SDG2020.06.30
地域:ダッカ
分野:水
水はすべての生き物にとって主要なニーズの一つです。地球上のすべての生き物は、生きるために水を必要としており、水質汚染などの水問題は、それらにとって生命に関わる脅威となります。バングラデシュの持続可能な開発目標SDG6は、
の2点であり、SDG6では、「すべての人々の水と衛生の利用可能性と持続可能な管理を確保する」ことを目指しています。
シシルウォーター(Shishir water、以下シシル社)は、バングラデシュの低所得者層(Bottom of Pyramid: BOP)が安全な飲料水を手頃な価格で、 継続的に利用できるようにすることを目的としたソーシャルビジネスです。 同社の企業目標も、SDG6の目標と同様、「すべての人々の水と衛生の利用可能性と持続可能な管理を確保する」ことを目指しています。
シシル社は、自然や受益者に悪影響を与えないよう、環境に優しい方法で水を浄化しています。同社は、スウェーデンのウォータースプリントAB(Watersprint AB(https://www.watersprint.com))社と共同で、世界初のUV-LED技術を使用した地表水の浄化システムを利用しています。UV-LED技術は、紫外線を利用して細菌やバクテリアなどの微生物を殺菌する低コストな浄化システムであり、2014年にノーベル賞を受賞しています。同プロジェクトによって、バングラデシュの水危機や雇用の創出等の「課題」を起業家精神によって「機会」に変えることに貢献しています。
同社は、マイメンシン県で最初の操業を開始し、ブラマプトラ(Bramhaputra)川の汚染水を処理しました。当初の目標は、この水処理施設から1,600名にサービスを提供することでした。その後、同県内に別の拠点を設立し、今後も貧困層のコミュニティへのサービス提供のために、「小規模水処理施設(マイクロプロダクションセンター:MPC)」をバングラデシュ全土に広げることを目指しています。
シシル社の小規模水処理施設(MPC)は、貧困層のコミュニティ内に設置されており、そのコミュニティの多くが生活に必要な水資源の利用・アクセスに課題を抱えています。同社は、ヒ素で汚染された地下水を処理して提供するのではなく、汚染された地表水の浄化に焦点を当てており、同プロジェクトがコミュニティによって自律的に運営されることを理想としています。 |
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同社は、地元の若者が起業家としてMPCを運営し、飲料水を販売、利用するメリットを伝える、マイクロフランチャイズモデルを採用しています。地元の起業家は、グラミンテレコムトラスト(Grameen Telecom Trust)社のネットワークを利用して、4〜5名のスタッフで構成されています。雇用の創出のために、地元の若者をスタッフとして採用しており、彼らは水を販売する小さな販売店舗と水を輸送する配送ネットワークのマーケティングや運営を担当しています。
シシル社は、採用された起業家に対して、水事業の運営に関する技術や知識のトレーニングを実施し、持続可能なビジネスの構築に取り組み、資金回収後は、起業家にMPCを譲渡します。資金回収で得た資金は新しいMPC設置の初期投資費用として、別の場所に再投資しています。同社のビジネスモデルは、このように、各事業所が独立したビジネスとして自立し、運営社が十分な収入を得ることができる、持続可能なビジネスモデルとなっています。
同社の水処理施設の設置には、2万ドル(約218万円)の初期費用がかかります。各処理施設には、浄化ユニット、水冷機、フィルター、水ボトル、水質検査ユニット、河川からのパイプラインが装備されています。総投資額のうち、5,000ドル(約54万円)は起業家が出資し、残りの1万5,000ドル(約164万円)は、シシル社が投資しており、両者が所有権を持てるような価格設定となっています。 現在、同社には、20リットルの水ボトル製品のみが取り扱われており、商業施設等(病院、学校、銀行、その他の企業)に対して40セント(約40円)/20リットル、最貧困コミュニティやスラム街の居住者に対しては10セント(約10円)/20リットルで提供されています。
すべての人々の水と衛生の利用可能性と持続可能な管理を確保する」をモットーに、シシル社は、SDG6の目標達成に重点をおいています。 バングラデシュ政府が設定しているSDG6の優先目標は、国民の100%が安全に管理された飲料水にアクセスすることです。 しかし、貧困と未発達な給水ネットワーク(特に遠隔地)のために、安全な水にアクセスできていない国民も現段階では多くいます。 同社は、同国の水問題を対象に、政府が掲げるSDG6の目標達成を同社の目標と重ねながら、貧しい人々や恵まれない人々のための飲料水の提供に取り組んでいます。 また、対象コミュニティの若者にソーシャルビジネスを紹介することで、経済的自立を支援し、貧困の解決にも貢献しています。 同社は、従業員に十分な知識と技術を提供することに積極的に取り組んでおり、定期的なトレーニングプログラムを実施しています。