モザンビークの復興関係者が日本の研修に参加-第1回本邦研修開催-

復旧・復興や防災活動の成功イメージを共有し、具体的なアクションプランを検討

2019年11月の本邦招聘、2019年12月の合同会議(Joint Meeting)等を通して、ベイラ市やサイクロン・イダイ復興局(GREPOC)、国家災害対策院(INGC)などの主要カウンターパートは、ハザード分析に基づく適切な復興計画作成について理解を深めています。

今後、ベイラ市で復興行動計画(アクションプラン)の作成を支援する予定です。そのためには、より具体的な復興の成功イメージや、モザンビーク(特にベイラ市)に適応可能なモデルの具体的な案を共有することが重要です。

そこで、第1回本邦研修では、研修参加者が実務に活かせる具体的な復興や防災活動のイメージを持つことを目的に、日本の復興計画策定、復興計画の検討プロセス、防災活動について学ぶプログラムを組みました。研修参加者はベイラ市およびベイラ市と協働して活動を実施する中央政府機関の出先機関の実務者等で、2020年2月17日から2月28日まで実施しました。

研修では、下記の視察先を訪問しました。主な視察先ごとに研修の様子について、4回シリーズでお伝えします。

主要な視察先

・茨城県常総市、神栖市
・宮城県仙台市、石巻市、名取市、塩竃市、松島町、南三陸町
・東京都江戸川区、葛飾区

研修生の紹介

今回の研修では、モザンビークより10人の研修生が来日しました。

img

・ドミンゴス:公私ともに皆を率いる、頼れるリーダー。
・サムエル:防災担当。サイクロン・イダイ一周年祈念イベント企画リーダー。
・ムパンゴ:都市開発担当。ドローンなど最新技術に興味あり。
・ジョゼ:地域コミュニティのリーダー。初めての日本食を堪能。
・スト:現場復興担当者。理論派。
・ルイーザ:生業回復担当。講師の方に常に感謝の言葉を忘れない。
・アルベルト:インフラ整備担当。日本の堤防などの防災インフラに興味津々。
・アブドゥル:GISのエキスパート。質疑応答ではいつも真っ先に質問をする。
・アナ:コミュニティ防災担当者。今回の研修で、初めて温泉を体験。
・セルジオ:ベイラ市以外の被災地から参加。災害復興に非常に熱い思いを持っている。

日本の災害対策の仕組みを理解

日本の行政の仕組みの理解(2月17日)

研修初日は、今後の研修での理解を深めてもらうために、日本の行政の仕組みや地域コミュニティ活動の状況について学びました。野毛坂グローカル(任意団体)の奥井利幸氏と横浜市羽沢西部自治会の米岡美枝子氏から、横浜市羽沢西部自治会における自主的な防災活動についてご紹介いただきました。モザンビークで災害対応を担う国家災害対策院より研修に参加したアナさんからは、「自治会や消防団の活動資金、食料の備蓄はどうしているのか?」や、「防災に取組むメンバー向けの研修はあるのか?」などの質問がありました。日本ではボランティアな活動も多いことを知り、研修生はできることを各人・各町内会で考えて実施する、「自助」・「共助」の考え方を学びました。

常総市への訪問(2月18日)

2015年の関東・東北豪雨の被災後の防災活動について理解を深めるため、茨城県常総市を訪問しました。午前中には常総市役所を訪問し、市役所における災害対応に係る体制構築のポイントや市民の防災意識を高めることの難しさについて説明いただきました。

常総市では、写真のように気象に係る情報を集約したモニターを活用し、毎朝市職員の方が当番制でその日の気象についてプレゼンを行うことで、災害や気象に関する知識向上を図り災害時の市役所の体制強化を図るというユニークな活動に地道に取り組んでいます。この活動にはベイラ市役所の方も、現地での活動にすぐに取り入れられるのでは、と感じたようで興味津々に説明を聞いていました。

午後には、下館河川事務所と常総市根新田地区の根新田町内会に講演いただき、特に2015年の関東・東北豪雨以降に推進されている「マイ・タイムライン」を中心に、住民による防災活動の取り組み状況と工夫について学びました。講演では、小中学生向けの「マイ・タイムライン」作成ツールである「逃げキッド」を紹介したのですが、サイクロン・イダイ後にモザンビークで復興事業のとりまとめを担う復興庁から参加したストさんは、「「逃げキッド」の英語版は無いのか?」と質問するなど、学んだ内容を今後の活動に活かしたいとの熱意を感じました。

米岡氏による自治会での地域の防災マップ作成等の地元住民が主体となった活動紹介の様子。

米岡氏による自治会での地域の防災マップ作成等の地元住民が主体となった活動紹介の様子。

常総市役所の溝上博危機管理監による常総市職員の気象等に関する知識向上に向けた取り組みについての説明の様子。

常総市役所の溝上博危機管理監による常総市職員の気象等に関する知識向上に向けた取り組みについての説明の様子。

下館河川事務所の永井一郎課長よる鬼怒川における河川整備やマイ・タイムライン推進に向けた取り組み状況に関する説明の様子。

下館河川事務所の永井一郎課長よる鬼怒川における河川整備やマイ・タイムライン推進に向けた取り組み状況に関する説明の様子。

根新田町内会の須賀英雄事務局長よる町内会での取り組み(「無事ですタオル」を活用した安否確認の効率化の取組み)についての紹介の様子。

根新田町内会の須賀英雄事務局長よる町内会での取り組み(「無事ですタオル」を活用した安否確認の効率化の取組み)についての紹介の様子。

日本における災害対策の理解(2月19日)

午前中は内閣府(防災担当)石垣和子企画官より災害対策基本法や防災計画体系など日本の防災政策の全体像に関して講義いただきました。午後は国土交通省水管理・国土保全局河川計画課村瀬勝彦国際室長により洪水、内水氾濫、高潮に対する災害対策を中心に日本の取り組み状況に関して講義いただきました。

内閣府(防災担当)への訪問は、防災技術の海外展開に向けた官民連絡会(JIPAD)の枠組に基づき「日・モザンビーク官民防災セミナー」として実施され、冒頭には内閣府(防災担当)の青柳一郎政策統括官よりご挨拶をいただき開始されました。セミナーでは民間企業3社により防災関連技術に関する発表を行い、合計11の企業がセミナーに参加しました。

モザンビークで災害時の緊急対応を担う国家緊急対応センターのアブドゥルさんは30分近く日本の防災対策の仕組みについて質問するなど研修生の関心は高く、最終的にセミナーは1時間延長して幕を閉じました。日本での防災の取り組みを聞き、モザンビークでの災害対策の不足を実感するとともに、モザンビークが実施している災害対策の方向性は間違っていないと確認できたようで、活動を少しずつ進めてゆけば良いと自信を持ったように見えました。

「日・モザンビーク官民防災セミナー」中の石垣企画官によるご講演の様子。

「日・モザンビーク官民防災セミナー」中の石垣企画官によるご講演の様子。

国土交通省村瀬国際室長によるご講演終了後の研修生との集合写真。

国土交通省村瀬国際室長によるご講演終了後の研修生との集合写真。

今回のハイライト

常総市鬼怒川の堤防に建立された決壊の碑での記念撮影。この祈念碑の印象が強かったようで、帰国後2週間でなんとベイラ市にもさっそく祈念碑を作ってしまいます(詳細は後日談で)。

常総市鬼怒川の堤防に建立された決壊の碑での記念撮影。この祈念碑の印象が強かったようで、帰国後2週間でなんとベイラ市にもさっそく祈念碑を作ってしまいます(詳細は後日談で)。

根新田町内会の公民館の前での記念撮影。町内会の事務局長の須賀さんはお人柄が素敵な方で、「世界はひとつ、お互いに頑張りましょう!」と別れ際にご挨拶され、研修生と「今度はモザンビークで会おう!」と誓い合いました。

根新田町内会の公民館の前での記念撮影。町内会の事務局長の須賀さんはお人柄が素敵な方で、「世界はひとつ、お互いに頑張りましょう!」と別れ際にご挨拶され、研修生と「今度はモザンビークで会おう!」と誓い合いました。