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産業レポート2017.10.07

成長産業レポート:農業機械

地域:全国

分野:全般

1. 背景

バングラデシュにおける農業のGDPに占める割合は10.8%(畜産を含む)にすぎない。しかし、全労働人口の45.1%が農業に従事しており、農業はバングラデシュ経済にとって極めて重要な分野である。また農村地域の人口が全人口の7割を占めていることもあり、農業の動向はBOP層の多い農民の生活改善に直接影響を与える。人口が増加し続けている1億6千万人の食料を確保する食料安全保障上の観点からも、農業の発展はバングラデシュ政府の最優先事項の一つである。

農業生産は、1971年の独立後の食料難の時代を乗り越えて、着実な成長を見せてきた。1971年における農産物の生産高は11百万トンであったが、1990年代から2000年代にかけて毎年4%の増加を示し、2006年には30百万トンまで増加した1。特に米の生産は、バングラデシュの農産物の中核として安定的な増加をみせた。

(出典)バングラデシュ統計局2

バングラデシュの国土は狭く、道路や電気などのインフラが十分に整備されていない上、サイクロンなどの自然災害が多く、農業の生産性を上げることは並大抵なことではない。こうした多くの障害を克服しながら、バングラデシュの農業が成長している要因として、世界銀行は灌漑設備導入による耕作地の拡大、高収量品種の導入、市場の効率化、農業の機械化を挙げている3

本レポートでは、農業の機械化に焦点を当て、農業機械市場の発展を概説する。

2. バングラデシュの農業の特徴

バングラデシュの農業は、以下の点を主な特徴として持つ(出典:農林水産省・日本)。

  • バングラデシュの農業は、季節的な水の過剰と不足という極端な水環境に適応して営まれており、雨季には地域の水条件にあった多様な品種のコメが作付けられ、乾季には休閑されるか、雑穀、豆、油糧種子等の畑作物が栽培されている。

  • この30年間の急激な人口増加に伴い、主食であるコメを中心に農産物の生産量も着実に増加しているものの、農業の生産性と農家の収入レベルは低く、農村地域の貧困率が高くなっている。

  • バングラデシュでは、穀物の自給をほぼ達成しているが、穀物(特にコメ)の供給や価格が政治問題に直結するため、穀物の生産に関しては非常に敏感である。

(出典)バングラデシュ統計局:Agriculture Yearbook 2015

上記のグラフのとおり、バングラデシュの農業では米の生産が大きな割合を占めており、他の農作物の割合が低い。今後、さらに農業の生産性を上げるためには、農作物の多様化が求められている。

また、バングラデシュでは農家の一世帯あたりの耕地面積が小さい。専業農家においても1ha未満のところが8割以上で、5割以上が0.4ha未満の零細農家が占める(2008年)4。一方、1haあたりの穀物の生産高は4406kg(2014年)であり、世界平均の3386kg(2014年)より高い。バングラデシュは肥沃な土地と温暖な季節により、季節に応じて異なる種類の米を生産し、二毛作(全耕地面積の48.4%:2015年)、多いところでは三毛作(全耕地面積の21.5%、2015年)を行うことが可能である(出典:Agriculture Yearbook 2015)。

3. バングラデシュの農業機械導入の歴史

(1)1970年代:国家による灌漑設備の導入

バングラデシュでは1971年に独立後の農業振興策として、灌漑用地を拡大するため、国家による灌漑設備(深井戸: Deep Tube Well、DTWと浅井戸:Shallow Tube Well、STW)への投資が行われ、国が灌漑設備を保有し、農家へ貸し出す形態が広がった。

1970年代半ばにはSTWが35000基を超え、1978年にはDTWも9000基となり、国が灌漑設備を直接管理することが難しくなったことから、DTWやSTWを農民組織や農家へ売却する動きが加速し、民間による灌漑用設備の輸入販売、保有、管理を促進するための法規制が整えられた。

  • 灌漑用機器購入資金の融資開始(政府系、民間銀行)

  • 民間企業による灌漑用機器の輸入販売の解禁

  • 灌漑用機器(STW用)輸入にかかる関税を15%に削減

(2)1980年代:規制緩和

1980年は1983年の大旱魃を機に、灌漑用設備の輸入規制(旱魃の要因に井戸水の使用過多という指摘を受けたもの)がなされ、民間の農業機器ビジネスは一時停滞したが、80年代の後半には政府の外貨規制の緩和に伴い、灌漑用設備や耕耘機の輸入に関する非関税障壁が取り払われ、関税も撤去された。さらに、1989年には小型エンジンの輸入も解禁され、中国からの輸入も開始されて、多様な種類と大きさのエンジンが国内に流通するようになった。農業設備の修理業が急成長したのも、この時期である。

【規制緩和の背景】

1986年と1988年の2度にわたるサイクロンの直撃により、大勢の人々が犠牲になったが、同時に多くの農耕用の雄牛が失われた。当時のエルシャド大統領は、農耕用の雄牛を代替するために2輪の耕耘機を中国から輸入することを決定し、農業機械の規制委員会を解散、輸入に関する規制を撤去した。この規制緩和に伴い、農業機械の輸入が堰を切ったように増加することになった。

規制緩和により、1982年には96,000基であったSTWは、1990年には260,000基を超えるに至った。STWは、その後も順調に増加を続け、2010年には140万基を超えている。

(出典)Study into the Commercialization of selected Agricultural Machines in Bangladesh/Table 5: Number of machines used for agriculture purposes/iDE Bangladesh/August 2012

(3)1990年代以降

1990年代からバングラデシュにおける農業機械産業は、中国やインドからの2輪トラクターや4輪トラクターの輸入が増加すると同時に、小型エンジンの輸入自由化を受けて国内での農業機械(除草機や脱穀機のような非精密機械)の製造も段階的に発展した。

国内の研究機関等で設計された農業機械は15社のメーカーによって製造されているほか、全国には4万以上の中小の町工場があり、多様な農業機会・器具を製造し、部品を供給、修理などのサービスを提供して、市場の拡大を下支えしている。

(バングラデシュ農業大学:研究開発のために保有する農業機械)

2輪トラクターと4輪トラクターは、大手の輸入業社が自社の店舗や、全国の小売店やディーラーを通じて販売する。農業機械の割賦販売のためのファイナンスを民間の商業銀行が行うことで、購入しやすい環境も整い、2000年以降、特に2輪トラクターの数はうなぎのぼりに増えた。

(出典)IDE: Study into the Commercialization of Selected Agricultural Machines in Bangladesh/ Table 5: Number of machines used for agriculture purposes/iDE Bangladesh/August 2012

(4)現在

従来、農業機械の動力はディーゼル・エンジンが中心であり、ディーゼル燃料に対しては国から大幅な補助金(75%)で農家の人々を支えていた。しかし、国の補助金の負担額が巨額になってきており、政府は国庫負担の軽減や温暖化対策の一環として電動エンジンへ転換する政策を推進している。

その中心となっているのが、ソーラー発電と灌漑用設備を結びつける「ソーラー灌漑プログラム(Solar Irrigation Program)」の推進である。政府は、太陽光発電によって得られた電力で灌漑設備を動かし、全国のディーゼル・エンジンを置き換えていくことを目標に、2018年までに1500基設置する計画で、インフラ開発公社(IDCOL)が世界銀行やJICAなどの支援を受けて推進している。1基のソーラー灌漑システムで5基程度のディーゼル・エンジンのポンプを置き換えることが可能である。

(ソーラー灌漑システム:太陽光発電で地下水が汲み上げられて、田んぼを潤す)

さらに、太陽光発電によって脱穀機を動かしたり、電動トラクターを導入したりするプロジェクトも実験的に進行している。情報通信技術(ICT)も活用し、地面の湿度に応じて水を供給させるようなシステム開発もバングラデシュの研究所でなされている。

(地面にセンサーを埋め、湿度に応じて自動的に水が供給されるシステムの実験装置/United International Universityで撮影)

4. 農業機械市場の市場規模

(1)概要

バングラデシュにおける農業機械市場の市場規模は、正確には把握されていないが、政府系の農業研究機間であるRural Development Academyの資料によれば、2014年時点で796億タカ(約1035億円)と推定されている。

市場の内訳の中で金額が大きい小型ディーゼル・エンジンは輸入品であり、浅井戸や脱穀機で使用されている。トラクター等の予備部品(スペアパーツ)は、全国の小規模な工場で国内需要の8割を供給できている。

【農業機械市場規模推移(推定値)】 (単位:百万タカ)

 

2011年

2012年

2013年

2014年

2輪トラクター

4,200

4,025

3,000

4,200

4輪トラクター

5,525

4,140

3,996

4,025

浅井戸ポンプ

1,400

1,600

1,050

1,225

小型ディーゼル・エンジン

21,600

30,000

21,750

22,500

脱穀機

3,320

4,070

5,216

5,302

とうもろこしの殻むき

107

142

215

268

スプレー(国内製造)

126

429

428

450

スプレー(輸入)

30

45

47

56

予備部品(国内製造)

20,000

20,600

20,800

21,000

予備部品(輸入)

6,000

5,400

5,400

5,300

修理・メンテナンス

8,841

10,609

12,731

15,277

合計

71,149

81,060

74,633

79,603

(出典)Rural Development Academy資料/Presentation for 3rd Regional Forum on Sustainable Agricultural Mechanization in Asia and the Pacific/December 20155

なお、ここには含まれていないが、精米機械の市場も35百万ドル程度あるとされる。

(ダッカ近郊の精米所:コンピュータ制御の精米機械を導入した中小企業)

(2)2輪トラクター

2輪トラクターは、一部を除き中国からの輸入品であり、市場はSifang社製とDongfeng社製のものに独占されている。年間約6万台が輸入されている。12馬力〜16馬力のディーゼル・エンジンを搭載し、耕運機(Power Tiller)をとりつけて主に耕作に使用されるが、他にも貨物の運搬など多様な用途に利用されている。

国内の8つの輸入業社によって輸入されているが、国内に広い販売ネットワークをもつChittagong Builders & Machinery Limited社6の実質独占(80%の市場シェア)となっている。また、Alim Industries Limitedが国内で、年間約4000台を中国製のディーゼル・エンジンを使用して生産・販売している。

【2輪トラクターの価格と販売台数推移】

 

2009年

2010年

2011年

価格

(タカ)

販売台数

(台)

価格

(タカ)

販売台数

(台)

価格

(タカ)

販売台数

(台)

Sifang社製

87,000

40,000

95,000

50,000

108,000

40,000

Dongfeng社製

66,500

18,000

77,700

23,000

88,800

22,000

(出典)Study into the Commercialization of selected Agricultural Machines in Bangladesh/Table 7: Recent Sales and Price Trend /iDE Bangladesh/August 2012

2輪トラクターについては、バングラデシュの複雑な地形や気候に合わせて多様な利用方法があり、値段も比較的安いことから販売台数は多いが、近年、価格は高いがより効率的な4輪トラクターが台頭してきたことで、シェアを落としてきており、2輪対4輪の競合が激しくなってきている。

(販売店での展示:左が4輪トラクター、右が2輪トラクター/ACI Motors Outletで撮影)

(3)4輪トラクター

バングラデシュでは1960年代より4輪トラクターが輸入されているが、2005年に至るまで販売台数は伸び悩んでいた。2002年の段階でも年間の販売台数は700台に満たないものであったが、2006年以降に伸び始め、現在は6000台程度の輸入が続いている。

販売が増加した理由の一つは割賦販売の普及がある。通常、購入代金の30%を前払いし、残りを2〜3年で完済するスケジュールとなっている。

4輪トラクターは、インド製を中心に、中国製や韓国製の製品が輸入販売されており、インド製ではMahindra社やTAFE社のトラクターが多く出回っている。

(出典)IDE: Study into the Commercialization of Selected Agricultural Machines in Bangladesh

(4)浅井戸ポンプと小型エンジン

浅井戸に使用される小型ディーゼル・エンジンは、年間8万台が輸入されていると推定されている7。渦巻きポンプ(Centrifugal pump)は国内で生産されており、年間約15万基の需要があると見込まれる。灌漑システムが普及するに伴い、耐久性があり、品質の良い製品にも需要が高まってきている。

ドイツ製や、イタリア製の小型エンジン、ポンプが出回りつつあり、バングラデシュ仕様に改良した高品質のポンプを台湾から輸入する業者も出てきている。

(展示会で展示されていたイタリア製《左》のポンプと台湾製《右》のポンプ)

(4)今後の拡大に期待がかかる農業機械

灌漑用ポンプや2輪・4輪トラクターの普及により、耕地の灌漑や耕作における農業機械の利用は広がっているが、以下の作業分野においては機械化が遅れており、今後の発展が期待される。

  • 溝づくり(Ditching)

  • 土手作り(Bunding)

  • 除草(Weeding)

  • 種まき(Seeding, Drill)

  • 田植え(Transplanting)

  • 稲刈り(Harvesting)

  • 乾燥(Drying)

5. バングラデシュの農業機械市場拡大を牽引している要因

バングラデシュの近年の農業機械市場の拡大には、主に以下の要因がある。

(1)農業人口の不足

バングラデシュでは、経済が工業化するに伴い、農村から都市へ人口がシフトしており、相対的に農業に従事する人口が減少してきた。1980年代には全世帯の7割が農家であったが、2008年時点では6割を切った。さらに2015年には15歳以上の労働人口に占める農業従事者の割合は45%にまで減少するに至った。

(出典)バングラデシュ統計局8

この結果、田植え期や収穫期において人を集めて作業することは難しくなってきた。特に人数が必要となってくる田植え、稲刈り、乾燥期にタイミングよく人が集まらないのは農家にとって喫緊の問題となる。

また、人件費も徐々に高騰(過去5年で50% 近い上昇)してきており、伝統的な労働集約的な農業を継続するのが難しくなってきている。

(出典)Agriculture Yearbook (2013-2015)、毎年の12月の平均値

(2)政府の農業政策

1988年のサイクロンによる大きな被害のあとに進められた農業機械輸入に関する規制緩和によって、バングラデシュの農業機械産業の発展が始まった。政府の農業政策において、農業の機械化は常に重点政策として推進されてきた。

政府は、輸入品に関する関税や非関税障壁を撤廃し、農家に対しては助成金(購入価格の25%を助成)で支援してきた。特に灌漑用のポンプについては、ディーゼル燃料について助成を行い、全国への普及に力を注いできた結果、現在では95%の耕地が灌漑用ポンプを利用するようになっている。

また、バングラデシュ農業研究所(Bangladesh Agricultural Research Institute)をはじめとする農業関連の研究機関において、バングラデシュの農業に適する技術や機械の改良についての研究が行われている。

(3)ファイナンスの拡充

購入資金に対するファイナンスを農家が受けられるようになったことは、農業機械普及の大きな推進力となった。当初、国営の農業金融機関が農業ファイアンスを行ってきたが、1990年代の民間金融機関の台頭により、民間レベルにおいて輸入業者や販売業者への融資が増えた。こうしたファイナンスを通じて、農民への割賦販売が容易になったことで、農家の農業機械購入のハードルが下がった。

6. バングラデシュの農業機械市場のサプライチェーン

バングラデシュの農業機械市場の拡充には、サプライチェーンの有機的な構築がある。トラクターや小型ディーゼル・エンジンなどの精密機械は、その大半を輸入に頼っているが、灌漑用の渦巻きポンプやエンジンのスペアパーツなどは、ほぼ国内で供給されている。

(1)輸入業社

前述のとおり、2輪トラクターを扱う輸入業者は8社あるが、実質的にはChittagong Builders & Machinery Limitedの独占状態である。同社は全国に広がるディーラー網を通じて販売を行っている。

一方、4輪トラクターについては、バングラデシュには9つの大手輸入業者があり、自社のアウトレットを通じて販売している。主要なブランドの輸入業社は以下の通り。

輸入業者名

メーカー

ホームページ

Karnaphuli Group Limited

Mahindra(インド)

http://www.karnaphuli.com/

The Metal (Pvt) Limited

TAFE(インド)

http://www.themetalbd.com/

ACI Motors Limited

Sonalika(インド)

http://www.acimotors-bd.com/

また、4輪トラクターについては、トラクターの運転手がブローカーと呼ばれる役割を担い、トラクター販売の営業を行っている。販売に対して高いインセンティブが与えられている。

(2)国内製造事業者、修理業者

バングラデシュ国内のメーカーで最大なのは、Alim Industries Limitedである。

企業名

Alim Industries Limited

所在地

シレット市

設立年

1990年

製品

  • 2輪トラクター

  • 脱穀機

  • 刈り取り機

  • その他農業用器具

ホームページ

http://www.alimindustriesltd.com/

バングラデシュ国内の農業機械産業に関係する業者の数については正確な統計はないが、以下のように推測されている9

職種

鋳物工場

70工場

農業機械関連の生産工場

800 工場

修理工場

20,000工場

機械工

500,000人

村の熟練工

100,000人

国内の製造業社や修理工は、正規の訓練や教育を受けていないことが多く、技術面で改善すべき余地が多いと指摘されるが、スペアパーツの入手が容易で、基本的な修理が近場で行うことができることは、農家に安心感を与えている。

(3)サービス・プロバイダー

バングラデシュでは、小さな耕作地しか持たない零細農家が多く、1軒の農家だけでトラクターや脱穀機などの農業機械を導入することは難しい。そこで、保有する農業機械を使い、他の農家の農作業を請け負うサービス・プロバイダーが生まれた。

サービス・プロバイダーは、割賦販売で農業機械を購入し、近所の農家を顧客として、土地の耕作、田んぼの灌漑、稲穂の収穫、脱穀などのサービスを提供することで収益を得ている。

サービス・プロバイダーとなるのは、農業機械を購入するための資金を借り入れることができる資力のある農家であり、自分の田畑のために利用した後の余力で他の農家の農作業を請け負う。また、サービス・プロバイダーを主たる事業とする起業家も出てきている。

サービス・プロバイダーについては、Study into the Commercialization of selected Agricultural Machines in Bangladesh /iDE Bangladesh/ August 2012においてバリューチェーン上の位置付けや、農家の中で農業機械を保有する物の特徴についてはFactors associated with small-scale agricultural machinery adoption in Bangladesh: Census findings/著:Khondoker Abdul Mottaleb, Timothy J. Krupnik, Olaf Erenstein/ Journal of Rural Studies/ June 2016に詳しい10

零細農家が多いバングラデシュであるが、サービス・プロバイダーが提供するサービスによって、農業機械の利用率は高い。零細農家にとって、農村における人口の減少や人件費が高騰する中、機械で農作業を行う方が効率的で費用や時間を節約することになり、サービス・プロバイダーの役割は農村の貧困対策にもなると注目されている。


 農業機械市場のサプライチェーン 

7. バングラデシュの農業機械産業の抱える課題

バングラデシュの農業機械産業の抱える課題としては、以下の点がある。

  •  農業機械製造・修理にかかる技術者の技術・経験不足
  • 農業機械の技術者を育成する政府の政策が不足
  • 農業機械の品質に関する行政の監督がない(品質粗悪品が出回る)
  • バングラデシュの地質や気候にマッチした農業機械が少ない。
  • 農業機械による助成金頼りで販売が促進されており、サステナブルではない。
  • 農民の農業機械に関する知識の不足
8. 日本企業にとっての商機

バングラデシュにおける農業機械市場において、今後、以下の変化が予測され、日本企業にとってのビジネスチャンスが生じる可能性がある。

(1)農業機械の多様化

バングラデシュ農業の機械化は、灌漑用ポンプと2輪トラクターの普及によって始まっているが、今後、農作業における多様な分野において機械化が進展することが予想される。すでに、2輪トラクターを置き換える形で4輪トラクターが増加している。また、稲刈りや田植えのための農業機械も導入が始まっている。

また、政府は米を中心とした穀物に偏った農業を多様化することを重点施策に掲げており、今後、野菜栽培が増えて行くことが見込まれる。国内での食品加工業の発展や農作物の輸出を視野に、農業の近代化が一層求められるようになるなか、野菜栽培に適した農業機械にも、将来的に需要が増えてくるであろう。

(2)農業機械の電動化

バングラデシュの灌漑用ポンプは、ディーゼルを燃料にした小型エンジンが主流であるが、政府はディーゼルに対する巨額の助成金が負担になっており、ソーラー発電による電動エンジンに置き換える政策を推進している。

今後は、灌漑用ポンプだけでなく、多様な農業機械が電動化する可能性があり、すでに電動の農業機械の実験がインフラ開発公社(IDCOL)によって始まっている。

農民の燃料負担の軽減、地球温暖化対策などの観点から、農業機械の電動化は今後とも進展する可能性がある。

(3)品質の高い農業機械へのニーズ

現在、バングラデシュで流通している農業機械は、必ずしもバングラデシュの土壌に適したものではなく、品質も粗悪品が少ないという指摘がある。こうした中、品質の良い製品に対する需要も高まっており、日本製品に期待する声もある。

(4)国内製造業の発展

今後、バングラデシュの農業機械市場が拡大すると、農業機械の国内製造が発展していく可能性がある。すでに農業機械生産の特区やクラスターをつくる動きも出てきており、地場企業と組んで日本企業の技術を活かす場も増えてくる可能性がある。

以上


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