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HOMESDG長年抱える課題「水」

SDG2019.10.30

SDG-6安全な水とトイレを世界中に

【バングラデシュにおける持続可能な開発目標(SDG)】

地域: ダッカ

分野:

バングラデシュが長年抱える課題

生活に欠かせない「水」。

バングラデシュは、豊富な河川・雨季の降水等により十分な水量が確保できているにもかかわらず、皮肉なことにも安全な飲料水の確保に長年苦労してきています。

特に農村部における地下水の砒素汚染や、沿岸部の塩害(塩水遡上)は深刻です。

都市部においても給水管の欠陥等による水質汚染が問題視されており、未だに安全な水にアクセスできていない人々は2,100万人(全人口の13% 相当)もいると試算されています 。

振り返ると、2010年時点では2, 800万人が安全な飲用水源を利用できていないと言われていたため 、近年大きく改善はされているようですが、依然として深刻な問題と言えます。


国際連合が発表している下表からも、全人口の13%が安全な水にアクセスできていないという比率は、近隣の南アジア諸国(↓7ヵ国)の中でも最低レベルだということが分かります。

       全人口のうち、安全な水にアクセスできている人口の比率(南アジア7ヵ国)

Source- WHO/UNICEF joint monitoring program (JMP) for water supply and sanitation UNJMP 2017

このような現状を改善すべく、政府、国際機関等の公的機関やNGOのみならず、民間企業もビジネスを通じた課題解決に取り組んでおり、その一例を紹介したいと思います。

Drinkwell ~すべての人にきれいな飲料水を~

Drinkwellは、バングラデシュの各地(農村部・都市部)で飲料水ビジネスを展開しています。

農村部

Drinkwellは砒素除去に関する特許技術を有しています。

(※当該特許技術は、米国の私立大学Lehigh Universityの研究チーム「SenGupta Research Lab」が開発したもの) スタートアップ時期に、インドに砒素除去装置200基を持ち込んでパイロット事業を行い、数十万人に安全な水を提供するという成果を上げたことで注目が集まりました。その後、米国、インド、バングラデシュ政府や、ダノンなどの欧米系大企業から資金面等での支援を受けつつ、バングラデシュ含む数か国での事業展開に至っています。

現在、バングラデシュの農村部14拠点にDrinkwellの給水センターがあり、地域住民には、月額100タカ(130円程度)で一日当たり最大10ℓの飲料水を販売・提供しています。

(Drinkwell:農村部の給水センター)

都市部

ダッカ上下水道公社(Dhaka WASA)との協業により、都市部でも安全な水の提供に努めています。

Dhaka WASAから土地を借り、そこに独自の浄水装置を据え付けて地域住民に販売するための「給水センター(以下、ATM)」を設置しています。現在ダッカにおいて108箇所のATMが設置されており、貧困層の方々でも手が届く価格で提供されています。

  • 0.4タカ/ℓ・・ATMに水を受け取りに行った場合
  • 1.0タカ/ℓ・・ハウスデリバリー(ATMからの距離2km以内)
  • 2.0タカ/ℓ・・ハウスデリバリー(ATMからの距離2km以上)

ATM利用者に専用の決済カードを配布し、ATMや(バングラデシュで広く普及している)モバイルファイナンスでチャージして利用する仕組みを作り上げています。

(Drinkwell:都市部の給水センター)

Tetra ~自然の力で塩害対策~

Tetraはバングラデシュ工科大学(BUET)の学生が起業したスタートアップで、特に南部沿岸地域で塩害に苦しむ人々のために飲料水提供事業を始めようとしています。

Tetraの浄水装置は下記写真のようにピラミッド型。自然の力で水を熱して蒸発させ、ガラス面に付着した水滴を冷やして真水にする、蒸留手法を取り入れた仕組みを基礎としています。

(Satkhira郡でのパイロット事業)

Tetraの強みは、既存技術(ROフィルターによる浄水等)よりも大幅に安価な形で浄水できるということと、どこでも設置が可能ということです。

南部沿岸地域で給水サービスを行っている、とあるNGOに伺ったところ、既存技術による給水サービスだと(利用者である地域住民の)自宅から遠い場所まで水を受け取りに来てもらう必要があり、その点課題に感じているようです。

TetraのアイデアはUNDP(国連開発計画)主催のコンテスト「SDG6 - Safe Water Challenge」でも受賞されています。
まだ商業化には至っていませんが、現在、現地NGO等と協業しながら事業を少しずつ展開しているところです。

安全な飲料水が得られずに困っている地域/人々の多くは貧困層となります。
それゆえに、Drinkwellの例からも分かるように相当な低価格で販売しつつ、事業の継続性を確保する事業モデルを作り上げなければなりません。
貧困層の人々でも購入可能なサービスを提供し続けるということは容易ではありませんが、このような民間企業によるチャレンジが実を結び、一日でも早く、より多くの人々が安全な水にアクセスできることを切に願います。

(参考/引用)
  • i.WHO/UNICEF joint monitoring program (JMP) for water supply and sanitation UNJMP 2017
  • ii."UNFPA - United Nations Population Fund". Unfpa.org. Retrieved 23 June 2019.
  • iii.JETRO 水事情 BOP実態調査レポート 2013
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