四川大地震復興支援 こころのケア人材育成プロジェクト

Project for Capacity Development on Mental Health Services for Reconstruction Support of Sichuan Earthquake

終了案件

国名
中華人民共和国
事業
技術協力
課題
保健医療、社会保障
協力期間
2009年6月〜2014年5月

プロジェクト紹介

日本から国際緊急援助隊を派遣した、2008年5月12日の四川大地震。その後、インフラ整備などの復興事業が進んでいますが、いまだ多くの被災者が震災に関連する「こころの傷」を抱えています。アルコール依存やうつ、外傷後ストレス障害などが報告され、支援の充実が求められていました。支援者の不足、全体統制の欠如といった課題が深刻化しつつある中、日本は、被災地における精神保健・心理社会的支援に従事する人材の育成やモニタリング体制の確立を通し、地域に根ざした持続的な支援実施体制の整備に協力しました。

協力地域地図

四川大地震復興支援 こころのケア人材育成プロジェクトの協力地域の地図

事業評価

協力現場の写真

  • 2008年5月12日14時28分、マグニチュード8.0の大地震が四川を襲いました。死者数は8万人を超え、被災者数は4,600万人以上におよぶと言われています。日本はこの地震で中国政府にとって初めてとなる国際緊急援助隊を派遣しました。 

  • 700名近くの子どもが倒壊した校舎の生き埋めになったという北川第一中学校での救出現場。柱の間から子どもを救出しようとする隊員が「痛いね、ごめんね」と日本語で話しかけます。子どもに息はありません。それでも両親の気持ちになったかのように、最後まで声をかけ、真摯に救助活動に取り組む隊員の姿がそこにはありました。四川大地震では多くの子どもが犠牲になりました。また、家族や友人の喪失により多くの人がこころに深い傷を負いました。生活環境の変化や失業、身体的障害などにより、心理的に不安定な状況に陥る人も少なくありません。 

  • 震災から半年後、被災者のこころのケアに関する支援のあり方を検討するため、JICAは兵庫県の専門家を被災地に派遣し、調査を開始しました。調査メンバーはいずれも1995年に阪神淡路大震災を経験し、神戸の「こころの復興」に携わった精神科医師、臨床心理士、大学教授、スクールカウンセラー、学校教員など。仮設住宅を回り、被災者の生活や心理状態、こころのケアのサポート体制などを聞き取り、被災地の生のニーズを確認しました。 

  • 被災地現場は待ったなし。JICAが調査を行っている間にもトラウマに悩み、こころのケアを必要とする人々が沢山います。適切なケアがなければ自殺を考える人もいるかもしれない…人命に関わる状況でした。JICAでは、プロジェクトの形成と同時並行でセミナーを開催し、阪神淡路大震災後に実践されたこころのケア、日本の経験・知見をいち早く、四川の人々と共有しました。 

  • 2009年6月、中華全国婦女連合会とプロジェクト実施に関する正式合意文書の署名交換を行いました。地域に根ざした持続的なこころのケアの体制構築を目指し、人材育成や教材作成、モデルサイトでの実践などの活動が始まります。 

  • プロジェクトでは兵庫県の専門家を被災地に招聘し、年に2回、中核人材向けの研修を行っています。対象者は医師、心理士、学校教員、ソーシャルワーカーなど多職種。こころのケアは生活と密接に関わるテーマだけに、病院、学校、地域コミュニティなど、様々な場所で包括的にケアを受けられる体制を構築する必要があるのです。 

  • 講義に真剣に耳を傾ける研修受講者の様子。研修では受講者の主体的な参加も大切にしています。受講者がケース発表を行い、全員で適切な対応方法をディスカッションする事例研究の場も。肉親を失い、自分だけが助かったことへの罪悪感に悩む人、家屋の下敷きになり、両腕を切断した子ども、身寄りのない高齢者、たった一人の子どもを失った女性など、受講者から寄せられるケースは多種多様です。時に感極まって泣き出してしまう場面も。プロジェクトでは、ケアを提供する側(研修受講者)の心理的安定のため、セルフケアの手法も伝授しています。 

  • 学校教員向けの研修の様子。教師が学級でできるこころのケアとして、ゲームを取り入れた手法を紹介しています。先頭に立って教えるのは兵庫県の現職の小学校教員。特にこの先生による「いのちの授業」(子ども達に命の大切さを教える心理健康教育)は受講者からも好評を博しています。阪神淡路大震災後の自身の経験を基に、子ども達の異変やこころの変化をいかに察知し、どのように接するべきかを伝授します。プロジェクトは「兵庫」と「四川」という2つの被災地を結んでいます。(写真2の北川第一中学校の教師も参加しています) 

  • プロジェクトの研修に継続して参加している、小学校教員・羊林さん(写真左上)による心理健康教育の授業の様子です。研修で学んだことを活かし、ゲーム、グループワーク、作文、歌などを取り入れ、とても活気ある授業を実践しています。「今後も日中双方で手を取り合って、子ども達へのこころのケアを考え、学習していきたい」とは羊林先生の声。 

  • 中国における精神保健・心理社会的支援はまだ歴史が浅く、四川大地震を契機として注目されるようになってきました。そのような中、プロジェクトでは教育、医療、心理、地域社会と多くの分野、行政にまたがる関係者を巻き込んでいます。今後、被災者を中心に据え、職種間で連携してこころのケアを提供していくための横断的な体制づくりや、中核人材のレベルアップに注力し、被災者が安心・信頼してこころのケアを受けられるような社会を形成していきます。 

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