、お碗1杯で足りる日本人の胃袋では、いくつあっても足りないほど。半分くらい食べると、どこからともなく手が伸びて、またご飯を装ってくれる。バングラデシュ人にとってお米は無くてはならない主食なのだ。

機械化する精米

バングラデシュでは、お米は年に3回収穫される。稲刈りされ、脱穀されたお米は、農家や精米所で精米される。バングラデシュでは、この精米を手作業で行うのが主流である。脱穀された販売用のお米は、昔ながらの精米所に持ち込まれる。そこで数日間天日干しされた後、籾すり機にかけられる。効率は悪いが、2度3度と籾すり機に通すうちに、籾殻が取れ、精米されていく。こうして精米されたお米は、色も形も無骨だが、バングラデシュでは長年この方法でお米を食べてきた。

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 その精米方法に、大きな変化が起きつつあるという。機械化の進展である。しかも、コンピュータ制御の大型機械が、伝統的な精米手法を押しやって、急速に普及し始めているそうだ。全国20カ所を対象とした調査では、2007年から2012年にかけて全自動の大型精米業者が142件から350件に伸びた。精米事業が盛んなある地方では、2009年には19%しかなかった機械による精米が2011年には60%にまで普及したという(地元紙Daily Startの記事より)。

その現場を是非見たいとダッカ近郊の農村に、1年前に精米事業を始めたという起業家を訪ねた。

 1000万円以上を投資したという新しいコンピュータ制御の精米所では、巨大な精米機が大きな音を立てて回っていた。精米した米の形やサイズ、色までをコンピュータが仕分けることできるそうで、大量のお米がセンサーの前を流れて、出荷用の袋に詰め込まれていく。

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 倉庫の入り口では、近所の農家から次々と精米用のお米がトラックに載せて運び込まれてくる。話を聞くと、機械で精米したお米は、市場で1キロあたり2タカ(約3円)の付加価値がつくという。精米業者が1トンあたり900タカを取っても、1100タカの利益が出る計算だ。この精米所は比較的小さな規模だが、一日に40トン〜50トンの精米を行うとのことであった。

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 こうした大型の機械化された精米所が成長している背景には、バングラデシュの人々のライフスタイルの変化がある。より豊かに、良い生活をしたいと考える層が増え、白いきれいなお米を毎日食べたいという需要は富裕層から中間層まで大きく広がっているのだ。

 また、相対的なコストの上昇も、労働集約的な手作業での精米を難しくしている。多くの日雇い労働者を雇い、数日をかけて行う手作業の仕事を、大型の機械はものの数分で大量に処理することができる。いくら安い人件費とはいえ、これでは競争にならない。ここ数年の人件費の値上がりも、これに拍車をかけている。

国家食料政策強化プログラム(National Food Policy Capacity Strengthening Program)が最近行った研究によれば、全自動の精米機械を利用している業者の利益は、伝統的な精米業者の3倍であるという。また投資リターン(IRR)も、機械化が33%であるのに対し、手作業の場合は19%に過ぎない。米の販売に関する中間業者の取り分でも精米業者が一番大きく45.7%である。精米業者の次が米の小売り業者で17.9%、卸売業者がそれに続く。

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 聞くと機械のほとんどは中国からの輸入だそうだ。起業家が言うには、新品の中国製より、中古の日本製が良いともいう。日本の製品に対する信頼と期待は、こういう所にも現れている。

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