第1回本邦研修-日本の災害対策の現場を視察、そして研修後の活動に向けた決意を新たに-

日本において洪水や高潮、海岸浸食などの様々な災害に対して、どのような対策を行っているかを学ぶため、25日から27日にかけて、茨城県神栖市や鹿島海岸、東京都の葛飾区、江戸川区を訪れました。研修の最終日の28日には研修生から日本から戻った後のアクションプランが発表されました。

茨城県での沿岸部における災害対策と海岸保全の取り組み(2月25日)

茨城県では、茨城県土木部河川課の菊地正悟係長より鹿島灘海岸における海岸保全の取り組みについて紹介いただいた後に、海岸保全施設(ヘッドランド工法)の整備状況や、粗粒材を用いた養浜に関する取り組み状況の視察を行いました。ベイラ市でも海岸浸食が課題となっており、研修参加者は興味深く施設の整備状況を確認していました。

午後には、茨城県神栖市生活環境部防災安全課の安井貴弘課長補佐より、地域の防災拠点として整備された神栖市波崎総合支所・防災センターの施設を紹介いただきました。ベイラ市においても避難所の運営や必要な設備に関する検討が行われており、研修生は関心高く施設の整備状況について確認していました。

海岸保全施設等の現場視察の様子。写真手前の黒い砂が養浜のための散布された粗粒材。奥に見える施設が海岸保全施設(ヘッドランド工法)。

海岸保全施設等の現場視察の様子。写真手前の黒い砂が養浜のための散布された粗粒材。奥に見える施設が海岸保全施設(ヘッドランド工法)。

神栖市波崎総合支所・防災センターの敷地内に設置されたマンホールトイレな中の様子を興味津々にのぞき込むジョセさん。

神栖市波崎総合支所・防災センターの敷地内に設置されたマンホールトイレな中の様子を興味津々にのぞき込むジョセさん。

葛飾区における産官学が連携した防災活動の推進(2月26日午前)

葛飾区において、住民主体の防災活動の推進に取り組む関係者が集まった知見共有のためのセミナーを実施しました。東京大学大学院生産技術研究所の加藤孝明教授をはじめ、葛飾区で活動を実施するNPOであるア!安全・快適街づくりや葛飾区新小岩七丁目町内会の関係者による講演を実施しました。

セミナーでは、葛飾区における取り組みの状況を理解するとともに、研修生にはマイ・タイムラインの作成手引きに沿って各自で必要な行動を書き込むなど、実際に手を動かすことでコミュニティにおける防災活動の進め方について理解を深めました。

「モザンビークでは大学と民間セクターが連携して防災活動を行っている事例は少なく、モザンビークでの今後の防災活動の展開にとって参考となる」や、「実際に手を動かしてマイ・タイムラインを作成するには有意義だった」と、研修生もセミナーの内容におおいに満足したようでした。

江戸川区における治水対策の歴史(2月26日午後)

江戸川区は高潮や洪水リスクが高く、様々な治水対策を行ってきた歴史があります。本研修では、江戸川区の治水インフラ等の整備に関ったリバーフロント研究所の土屋信行氏に同行いただき、江戸川区内の関連施設を視察しながら、治水対策の経緯と歴史についての説明を行っていただきました。例えば、江戸川区では想定する台風の規模の変化や地盤沈下などの課題に対応するため、海岸堤防の嵩上げを行ってきており、その名残を残す旧葛西海岸堤防などを視察して、インフラ整備の経緯について学びました。日本の洪水との長い戦いの痕跡を見て、研修生は感心していました。

葛飾区におけるセミナー後の参加者による集合写真。NPOの方、町内会の方がボランティアで熱意をもって活動に取り組まれている様子に研修生はとても感心していました。

葛飾区におけるセミナー後の参加者による集合写真。NPOの方、町内会の方がボランティアで熱意をもって活動に取り組まれている様子に研修生はとても感心していました。

平井駅前の広場に設置された水位標(写真右端)で、海抜ゼロメートル地帯の広がる江戸川区の特徴と、地域の抱える災害リスクについて説明するリバーフロント研究所の土屋氏(右)。足元に濃い青でAP±0mと書かれたところが海面の高さです。

平井駅前の広場に設置された水位標(写真右端)で、海抜ゼロメートル地帯の広がる江戸川区の特徴と、地域の抱える災害リスクについて説明するリバーフロント研究所の土屋氏(右)。足元に濃い青でAP±0mと書かれたところが海面の高さです。

台風(及びサイクロン)による強風への対策(2月27日)

東京大学大学院新領域創成科学研究科の清家剛教授より日本の建築基準に係る経緯や、強風への対策に関してご講演いただきました。サイクロン・イダイでは強風による建物への被害が甚大であったため、研修参加者からは「日本における建築基準を参考にして建築に関する基準をモザンビークでも検討したい」との発言があるなど、高い関心が寄せられました。建築基準の検討は研修生の今後のアクションプランにも上がりました。

研修生によるアクションプランの発表(2月28日)

研修最終日には、研修生によるアクションプランの発表を行った後に、研修に関する評価会を実施し、研修生に対して修了証の授与を行いました。アクションプランの発表では、研修中に学んだ内容をもとに、今後モザンビークで実施する具体的なアクションプランが示され、今後本業務による活動との連携を緊密に行い、モザンビークおよびベイラ市での活動を推進して行くことを約束しました。

清家剛教授による講演の様子。

清家剛教授による講演の様子。

研修参加者によるアクションプランの発表の様子。

研修参加者によるアクションプランの発表の様子。

研修の評価会での意見交換の様子。

研修の評価会での意見交換の様子。

今回のハイライト

海の見える展望台から海岸保全のための施設を見学しました。望遠鏡に興味津々で、童心に帰り楽しんでいました。ベイラ市は海沿いの街で、みなさん海を眺めるのが大好きです。海の近くに来て子供のようにはしゃいでいました。

海の見える展望台から海岸保全のための施設を見学しました。望遠鏡に興味津々で、童心に帰り楽しんでいました。ベイラ市は海沿いの街で、みなさん海を眺めるのが大好きです。海の近くに来て子供のようにはしゃいでいました。

葛飾区でのセミナー中にマイ・タイムラインの手引きを使って自分の災害時の行動を考えて書き込むセルジオさん。ワークショップ形式も取り入れて楽しくマイ・タイムラインについて学んでもらいました。

葛飾区でのセミナー中にマイ・タイムラインの手引きを使って自分の災害時の行動を考えて書き込むセルジオさん。ワークショップ形式も取り入れて楽しくマイ・タイムラインについて学んでもらいました。

研修修了証を手にしての集合写真。研修を無事に終えて“Parabéns!!(ポルトガル語でおめでとうの意味)”と互いをたたえ合う研修生たち。

研修修了証を手にしての集合写真。研修を無事に終えて“Parabéns!!(ポルトガル語でおめでとうの意味)”と互いをたたえ合う研修生たち。

後日談:サイクロン・イダイ一周年祈念イベントにて

研修で学んだ「災害を次世代へ伝える」こと。研修生は、研修中の復興祈念公園で見た祈念碑を参考に、ベイラ市内に祈念碑を建て、3月9日から14日のサイクロン・イダイ一周年祈念イベントの際に公表しました。

サイクロン・イダイ祈念碑。ベイラ市役所からの研修生が、帰国後2週間ほどで完成させました!

サイクロン・イダイ祈念碑。ベイラ市役所からの研修生が、帰国後2週間ほどで完成させました!

市長(真ん中)と共に、祈念碑前で写真撮影をする研修生たち。

市長(真ん中)と共に、祈念碑前で写真撮影をする研修生たち。