全国で600万頭以上の家畜が犠牲になった

2024年4月~5月にかけて、遊牧の際に遊牧民の方に注目されている植物(牧草)や家畜動物の状況を調査するために、Batkhuu教授やNurbyek研究員、Gankhuyag運転手とともにモンゴル西部にあるウブス県、バヤンウルギー県、ホブド県にそれぞれ訪問しました。その時に各所で聞かれた悲痛な声。
「あらかじめ避難し対策を立てたが、数百頭の家畜を失った。」
「800頭いた家畜のうち今春生き残ったのは300頭。そのうちから20頭の子どもしか産まれず、残りは流産だった。」

振り返ると、2024年2月には、当プロジェクト業務調整員よりモンゴル国の状況について速報が入っていました。
「昨年に引き続き、今年も酷いゾド(極端な寒さや積雪により遊牧に甚大な被害が及んでいること)に襲われている。数十万単位の家畜が倒れ、そして遊牧民で犠牲になった方もいるようだ。」

私自身、雪が深く積もり、吹雪で前が見えない様子を動画で見て、また現地の被害情報が入るたびに、歯がゆい思いがありました。。
「遊牧に関連して草地回復と家畜健康保全を目指す当プロジェクト。過放牧や気候変動による極端な冬の厳しさに対して、いったいどのような活動により貢献ができるであろうか?」

冒頭で挙げた今春の調査では、この冬の厳しさの爪痕を目の当たりにした。一方で、今年はシャル・トス(Shar tos:春先に降る、植物を芽吹かせる恵みの雨や雪のこと)に恵まれる地域が多く、生き残った家畜たちが早春の緑を食し、回復している様子を観察できたことに少し勇気づけられました。
現地の方々に「その花を食べた家畜は元気になり、そしてその家畜の肉を食べたヒトもその一年健康に過ごせる。」と言われているヤルホイ (Yargui:オキナグサ属植物) も、今年は場所によりとても豊富で、夕日を乱反射して一面に輝く様子は幻想的で素晴らしかったです。

調査の後も、今回得られた成果を軸に同行者と協議を重ねました。
家畜の健康にとって有益な、あるいは悪影響を及ぼす植物(牧草)を対象として、少しでも安定した豊かな遊牧の実現に寄与できるような研究を、地道に重ねようと心に刻んでいます。

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早春の雪の中、植物を探す馬

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馬と牧草の調査の途中

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紫ヤルホイの花

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遊牧民の方に持ってきていただいた毒草

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ヨモギを食べるヤギ

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ヨモギを食べるラクダ

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モンゴル国立大学ホブド校の皆さんと

東北医科薬科大学 村田敏拓(准教授)