学びの改善に何が効果的かをアクションリサーチで調査

本記事では6月から10月にかけて行ったアクションリサーチについて紹介します。アクションリサーチとは生徒や教員に働きかけて仮説検証を繰り返し、その結果を分析する研究手法です。プロジェクトでは、2種類の取り組み方法を同時並行で展開しました。

まず、教室での学びの改善にどのような教授法が効果的であるかを調査し教師用指導書改訂などに反映させるために行った「取り組み1」です。カウンターパートである教育省の技官に加えて調査対象の教員自身も共同研究者となり、主要課題の一つを「いかに多くの生徒を授業に参加させるか」に設定しました。そこで、一校では理解の進んでいる生徒に遅れている生徒の学習支援をしてもらう「チュータリング」を試み、他の一校ではペア学習を促すための席替えを試みました。

その結果、いずれの授業でも生徒間の議論と学習支援が劇的に活性化したことが観察され、また副産物として、生徒間の人間関係構築にも寄与したとの教員の証言を得ています。更に、一連の実験の直後に実施したテストでも、アクションリサーチを実施していない学校と比べて成績の向上が見られました。

もう1つは地区内の教員が集まって知見を共有し自らの授業を振り返る活動である「教員間振り返り」の効果的な実施方法を探るための「取り組み2」です。自分たちの学校から持ち寄った生徒のノートを材料に、教員がどのようにチェックし生徒にフィードバックしているかを分析して議論する試みを行いました。この作業を通して自身の経験を他校の教員と共有し、同時に自分の授業を振り返り、メタ認知*を促進することによって授業改善を図ります。またケーススタディの手法を用いて、授業の時間管理についての気づきを促すことも試みています。

この取り組みでは、教員に対してメタ認知に関する行動変容を質問したところ、「授業設計が適切だったかを毎授業後に振り返る」といった自己反省の実践と、「自分がうまく教えているかを授業中に自問する」といった授業モニタリングの実践において向上が見られたとの結果を得ています。ただし、これらの変化が教室レベル・日常レベルでどれだけ持続しているか、また実際にどれだけ子どもの学びの改善につながっているかについては、今後も調査する必要があります。

本調査の成果は、今年11月にサンサルバドルで実施する算数数学教育大会や、来年7月にオーストラリアのシドニーで開催される数学教育国際会議(ICME)において、国内および世界の教育関係者に対して発信する予定です。


* 自分が認知していることを客観的に把握し制御すること、つまり「認知していることを認知する」こと。

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教員(左)を交えての授業後検討(取り組み1、チャラテナンゴ県エル・コヨリート校)

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持ち寄ったノートをもとに日々の自分の授業で面している困難や、成功事例を話し合う様子(取り組み2、サンタアナ県アシエンダ・エル・ナサレノ校)