エビデンスに基づく改訂プロセス 高校教科書改訂
プロジェクトでは現在、高校教科書改訂作業においてエビデンスに基づくカリキュラム改訂サイクルの試行を行っています。このサイクルの一環として、2023年10月から2024年1月にわたり、全国学力診断テストおよび高校卒業資格試験(AVANZO)の結果分析、教室現場での授業観察、教員へのインタビューを行い、現行教科書の課題を整理しました。
現行教科書の課題としては特に、①冒頭問題に対する解答が問題のすぐ下にあるため教員がすぐに説明に入り、生徒が考える時間を持てずにいること、②問題文やまとめ、解答の文字や式、図をノートに写すことに時間がかかり、それだけで授業を終えてしまう生徒が多いこと、③数学表現を苦手とする生徒が多く、また解答にいたるプロセスが長いと行き詰ってしまう生徒が多いことが観察されました。
その対策としてプロジェクトが立てた仮説は、①に対しては、紙面構成を変え見開き右下にその日の授業の最初の問題を配置し、自力解決する時間を確保する(解法はページをめくった所に書かれている)こと、②に対しては、書き込み式の教科書にすることでノートに写す時間を減らし、実質的に問題を解く時間、考える時間を増やすこと、③に対しては、一つの問題を短いステップに分解して問題を組み立て、また扱う数値や数学用語が過度に高度なものである場合は実態に合わせて簡単にすること。これらの3つの仮説のもと、2024年2月から協力校での試行を始めています。
現場での試行の結果、生徒の能動的学習時間は増え、教科書や板書をノートに写すだけで授業を終える生徒が大幅に減ることが確認されました。他方、扱う数学の内容そのものが難しく、困難を感じる生徒がまだ多く観察されるため、説明表現、扱う数値、問題構成を更に改善すべく、技官たちと「計画」→「実行」→「チェック」→「対策」といういわゆるPDCAサイクルを繰り返して見直しを行っています。
このように、学力評価結果や授業観察結果といったエビデンスに基づいて学びの改善活動を具体的な形として実施している教科書改訂プロセスを、今後も続けていきます。
教員が説明にかける時間が減ったため机間巡視をする時間が増え、生徒にフィードバックする場面が多くみられるようになった。
書き込み式にすることで問題を解くことにかける時間が増加した。
冒頭問題に取り組む生徒。見開きの右下に位置するのでページをめくらなければ解答が見られない。
また穴埋め形式にするなど短いステップごとに設問しているため、生徒は取り組みやすい。
生徒に考えさえる時間が増えたため、生徒同士で教えあう時間も多くみられるようになった。