都市の排水(写真左側からの黒い流れ)がそのまま用水路に混合されて灌漑に再利用されている。農地への影響も懸念されており、水質汚染対策として都市部の下水道整備が急がれている。
農村では生活排水が直接水路に流れ込んでいる箇所が多い。また路肩に積まれた牛糞やワラなどの農業廃棄物は水路に崩れ落ちている。小規模だが広範囲にわたる汚染源への対策の必要性が感じられる。
ごみを回収して焼却または埋め立て処理する行政サービスは、農村まではなかなか行き届かない。水路へのごみ投棄を抑制する環境啓発活動やコミュニティレベルでのゴミ回収システムの確立が課題となっている。
実際に稼動している小規模な農村集落排水処理施設を訪問し、機器の構成や運転状況を調査する。なかには運転されていない施設も少なくなく、利用者組織の設立と運営が施設継続利用の鍵となっている。
デルタ地区内では、大型の排水機場から可搬式のエンジンポンプまで様々な規模のポンプが利用されている。降雨が少なく灌漑水源はナイル川に限られており、排水再利用は重要な取り組みとして位置づけられる。
デルタ地区では5月から9月ごろにかけて夏期の稲作が広く行われている。田植えの時期に用水路に水が十分に届かなかったり、水路の水質が悪いと通常の収穫は望めず、その期の耕作を諦める農家もある。
灌漑用水および排水路から採水して水質を分析し、汚濁の状況を把握して可能な対策を検討する。人口が増加し生活レベルが向上する中、定期的な水質のモニタリングと汚染対策の長期継続が環境保全につながる。
農作業の担い手でもある女性グループに対してアラビア語の通訳を介して聞き取りを行う。水資源灌漑省でも女性の技師が活躍している。
農家を訪問する各戸調査により、用水に対する需要や営農に関する考えを聞いていく。農村では農業で生計を立てている世帯が大半であり、天水がない中で灌漑用水が得られるかどうかは死活問題である。
農家の食卓には、冬作の小麦を焼いたパンや米飯、季節の野菜、豆類が並ぶ。デルタ地区では年間を通じて作付けが行われており、この豊穣な農産地において灌漑水の確保と水質保全は大きな課題である。