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産業レポート2015.02.01

成長する教育ビジネス!

地域:全国

テーマ:教育

カテゴリ:ライフスタイルの変化

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日本の1960年代に相似するバングラデシュの人口構造

ここに非常に興味深いグラフをご紹介したい。左側が1960年における日本の人口構成であり、右が2014年におけるバングラデシュのものである。一見して分かるように、瓜二つとも言っても良い典型的なピラミッド構造で、どちらも子供の人口が圧倒的に多い。日本の場合は団塊世代の子供達の数が抜きん出ているのが見える。

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日本では、この時代のピラミッドの底辺にいた子供達が学齢期から青年期へ成長する1960年代後半から1970年代までの期間は、多くの大学が設立され、教育産業が大きく発展した勃興期にあたる。この時期に大学数は1960年の245校から1970年の382校に増加し、大学生の数も626,421人から1,406,521人に倍増するのである。

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今、バングラデシュでは日本が1960年代後半から経験した教育産業の勃興に似た現象がおきている。バングラデシュでも大学が矢継ぎ早に設立され、大学生の数が急激に増えている。バングラデシュの大学は、1991年まで国立10校しか存在しなかったが、高まる高等教育の需要に応え、政府は1992年にPrivate University Act(私立大学法)を制定し、私立大学設立の法的枠組みを整備した。同年、North South Universityがバングラデシュにおける最初の私立大学として設立されると、それ以降大学数は急速に伸び始める。

2013年時点で私立大学は79校、2014年には新たに10校が政府の承認を得た。また、1991年には56,162人だった大学生徒数は2013年にはその14倍以上の812,202人に増加した。

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出生率の大幅な減少

「各家庭の子供の数は一人か二人が主流となりました。」

こう語ってくれたのは、バングラデシュの中高一貫教育を行う学校の先生だ。以前は、どの家族にも6人から7人程度の兄弟がいたが、ここに来て状況は大きく変化しているという

「育児にかかる家庭の負担が大きくなったことが要因の一つです。」

世界銀行が調査しているバングラデシュにおける出生率の推移表によると、過去30年の間に子供の出生率は大きく減少した。2014年現在の出生率は全国平均で2.2人、都市部に限ると1.7人と2人を切っているのである。バングラデシュのような途上国では、出生率が高いというイメージを持たれやすいが、バングラデシュに限っては20年以上も前の話で、現在では大きく様変わりしている。

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子供の出生率を押し下げた要因には、政府やNGOを通じた家族計画の啓蒙普及活動も挙げられよう。また、工業化が進展するに従い、労働人口の農村から都市部への大規模なシフトが進み、家族形態の核家族化への移行も大きく影響していると思われる。都市部では、女性の社会進出も進み、共働きの世帯が増え、家庭で育児をする余裕が少なくなっているともいう。

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このような出生率の減少は、育児の方法についても変化を促した。まず育児に関する支出が増えることになった。バングラデシュの教育に関する調査機関であるCAMPEが毎年発行するEducation Watchによれば、各家庭の初等教育への支出額は年間2,500タカ(約3,500円)から4,800タカ(約6,800円)と倍増し、中等教育では11,000タカ(約15,500円)から15,000タカ(約21,000円)へと増加している。これは農村部も含めた平均であり、都市部ではもっと高い支出となっている。少ない子供を大事に育てて、高等教育を受けさせたいという親の願いを反映させているのだろうか。

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日本での出生率と家庭の教育支出の推移も参考のために掲載する。日本でも出生率の低下と反比例して、家庭の教育支出が増えていった状況が分かる。

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高まる受験熱と塾の隆盛

こうした高等教育への指向が高まっているが、これを受け入れる大学側の受け入れ体制が整っていない。例えば、ダッカ大学で新設された学部では、50名の定員に対し、1400名の応募があった。実に28倍の競争率である。それでも、まだ大学への進学率は10人に一人に満たない。今後、ますます増えると予想される大学進学率に対して、大幅なキャパシティ・オーバーとなっているのが実情である。

日本でも1960年では10.3%に過ぎなかった大学進学率も、1970年には23.6%、1980年には37.4%まで上昇し、高等教育の大衆化が語られた(現在は50%前後を推移)。

こうした状況は、狭き門に入るための受験熱を高めるようになり、その結果、学生を支援するための学習塾が多く現れるようになった。バングラデシュでは、こうした受験専門の学習塾をCoaching Centerと呼んでいるが、2,000タカ(約2,800円)から5,000タカ(約7,000円)程度の月謝で受験に勝ち抜くためのサポートをしている。

高等教育指向の高まりは、中等教育へも影響を及ぼしている。いわゆる進学校への受験熱も激しい。ダッカにある有名な進学校では、600人の定員に対し16,000人が受験したという。この学校で学ぶために、片道3時間の道のりを毎日車で通っている生徒もいるほどである。

一方、広く教育産業という観点から見ると、まだまだ足りないものだらけである。学校の教具や教材、家庭学習用の参考書や問題集などは全く不十分で、学習塾も暗記中心が多く、一部を除いて質も低い。6千万人は超えるとされる15歳未満の子供達を対象としたビジネスが本当に花開くのはこれからである。

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