USPへの調査船供与式開催
2024年8月30日に南太平洋大学(USP: University of South Pacific)において、本プロジェクトで調達した調査船の供与式を開催しました。
本調査船は、フィジー水産省とUSP間で締結されたMOUの下、本プロジェクトの協力機関であるUSPの農業・地理・環境・海洋・自然科学学部(SAGEONS:School of Agriculture, Geography, Environment, Ocean and Natural Sciences)へ供与されます。式典は、学内の港内で催され、USPからはProfessor. Gurmeet Singh副学長が出席。Singh副学長は祝辞の中で、「この調査船がJICA、ひいては日本とUSPの国際協力の新たなマイルストーンとなり、今後本学における研究と実習に活用される」と述べられました。供与式では、フィジーの伝統的な作法に則り、チャプレン(牧師)による祝福の下、副学長とJICAフィジー事務所若杉所長によるリボンカットが行われました。また、フィジーの伝統では贈り物には布を巻き、その布は関係者(船長・船員)がもらうという伝統があります。今回の式典でも、20mの布が用意され、船体全体に巻き付けてデコレーションが行われました。USPは船を非常に強く待ち望んでおり、副学長の熱意のこもったスピーチからもそれが感じられました。
JICAからはフィジー事務所の若杉所長が出席。若杉所長は式辞の中で、「本プロジェクトではUSPと共同開発したカリキュラムの下、USPおよび元USPの講師と協力して研修を実施し、ここまで素晴らしい成果を見せている。Japan Timesの7月の第10回太平洋・島サミット(PALM10)特集号でもプロジェクトの活動が取り上げられた(記事参照)。こうして順調に来ているのは皆様の多大な貢献のおかげである」と謝意を述べられたあと、「JICAとUSPの協力の歴史は古く、主に水産とICT分野で協力を行ってきた。1996年の無償資金協力による海洋研究施設の建設、2009年のJAPAN-ICTセンターの設立に始まり、水産分野の専門家派遣、また、水産、統計、畜産、日本語教育など様々な分野で、他国のサテライトキャンパス含めこれまでに30名以上のJICAボランティアがUSPに派遣されている。また、多くのUSP卒業生がJICAの長期研修制度を活用して日本に留学し、修士号、博士号を取得している。」と、JICAとUSPの密な協力を紹介しました。その上で、「この調査船が、海洋資源の持続可能な管理と保全に大きく貢献し、JICAとUSPの協力のシンボルとして、大洋州島嶼国全体の更なる協力関係の構築と発展に寄与すると信じている」と、期待を述べられました。
この調査船供与は本プロジェクトの開始当初から計画されていましたが、新型コロナウイルスのパンデミックの影響もあり、ようやく供与する運びとなりました。船底塗料にはフィジーの国旗に使われているライトブルー(通称Fijian Blue)が用いられ、フィジーとの友好を表現しています。
船名は「VARIVOCE USP-JICA」です。VARIVOCE(バリボゼ)とはフィジー語でメガネモチノウオ、通称ナポレオンフィッシュの事です。この名前はプロジェクトとUSPのスタッフの方たちと協議の末、命名しました。ナポレオンフィッシュは日本では水族館で見られますが、フィジーでもダイビングなどで一般的に見られる魚です。2012年から2017年までフィジーの50セントコインの図柄に使用され、今でも流通しています。大きさは2m以上にもなり、食用としても利用されていた過去があります。しかし、乱獲の憂き目にあい、2004年からワシントン条約(絶滅のおそれのある野生動植物の種の国際取引に関する条約, CITES)では絶滅危惧種として指定されています。現在でも、フィジーではナマコ同様、違法に漁獲・取引されている実態があり、水産省で違法漁業の取締まりを厳しく実施しており、本プロジェクトにおいても、違法漁業への対策として好漁場であるキア島におけるIUU漁業監視プロジェクトを実施しています。
まさに本プロジェクトの活動と、JICAとUSPの協力、そして日本とフィジーの友好にふさわしい船名だと自負しています。
本プロジェクトでも、フィジー水産省への能力向上研修、沿岸漁業資源量調査や離島の水産資源管理計画策定などの用途で、この調査船を実施する予定です。これからもフィジーでナポレオンフィッシュが見られる美しい海の保全に協力していきます。
VARIVOCE USP-JICA号
VARIVOCE(ナポレオンフィッシュ)がデザインされたフィジーで流通している50セント硬貨
引渡書に署名
若杉所長のスピーチ
供与式にて祝辞を述べるSingh副学長
船内にSingh副学長と若杉所長でJICAステッカーを添付(写真右:Surendra Prasad学部長)
グループ写真