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2024年度前半の事業進捗状況

今回は2024年度前半の事業進捗状況をご紹介します。前回のニュースから少し間隔が空いてしまいましたが、チーフアドバイザーの交代と短期専門家の受入れ、そのご指導による研究成果を紹介いたします。

1.プロジェクトアドバイザーの交代

本プロジェクトのチーフアドバイザーの杉本千尋先生は2021年4月6日にモンゴル生命科学大学獣医学部のオフィスに着任し、2024年4月5日に帰国しました。後任として4月12日に髙井伸二先生(北里大学名誉教授)が着任し、半年が経過しました。髙井チーフは2004年7月に、文科省科学研究費補助金海外学術調査で、モンゴル・ウランバートル周辺での馬の感染症に関する調査を実施しました。これはState Central Veterinary LaboratoryのRuuragch Sodnomdarjaa 所長、Sugar Sengee先生、モンゴル生命科学大学獣医学部長のErdene Ochir先生との共同研究で、Erdene Ochir先生は本プロジェクトのカウンターパートでもあります(写真1)。

2.短期専門家の教育研究指導

日本からの短期専門家を5月から9月末までに8名招聘しました。蒔田先生(酪農学園大学教授:疫学)、池中先生(北海道大学教授:毒性学)、本平先生(北海道大学助教:毒性学)、佐藤先生(北海道大学・准教授:動物衛生学)、田上先生(帯広畜産大学客員教授:馬医学)、梅村先生(北海道大学名誉教授:獣医病理学)、迫田先生(北海道大学教授:獣医微生物学)、木村先生(北海道大学教授:獣医病理学)です。それぞれの専門分野において。カウンターパートの研究室の教育・研究の指導と講義実習のサポート、動物病院における診断治療技術指導を頂きました。また、10月以降に日本で実施される短期研修派遣者の受け入れ先となる先生には、日本での研修内容を候補者と面接し確認して頂きました。2024年度のカウンターパートへの研究指導の成果として、以下の4つの論文が公表されました。更に、9月末に採択された論文があります。

3.モンゴルで実施された研究成果の公表

これらの論文はカウンターパートである獣医学部(SVM)、獣医学研究所(IVM)、ウランバートル獣医局(UVO)の教員・研究者が筆頭著者或いは責任著者となり、これまでの短期専門家による共同研究の指導・支援のもとに培われた研究方法の理論的知識、情報検索能力、分析力等の集大成となっています。以下はそれぞれの研究成果を要約した論文解説ですが、詳細は論文(リンク先)を参照して下さい。

1)Enkhbaatar Batmagnai, Bat-Erdene Chimedregzen, Khurelbaatar Nyamdavaa, Buyankhuu Osorjin, Boldbaatar Bazartseren, Ser-Od Khuyagaa, Sarangoo Ganbold, Erdenechimeg Dashzevge, Odbileg Raadan, Odonchimeg Myagmarsuren, Tseden-Ish Manaljav, Damdinbazar Otgonbayar, Tsetsegdolgor Damchaaperenlei, Enkhmandakh Yondonjamts, Munkhtsetseg Ariunbold, and Bira Tsatsralt-Od. (2024) Prevalence and risk factors of Hepatitis E virus infection among Bactrian camel herders in Bayankhongor province, Mongolia. Int. J. One Health, 10(2): 172-177.
https://doi.org/10.14202/ijoh.2024.172-177
論文解説:E型肝炎ウイルス(HEV)は急性肝炎を引き起こす病原体で、モンゴルにおける畜産物を介したヒトへの経口感染については不明です。この研究では、ラクダ乳のヨーグルト(khoormog)の摂取の有無とHEV感染の関連性を調べるためにバヤンホンゴル県内のヒト血清を採取し、HEV G8抗原に対する抗体価測定を実施しました。その結果、ラクダ乳(khoormog)の摂取とE型肝炎ウイルスの感染の間に関連性が示唆されました

2)Erdenebat Bulgan, Zolzaya Byambajav, Narantuya Ayushjav, Yuji Hirai, Misaki Tanaka, Nyam-Osor Purevdorj, Sandagdorj Badrakh, Akio Suzuki, Yusuke Komatsu, Toyotaka Sato, Motohiro Horiuchi. (2024) Characterization of Shiga Toxin-producing Escherichia coli Isolated from Cattle Around Ulaanbaatar City, Mongolia. Journal of Food Protection, 87:7,2024, 100294,ISSN
https://doi.org/10.1016/j.jfp.2024.100294
論文解説:志賀毒素産生大腸菌(腸管出血性大腸菌:STEC)はヒトに出血性大腸炎や溶血性尿毒症症候群等の重篤な感染症を引き起こし、反芻動物はSTECの保菌動物として知られいます。モンゴルでは500万頭以上の牛と2,500万頭以上の羊が飼育されていますが、これら反芻動物由来のSTECの調査は、これまでありませんでした。本研究ではウランバートル市近郊の30農場から牛直腸スワブ350検体を採取し、21農場からSTEC 45菌株を分離しました。これは、モンゴルにおける牛の腸管出血性大腸菌に関する初めての報告であり、畜産食品における腸管出血性大腸菌汚染の可能性を示した論文となりました。

3)Nergui Davaasuren, Vahid Molaee, Tseren-Ochir Erdene-Ochir, Guugandaa Nyamdavaa, Sumiya Ganzorig, Maurizio Mazzei, Yoshihiro Sakoda, Gesine Lühken & Sharav Tumenjargal (2024) Phylogenetic analysis of small ruminant lentiviruses in Mongoliansheep supports an ancient east‑west split for the genotype A. Vet Res Commun. 2024 Jun;48(3):1955-1962.
https://doi.org/10.1007/s11259-024-10361-9
論文解説:マエディ・ビスナ・ウイルスは羊と山羊の感染症で、遅発性の進行性肺炎と慢性脳脊髄炎を引き起こします。モンゴルでの本症の存在は血清学的に知られていましたが、ウイルスの遺伝子型は不明でした。本論文ではモンゴル国内6県の羊血液329検体から抗体価とウイルス遺伝子検索を行い、ウイルスの塩基配列が、これまでレバノン、ヨルダン、イランを含む肥沃な三日月地帯でのみ発見されていた亜種A22に分類されました。系統発生学解析により遺伝子型Aは羊が家畜化された古代の肥沃な三日月地帯に起源を持つ2つの祖先があり、最初の祖先は西へ広がり、2番目の祖先は東へ広がり、最終的にモンゴルに到達したことが示唆されました。

4)Ariunbold Munkhtsetseg, Enkhbaatar Batmagnai, Myagmarsuren Odonchimeg, Gombodash Ganbat, Yondonjamts Enkhmandakh, Gantulga Ariunbold, Tsedenbal Dolgorsuren, Raadan Odbileg, Purevtseren Dulam, Bumduuren Tuvshintulga, Chihiro Sugimoto, Yoshihiro Sakoda, Junya Yamagishi, Dashzevge Erdenechimeg, (2024) Genome sequencing of canine distemper virus isolates from unvaccinated dogs in Mongolia. Veterinary J., 308:2024,106231, ISSN 1090-0233,
https://doi.org/10.1016/j.tvjl.2024.106231
論文解説:犬ジステンパーウイルス(CDV)は、犬や野生動物(ユキヒョウ等)に重篤な、しばしば致死的な犬ジステンパーを引き起こします。これまでの研究では、異なる地域から分離されたウイルス間での遺伝的多様性(変異性)がワクチンの効かない原因と示唆されています。モンゴルの犬3頭から3種類のCDVを分離しゲノム配列決定したところ、アジア-1系統、アジア-4系統および非組み換えCDVに型別され、モンゴル国内のCDVの遺伝的多様性が初めて示されました。

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写真1.Erdene Ochir学部長(左から3番目)、杉本前チーフアドバイザー(中央)、髙井チーフアドバイザー(右)

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写真2. 短期専門家・蒔田先生とGAVSの疫学担当者との打ち合わせ